年明けとは大きく変わった2020年

2020年、皆さんはいかがだったでしょうか。

私が専門とする大学・教育、就活・キャリアは、両方とも、良くも悪くもコロナに揺れた一年でした。

余談ですが、1月6日の日本経済新聞朝刊には「ナイト消費を活発に 政府、20地域支援へ15億円」と題する記事が掲載されました。

夜間消費を喚起する「ナイトタイムエコノミー」の創出につなげるため、政府は有望な観光資源を持つ全国の約20地域を支援する。

※記事より

それがまさか、数カ月後には夜間消費どころか、自粛、緊急事態宣言、五輪延期と来て、大晦日の終夜運転中になるなど、予想することすらありませんでした。

これは私が専門とする大学・教育、就活・キャリアの両分野でも同じです。

それぞれ大きく変わった2020年、両分野で私が10大ニュースを選出してみました。

それでは、まずは就活・キャリア分野から。

就活・キャリア分野

第1位:オンライン選考

コロナ禍で一気に導入企業が増えました。

システムそのものは、以前からあり、導入企業が一番多いであろう、zoomは2012年に初版をリリースしています。

このzoom含めオンライン選考が就活で一気に広がるとは、昨年時点では全く想像すらしていませんでした。

マイナビ 2021年卒大学生活動実態調査(6月)によると、オンラインのみで内々定を得たかどうか、との問いに「ある」と回答した割合は43.3%。

地域や企業規模により変わりますが、コロナ禍が収まらない以上、導入企業は引き続き多い見込みです。

第2位:テレワーク

オンライン選考と同じで、特に緊急事態宣言の出た4月以降、導入企業が一気に増えました。

通勤の手間が省ける反面、自宅だとメリハリがつかないなど、様々な弊害も明らかになりました。

第3位:3月合同説明会中止

就活における合同説明会が定着したのは1980年代です。その後、時期は変わりつつも、広報解禁に合わせて開催されるのが就活の風物詩でした。

しかし、コロナが広がる中で、大規模なイベントの一つ、ということで2月に大手就職情報会社は軒並み、開催中止を決めます。

2019年以前からマイナビはオンライン合説を実施しており、こちらに学生が殺到することになりました。

それから、一般社団法人FUKUOKAHRなど地方の団体・企業がオンライン合説を開催したところ、こちらも学生が殺到。全国に広がることになりました。

選考にしろ、合同説明会にしろ、企業からすれば、対面で実施したい、という思いが強くあります。

その一方、企業説明や序盤の選考をオンラインで開催すると、学生に移動の手間・費用を強いることがない、というメリットがあります。このことに多くの企業が気づき、2022年卒以降でも、企業説明と序盤の選考はオンライン、中盤以降の選考(と企業説明の一部または大部分)は対面、というすみ分けが進みそうです。

第4位:JAL・ANAの採用中止

訪日外国人観光客の増加でビジネスを拡大していたのが、航空、観光、鉄道などの業界です。

しかし、コロナ禍で、外国人は入国禁止、国内の移動もテレワークなどで抑えられた、とあっては、利益が出るはずがありません。

その結果、JAL・ANAは21年卒の採用を中止。ANAは2022年卒も大幅縮小とすることをすでに公表しています。

第5位:内定取り消し

2008年のリーマンショックで増えたのが内定取り消しです。その後、2011年ごろまでは毎年のように注目されていました。

その後、売り手市場の拡大により、内定取り消しはほぼ話題にならず。

それが、コロナ禍の3月に急に注目されるようになりました。2020年卒の影響はさほど出なかったようですが、2021年卒の就活でも広がりました。

7月にはアパレルのイッセイミヤケが内定取り消しをしたことが判明。「あの人気ブランドが」と驚きました。

一方、内定取り消しを受けた学生に対する支援策も活発で、ライフやはれコーポレーションなどが緊急採用を表明。大阪府・東京都なども任期付き職員としての採用を発表しました。

第6位:JAL・ANAの出向

ANAは10月25日に社員3500人の削減を含む構造改革案を発表。その一環で、トヨタ、ノジマ、成城石井などへの出向も発表します。

JALも同様の方策を10月に発表。

出向先は佐賀県などの自治体、宗像神社など多岐にわたり、12月27日には愛知学院大学が教職員として受け入れることを発表しています。

受け入れる側からすれば、サービス技術の高い航空会社社員を出向先として受け入れることで、自社のサービスを向上させられることができます。

自治体などであれば、観光振興などにもつながります。

出向を受け入れる航空会社の社員としても、仕事がないよりはまだまし、というのも大きいでしょう。

JAL・ANAに限らず、ホテル従業員が近隣の農業法人に、タクシー会社の運転手が運送会社に、など、業種転換による出向がコロナ禍で一気に進みました。

第7位:働き方の多様化(副業、ワーケーションなど)

第6位の出向にも当てはまりますが、コロナ禍で働き方の多様化が進みました。

本業が順調ではなく、だからと言って、リストラすれば、もし、景気が戻ったときの人材不足に悩みます。雇用者側も、仕事がないままでは収入減少に苦しむことになります。

企業、雇用者側、双方のニーズが合致して、副業を認める企業、副業で働く人材募集の企業が一気に増えました。

12月21日には経団連がこれまでの方針を転換し、副業・兼業の推進姿勢を明らかにしました。

観光地に滞在しながら働くワーケーションも同様です。こちらは、外国人観光客が激減した観光業界を救うカンフル剤としても注目されるようになりました。日経MJは12月25日・1面で「ワーケーションまず一歩」と題する記事を掲載。メリットや課題点をそれぞれ明らかにしています。

第8位:「ジョブ型雇用」祭り

年功序列など従来型の採用・雇用を変える、という意味で、「ジョブ型雇用」への転換の動きが活発となりました。

日立製作所、資生堂、三井住友海上などはジョブ型雇用による採用を発表しています。

ただ、この「ジョブ型雇用」、記事の書き手や企業によって定義がバラバラです。

日本経済新聞の経済教室欄では12月3・4・7日に「ジョブ型雇用と日本社会」を3回にわたって掲載(書き手はそれぞれ別)。

ものの見事に、それぞれ定義が異なり、ジョブ型雇用を巡る状況が混乱していることが明らかになりました。

12月7日には、朝日新聞朝刊でジョブ型雇用の名付け親・濱口桂一郎氏による解説記事が掲載されました(11月21日には詳細な内容が朝日新聞デジタルで掲載)。

「『ジョブ型』は成果主義じゃない 広がりどうみる――名付け親・濱口桂一郎さんに聞く」と題する記事の中で、濱口氏はこう喝破しています。

9割がた違う意味で使う企業が次々に出てきた。『人材を、労働時間ではなく成果で評価することがジョブ型』などというミスリーディングな言説もメディアをにぎわせている

※記事より

私はジョブ型雇用への転換、100%無理、と見ています。定義も違いすぎますし、欧米との解雇規制も違う、教育も違う、などなど導入には無理がありすぎます。2000年代に盛り上がった成果主義祭りと同じで、しばらくは続くでしょうけど、結果的には同じかな、と。このあたり、書き出したら長くなるので、別記事にするかもしれません。

第9位:緊急事態宣言による採用活動の中断・採用時期が後ろ倒しに

4月の緊急事態宣言により、採用活動を一時中断とする企業が続出しました。その後、5月に再開する企業が多かったものの、この影響で採用のピークが例年よりも結果的に後ろ倒しになりました。

例年であれば、選考解禁となる6月上旬から中旬にかけてです。

それが今年は6月下旬から7月中旬にかけて、と後ろ倒しに。

企業によっては6月上旬に追加の企業説明会を開催するほどでした。

コロナの影響で就活に出遅れた学生も、5月下旬から6月にかけて、あきらめずに頑張った学生は結果として内定を得ることができました。

一方、出遅れた学生のうち、6月上旬時点で「この時期に内々定を貰えていないからもうダメ」と諦めた学生は、二重三重に出遅れることになってしまいました。

第10位:トヨタ自動車の技術職・大学推薦廃止

11月にトヨタ自動車は全国の大学に対して、技術系採用の大学推薦廃止・自由応募化を文書で伝えました。

マスコミでの扱いは小さいものの、人事関係者や理工系大学の教職員は結構、衝撃を受けるニュースだったはずです。

トヨタ自動車だけでなく、メーカー各社は技術職・研究職採用は、大学推薦を重視していました。大学・大学院での研究内容から配属部門をある程度決めたうえで選考していきます。

しかし、それでは情報工学の学生はなかなか応募できない、などのデメリットもあります。しかも、トヨタ自動車は静岡県にスマートシティを建設(2021年2月着工予定)するなど、自動車の枠を飛び越えて事業を展開しようとしています。

これは他のメーカーも同様であり、今後、大学推薦の扱いが大きく変わることが予想されます。

選外:インターンシップ参加者の急増、リクルート子会社社員による就活セクハラ、内定者研修によるパワハラで内定者が自殺、同一労働同一賃金訴訟で判決分かれる、採用時期の分割化、キャリアセンターイベントの中止相次ぐ、労働者協同組合法の成立

このあたり、選者によって、大きく順位が変わるところでしょう。この中だと、私は内定者研修によるパワハラ事件で4月に記事を書きました。

続いて、大学・教育分野です。

大学・教育分野

第1位:9月入学の是非

コロナ禍で一斉休校など教育が止まる中、4月に急に注目されたのが9月入学の是非です。

高校生による9月入学の訴えなどが注目され、安倍晋三首相(当時)も国会で前向きに答弁。一気に政治問題となりました。

確かに、9月入学にすれば、教育の遅れが一見すると解消されますし、欧米など海外にも合わせることで学術交流が進むなどのメリットがあります。

ただ、9月入学は、就職・社会との連結、9月入学に移行した場合の教員不足など課題点が多くありました。

2012年にも東京大が移行を検討するなど、秋入学は新しいようで実は古い問題でもあります。

しかも、秋入学移行が2020年なのか、2021年なのか、2022年なのか、それぞれ意味合い・方策が違います。もし、2021年以降の導入だった場合、教育の遅れが解消される、ということにはなりません。

仮に、ですが、「予算が数千億円単位でかかってでも、世論が総反対してでもやる」「就活にしろ、社会の慣習にしろ、9月入学に全部変える」という政治決断があれば、9月入学が実現していたかもしれません。

しかし、結果としては6月2日、安倍首相(当時)が「法改正を伴う形での導入は確かに難しい」と表明し、事実上、断念することとなりました。

第2位:一斉休校

コロナ禍が広がる中、2月27日、安倍首相(当時)が一斉休校の要請を表明。

児童・生徒への感染、あるいは、児童・生徒を介しての感染拡大を防止するための方策でした。

全国一斉休校は、戦後初のことであり、「そこまでコロナは深刻なのか」と社会にも大きな衝撃を与えることになりました。

弊害は大きく、共働き世帯は休校期間中の子どもの面倒を見られない、学習をどう再開させるかどうか、など現場も混乱しました。

第3位:オンライン授業

就活・キャリア分野のオンライン選考と同様、こちらもコロナ禍で一気に大学内で広がりました。

ただ、もともと導入していた名古屋商科大学、それから一部の理工系大学・学部やゼミなど少数の事例を除けば、ほとんどが「オンライン?何それ、美味しいの?」状態。

結果、パワーポイントに音声を吹き込むだけ、課題提出が異様に増える、など、悪評が続出。

大学どころか、教員によっても大きな差があり、使いこなせる教員だと、グループ分割やチャット機能を使うことにより、議論が活発になった、など教員・学生双方から評価する意見も出ました。

一方、実技・実習が前提となる美術・音楽・体育・理工系などの学生からは「紙芝居を見るために学費を払っているわけではない」「通勤も小学生も旅行も解禁になっているのに、なぜ大学だけずっとオンラインなのか」など疑問視する意見も続出。

賛否分かれる結果となりました。

大学からすれば、コロナ禍が収まらない都市部を中心に、「小人数・語学・実習と1年生向けの授業は対面中心、大人数授業はオンライン」とすみ分けが進む見込みです。

第4位:卒業式・入学式の中止・規模縮小

教育機関からすれば、卒業式・入学式は重要な教育行事です。

しかし、人が集まれば、3密で感染リスクが高まります。

2月、コロナ禍が広がる中で大学関係者の中で議論されるようになり、立命館アジア太平洋大学、近畿大学などが中止を表明。

その後、ドミノ倒しで各大学が中止または規模縮小を表明し、大学によっては、数度にわたり変更して中止とした大学もあります。

3・4月に私も関連記事を出しましたが、全国の大学のサイトを毎日のように確認するなど、なかなか大変な作業でした。

第5位:センター試験廃止、2021年に共通テスト実施

2020年1月、最後のセンター試験が実施され、来年から大学入学共通テスト、通称「共通テスト」に移行します。

英語民間試験の導入、記述式の一部導入などが目玉だったはずですが、2019年に迷走し、結果としてどちらも、事実上の廃案となりました。

センター試験から共通テスト、何が変わるかと言えば、問題が長文となり読解力が必要となった程度。基本的にはマイナーチェンジにすぎません。

それから、コロナの影響を考慮し、通常日程の他に、第2日程が設けられることになりました。が、試験日程が1月末。さらに追試は2月中旬で、それぞれ、一般入試に間に合わない、など、制度設計がそもそも問題だらけでした。

高校教員も、「第1日程(通常の日程)が一番」と話し、結果として、第2日程の出願者は718人、全体の0.13%にとどまりました。

しかし、来年、そもそも、感染者を出さずに無事に実施できるかどうか、心配です。

第6位:学校行事の中止相次ぐ

大学だけでなく小中高、各校で一斉休校となった結果、修学旅行や夏休みの合宿など中止や大幅縮小が相次ぎました。

高校での進路講演や進路イベントなども中止や規模縮小、延期などで揺れ動きました。余談ですが、私は記事・書籍執筆やテレビ出演などの他、進路・就活関連の講演も仕事の柱となっています。これが、中止・延期やオンライン開催などで大きな影響を受けました。

第7位:学校のIT化

児童生徒1人1台端末、高速大容量の通信ネットワークの一体的な整備、公正に個別最適化された学びを全国の学校現場で持続的に実現させる構想を「GIGAスクール構想」と言います。2023年度までに行われる予定で進んでいましたが、コロナ禍で前倒しとなり、全国の小中学校で2021年3月末までに実施されることになりました。

このGIGAスクール構想だけでなく、電子教科書の推進など、学校のIT化が一気に進むこととなりました。

ただ、これも賛成論だけではありません。学校教員の負担の重たさ、保護者のITリテラシーの差、家庭におけるIT環境の差が格差につながる、児童生徒の視力低下や読書離れにつながる、など反対論・慎重論もあります。

全体としてはIT化が進みながら課題をどう解決していくかが問われます。

第8位:学費返還運動

一斉休校を受け、大学では入構禁止措置やオンライン授業が進みました。その結果、4月から、「本来の教育サービスを受けられないのであれば、学費を減免して欲しい」とする学費返還運動が盛んとなります。

学生運動は1970年代をピークに衰退。

その後、イラク反戦運動(2003年)、就活デモ(2009年~2012年ごろ)、特定秘密保護法反対(2015年~2016年ごろ)など、一時的に注目される学生運動はありました。ただ、いずれも多くの学生が参加した、とまでは言えず、一部にとどまっています。

しかし、学費返還運動は政治問題ではなく経済問題であり、切実さが違います。しかも消費者という立場で考えれば、「教育サービスを十分に受けられないなら学費は返還するのが当然」という主張は自然であり、多くの学生が賛同しました。その結果、2000年代に入ってから学生運動としては一番盛り上がり、社会からも大きく注目されたと言っていいでしょう。

ただ、大学からすれば、経営問題に直結するわけで、そう簡単に応じられません。

明治学院大学と岡山・就実大学が学生のIT環境整備を目的とした一時金支給が「神対応」として注目されたこともあり、他大学も追随。

学費返還は京都芸術大学などごく一部にとどまりました。

第9位:コロナ発生の高校・大学にバッシング相次ぐ

コロナ禍が広がっていった2月から3月にかけては「コロナは感染する方にこそ、問題がある」とするバッシングがありました。

その結果、教員が感染した福島県・郡山女子大学や卒業生が懇親会を通して感染を広げた京都産業大学、県立広島大学などには中傷・バッシングが殺到します。

特に、京都産業大学は、「コロナ産業大学」などと呼ぶなど心無い中傷や批判の電話・メールで、教職員はその対応に追われました。

その後も、8月には天理大学ラグビー部が寮内でクラスター化。すると、ラグビー部とは無関係で接触のない学生が教育実習先から断られるなど、コロナ差別が発生してしまいます(のちに撤回)。

同じ8月には島根県・立正大学淞南高校のサッカー部でクラスターが発生。3密となっている写真がホームページに出ていたこともあり、こちらも「対策不十分」とするコロナ差別が起きてしまいました。

それぞれ、対策が完全だったか、と言えばそうとは言えません。しかし、その不完全さをもってコロナ差別をしてよいわけでは断じてないはずです。

たとえば、京都産業大学の場合、卒業生がヨーロッパ旅行後に懇親会に参加、これでクラスターとなってしまいました。しかし、京都産業大学以外でも、多くの大学で似たような卒業生はいたはずです。それが他大学ではクラスターにならず、京都産業大学では起きてしまった、というだけに過ぎません。

第10位:学長の権威が揺らぐ

北海道大学では学長のパワハラを理由として文部科学省が解任(6月30日/前学長はその後、処分撤回を求めて提訴)。

その後も、東京大学・筑波大学ではそれぞれ学長選を巡り学内で紛糾(10月)。

北海道・旭川医科大学では、母親の職場でクラスターとなったことを理由に子どもの受診拒否が不当として学長が提訴されました(12月22日)。同学長は週刊文春12月24日号で職員説明会の朦朧ぶりなどが掲載される、いわゆる文春砲を受けました。

12月22日には、わいせつで実刑を受けた元総長が復職したことが判明。

1年を通して、学長(総長含む)が何かと話題になった年でもありました。

選外:ヤングケアラー全国調査、受験生への2万円支給案、中曽根元首相への国立大学注意通達で反対論続出、開成高校でなりすまし登校が判明、慶應義塾大学・東京歯科大学と統合、わいせつ教員の官報不掲載への問題視

このテーマも選者によって大きく順位・項目が大きく変わりそうです。

さて、この記事を書いている間に、2020年も残りわずかとなりました。

2021年が皆さんにとって良い年となりますように。

私も引き続き、このYahoo!ニュース個人で、大学・教育、就活・キャリアの関連記事を出稿していく予定です。