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暖冬の影響は静岡の桜にも 

伊藤麻衣気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ所属
去年の静岡の標準木の桜(筆者撮影)

3月に入り、気象の世界にも春がやってきました。春に入ると気になるのが桜です。今年は暖かいので桜の開花が早くなると思っている方もいらっしゃると思いますが、今年の静岡の桜はいつもの年より大幅に早くなることはなさそうです(平年の開花は3月25日)。

桜が咲くまで

桜が咲くまでには主に4つの過程があります。

1、花が散った後に蕾を付ける

2、冬のはじめに入ると休眠し、生長が止まる

3、真冬の寒さにさらされると休眠から覚める(休眠打破)

4、気温が上がるにつれて成長していく

桜が開花するには冬の寒さが必要です。今年は暖冬だったため休眠打破がうまくいっていない可能性があります。

去年の静岡の桜

去年の静岡の桜の開花は3月28日と平年より3日ほど遅くなりました。静岡の開花は名古屋より6日遅く、東京より1週間遅くなりました。東京の満開よりも遅くなりました。

2019年の静岡・東京・名古屋の開花と満開発表日(気象庁HPより筆者作成
2019年の静岡・東京・名古屋の開花と満開発表日(気象庁HPより筆者作成

静岡、名古屋、東京のアメダスの平均気温を見てみると去年は各地とも2月は平年より2度前後高く、3月は1~2度高くなりました。

平年比は大きな差はありませんが、静岡は平均気温自体が東京や名古屋と比べると高いです。

去年の2月~3月の気温の特徴(気象庁HPより筆者作成)
去年の2月~3月の気温の特徴(気象庁HPより筆者作成)

去年は暖冬だとは言っても東京と名古屋の平均気温は静岡よりも2度ほど低かったので休眠から目覚めることができましたが、静岡はしっかり目覚めることができず周辺に比べると開花が遅くなったと考えられます。

去年以上に休眠打破がうまくいっていない可能性が

去年と今年の寒気の様子を比較してみましょう。

2018年12月~2019年2月の地域平均気温平年偏差の5日移動平均時系列図(気象庁HPより)
2018年12月~2019年2月の地域平均気温平年偏差の5日移動平均時系列図(気象庁HPより)
2019年12月~2020年2月の地域平均気温平年偏差の5日移動平均時系列図(気象庁HPより)
2019年12月~2020年2月の地域平均気温平年偏差の5日移動平均時系列図(気象庁HPより)

グレーの部分が平年より強い寒気が入ってきたことを表し、値が小さいほどその寒気が強いことを表します。

2018年12月~2019年2月にかけては、東日本には3回、しっかりと寒気が入ってきました。2019年12月~2020年2月にかけては、東日本に入ってきたのは主に2回と回数が少なく、さらに寒気の強さも昨シーズンよりも弱く、去年以上に休眠打破がうまくいっていない可能性があります。

静岡の桜の現状

3月12日に静岡地方気象台にある桜の標本木を見てきました。蕾ができたばかりなのか、茶色く、小さく、かたそうでした。

3月12日の静岡の標準木の様子(筆者撮影)
3月12日の静岡の標準木の様子(筆者撮影)

去年、数日おきにの標本木のつぼみ撮影していました。開花の8日前に先が茶色から緑に変わり始めていて、6日前に半分ほどが緑、2日前には花弁が見えていました。3月12日の時点で去年の開花8日前の様子よりもまだ進んでおらず、少なくとも10日くらいはかかるかもしれないなと感じました。静岡の開花の発表は平年並みか平年よりも遅くなりそうです。

去年の生長の経過(いずれも筆者撮影)
去年の生長の経過(いずれも筆者撮影)
気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ所属

静岡県御前崎市出身。2011年に気象予報士資格を取得。2014年にNHK広島放送局で気象キャスターをはじめ、2017年からは地元のNHK静岡で気象キャスターを務める。たっぷり静岡(平日・午後6時10分~)に出演。地域に根ざした天気や、天気というフィルターを通すと気づく静岡の魅力をお伝えします。

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