就活で得するアルバイト2019~コンビニ、テレアポが急上昇の意外
リクルート調査ではアルバイトがトップ
学生の自己PR・ガクチカ(「学生時代に力を入れたこと」の略)の定番ネタと言えば、アルバイトです。
リクルートキャリア・就職みらい研究所の「就職白書2018 採用活動・就職活動編」によると、学生が面接等でアピールしたい項目(回答1825人・複数回答)の1位はアルバイトで44.4%でした。参考までに2位は人柄(36.0%)、3位は所属クラブ・サークル(32.6%)でした。
勉強はそこまでやっていない(本当にやっていなかったかどうかは別)、サークルは半分遊びだし…。となると、アルバイトが残るのは自然でしょう。
これは今に始まったことではなく、昔から変わりません。
時代によって異なる有利アルバイト
1990年代まではコミュケーション能力・持続力を養う、という点でアルバイトが評価されていました。
持続力という点だと、たとえば新聞配達。これを続けている学生は採用する、と言い切った証券会社の社長もいたほどです。
コミュニケーション能力は、大半のアルバイト、特に接客系のアルバイトが該当します。
そのため、1990年代後半から「ありきたり」論が台頭します。「コンビニ、ファミレス、ファーストフードにカテキョ(家庭教師)は聞き飽きた」というものですね。
これは採用担当者の側から出て広まりました。実際、取材すると、「今日はマクドナルドが3人続いた」「エントリーシートを並べるとファーストフード・居酒屋のチェーンが全部そろう」などのエピソードには事欠きません。
そこで2000年代に入ると、就職氷河期という事情もあって、就活に有利なアルバイトは何か、学生間で話題になるようになりました。
2000年代から2010年代前半までに浮上した企業名は、ディズニーランドやUSJなどのアミューズメントパーク、ユニクロ、スターバックスなどです。
人によってはこれに、ベンチャー企業(インターンシップ含む)、マクドナルドなどを含むこともあります。
これらの企業・職種に共通するキーワードは「創造力」「人材教育」です。
前者は単に簡単な仕事をするだけではなく、アルバイトも色々と創造力を養うことになる、というものです。後者はアルバイトと言えども人材教育をしっかりと叩きこむ、というもの。実際にここで名前の挙がった企業・職種は人材教育がかなりしっかりしています。それから、企業によっては、アルバイトにも裁量を持たせるようにしています。
そうした点が結果的には就活で評価されたのでしょう。
それが「スタバ(あるいはユニクロ)は就活に有利」との就活都市伝説に転じていったもの、と思われます。
2010年代後半からはマルチタスク・アナログがキーワード
では、2010年代後半から2019年現在において、就活で有利になるアルバイトは何でしょうか?
前記の通り、「××なら無条件で採用」「△なら評価ポイントを足す」ということはまずありません。
ただし、結果論として採用担当者の評価が高いアルバイトは存在します。
そのキーワードが「マルチタスク」「アナログ」です。
まずは前者から。マルチタスクとは「複数の作業を同時並行で進めていくこと」です。IT用語ですが現在はビジネス用語としても使われています。
社会人になれば、何か一つの仕事に打ち込めばいい、というわけにはいきません。どんな企業・業界・職種であれ、複数の仕事を抱えることになります。
このマルチタスクをアルバイトでも経験しているかどうかで大きく分かれます。
後者は、学生の日常では消えつつある行動をアルバイトで経験しているかどうかです。具体的には電話、文書作成や、高齢者対応などです。
マルチタスクで高評価はコンビニに居酒屋
では、アルバイトの具体的な職種を挙げていきましょう。
マルチタスクという点で、2000年代以前に比べて評価が急上昇しているのは、コンビニです。
単にレジ打ちをして品出しに清掃、というだけではありません。
店内調理のフードに、コーヒーメーカーもあり、公共料金の収受もあります。ここ数年だとスマホ決済も増えました。
恵方巻や、鰻弁当、クリスマスケーキなどシーズンごとに売り出す商品も違い、店舗によっては店頭販売もします。
これだけ業務内容が広がっているため、
「最初はコンビニかあ、と思っていたが、意外と苦労していることがわかった」
「入社して複数の作業を振っても、うまくこなす社員はコンビニ経験者が多い気がする」
などの意見が採用担当者から出ました。
コンビニ以外だと、居酒屋・ファミレスなどの飲食系全般も評価が採用担当者の間ではマルチタスクという点で上昇しています。
意外なところだと、動画編集。
「企画・編集能力が備わっていてすごい」
という意見も。
コンビニや飲食系ほどでないにしても、
「短期アルバイトを複数やっている学生は『長期ではないから』と卑下しやすい。が、様々な仕事を経験しているわけだし、学業なりサークル・部活なりと両立した、ということであれば、それはそれでマルチタスクを経験したということで聞きたい」
との意見もありました。
アナログはテレアポが急上昇
電話応対や文書・礼状の作成などは社会人からすれば、よくある話。
が、学生の日常だとどうでしょうか。コミュニケーションはSNSが中心。礼状などはまず書きませんし、文書作成も学生によっては「ワードやエクセルはほとんど使わない」。
こうしたアナログな業務を仕事として経験できるアルバイトが採用担当者の間で見直されるようになりました。
その典型がテレアポです。
「テレアポのアルバイト経験者は入社後の電話対応がうまい」
「クレーム処理の電話対応をしていた新入社員は仕事のクレーム電話もいい意味で流すことができる」
など、高評価。
文書・礼状を作成する事務作業系も評価が上がっています。
「礼状だけでなく請求書や葉書などでのやり取りはまだまだ多い。そうした経験を事務作業アルバイトの学生はちゃんと経験できている点で評価できる」
などの意見が採用担当者から出ました。
事務作業系は意外なところだと、ワードやエクセル。
「ワードなど、学生はみなできるだろう、と思ったら意外とできない子が多い。慣れているだけでも仕事にすんなり入れる」
コミュニケーション能力と重複する点でいえば、高齢者対応です。
「携帯電話ショップでアルバイトをしていた社員は高齢者対応が抜群にうまい。アルバイトで高齢者ユーザーのクレームもちゃんと対応していた、とのことで、そういう効用があるのか、と思った」
「イメージは良くないが、パチンコ屋もありだと思う。そもそもきついうえに、高齢者ユーザーも多い仕事。それを半年でも続けていれば、それなりの根性はある」
「ウエディング系のアルバイト経験者はマナーがちゃんと身に付いている。しかもクレーム対応も身につけているので、エントリーシートに出ているとちょっと気になる」
などの意見がありました。高齢者対応ということで言えば、大半の接客系アルバイトは当てはまりそうです。
対応に困るアルバイトは?
では、逆に採用担当者が対応に困る、もっと言えば低評価のアルバイトは何か、こちらも取材しました。
集中したのが「やっていない(未経験)」と「水商売・風俗系」です。
「アルバイトを一切やっていない、と言われると対応に困る。よくよく聞くと短期アルバイトはやっている、とか、何かあるはず」
「アルバイト経験がないならないで特に気にしない。ただ、アルバイト未経験でも就活がうまく行く学生は『アルバイト経験はないのですが~』と学業なり公務員試験準備なり、何か他のことをアピールする。それを『一切やっていない』と言い切られると、何を評価すればいいのか、困る」
「アルバイト経験のない学生は、結果論だがコミュニケーション能力が低い。結果として面接などもうまく行かない」
などの意見がありました。
水商売・風俗系は、コミュニケーション能力という点では高いはず。ところが別の意味でコミュニケーション能力が低い、という指摘がありました。
「キャバクラやホストクラブ、ソープランドなど水商売・風俗のアルバイトをやっていた、と言ってしまう学生は即落とす。個別の接客、という点ではコミュニケーション能力が高いかもしれない。が、そういう学生が入社したとわかったときの企業イメージの低下がどれほどのものか、想像できない時点でコミュニケーション能力は低い。せめて居酒屋とか、違う言い方にしてほしい」
「本人なりに頑張ったかもしれませんが…。企業イメージや入社後の他の社員への影響というものを考えると、採用リスクが高すぎます」
「対社会人コミュニケーション能力は高いでしょう。が、そういう社員がいるとわかったとき、許容する顧客や取引先が多いか少ないか、そこも学生は考えるべきでしょうね」
どのアルバイトでも実績よりは経過重視
上記で出たアルバイトをやっていても就活がうまく行かない学生は過去にも存在しました。これは現在も変わりません。その逆に、上記に出ていないアルバイトでもアピール材料となって就活をうまく進めた学生も多数います。
民間企業就活において、アルバイト経験は企業からすれば絶対的なものではありません。あくまでも採用を決める要素の一つに過ぎないのです。
就活生は、就活に有利とされたアルバイトについて、医師免許など国家資格のように絶対的なもの、と勘違いしてしまうようです。が、そんなことはありません。
有利とされたアルバイトであれ、そうでないアルバイトであれ、経過の説明などをしていく方が有効です。学生の多くは経過ではなく実績重視でアピールしようとするため、企業とズレが出てしまいます。
リーダーなど役職に就いたかどうか、実績が大きいかどうか、などは企業は気にしません。それよりも、そのアルバイトの経過はどうだったか、得たものは何か、などを考えていけば十分なアピール材料となるはずです。