「Fランク」専門学校が廃校危機~定員割れ大学よりも高リスクの理由

専門学校の就職出陣式(写真は本文とは無関係)。専門学校の未来は?(写真:ロイター/アフロ)

大学はFランクだ、定員割れだと叩かれやすい

先日、愛知県のとある私立高校で講演した際、生徒の質問アンケートに

「Fランク大学に進学しても就職できますか?」

など、Fランク大学についての記述が数人いました。

このことは高校生も含めて、Fランク大学についての不安感が一般化していることを示します。

Fランク大学に限らず、定員割れ、就職氷河期など何かにつけ、大学というのはバッシングされやすい存在です。

付言すると、バッシングの一環でよく使われる「冬の時代」は、今から約30年も前、1992年に読売新聞が記事見出しで使いました。(1992年10月2日夕刊「大正大学から仏教学部が消える、”大学冬の時代”到来?」)。

同年には大学の校数は523校、大学進学率(浪人を含む)は26.4%です(短大を含むと38.9%)。

それが2018年現在はどうでしょうか。大学数は782校、大学進学率は53.3%(短大を含むと57.9%)とそれぞれ上昇していいます。

「冬の時代」と言いつつ、廃校した大学はわずか15校しかない(吸収・統合による廃校は除く/募集停止となり現存する福岡国際大学を含む)。その一方で259校も増加しています。

ところが大学バッシングはそういうデータには見向きもしません。ともすれば感情的になりがちです。

2018年2月には伝統あるビジネス週刊誌の週刊東洋経済が学校法人会計の誤解から、国際基督教大学・創価大学・玉川大学なども「危ない」と断じる、大誤報記事を掲載しました。

どの辺が大誤報だったかは、2018年2月28日Yahoo!ニュース個人記事「週刊東洋経済『危ない私大』記事・ランキングを徹底検証~不快感示す大学、東経記者は否定」にまとめましたのでそちらに譲ります。

※その後、2018年3月9日に週刊東洋経済は国際基督教大学について

「国際基督教大学は、教育研究活動のキャッシュフローより基金運用を重視した財務モデルを採用しているため」

として記事を訂正・削除しています。

このように、何かにつけ、大学はバッシングされ、あるいは不安視されてきました。

ところが、この大学以上に、冬の時代を迎えているのが、専門学校です。

しかも、今後は気象予報士風に言えば、さらに厳冬期に突入する見込みなのです。

もともと、減少傾向にある専門学校

専門学校は正確には、専修学校と各種学校の2種類あります。

専修学校は「職業や生活に関する能力の育成、教養の向上を目的とした教育を行う施設」(学校教育法124条)、各種学校は学校教育法第1条に掲げる学校(大学など)および専修学校を除いたもので、学校教育に類する教育を行うものを指します。

各種学校は自動車学校、日本語学校などを含みます。

さて、専修学校、各種学校は1992年(読売新聞が「大学冬の時代」を新聞媒体で初めて使用)、3409校・3202校、ありました。

それが2018年現在、どうなったか、と言えば3160校・1164校となっています。

「冬の時代」のはずの大学は250校増加する中、専修学校は249校、各種学校は2038校も減少しています。

通常使われている専門学校の正式名称は「専修学校専門課程」です。「専門学校」という名称は、専修学校の3つの課程(専門課程、高等課程、一般課程)のうち、専門課程[高等学校卒業者対象]を設置している専修学校しか使用できません。(公益社団法人専修学校各種学校連盟サイトより)

とありますので、各種学校の大激減は無関係だとして、専修学校に限っても249校、減少しています。

繰り返しますが、大学は259校、増えているにもかかわらず。

これは1990年代まで専門学校の領分だった看護・医療・IT・機械などが大学に移行していることなどが影響しています。

大学無償化法が追い打ちに

要するに、1990年代から2000年代にかけて冬の時代になっていたのは大学ではなく、専門学校の方でした。

この専門学校にとっての「冬の時代」をさらに厳冬期にしてしまうのが大学無償化法と留学生不正入学問題です。

大学無償化法は2020年4月から低所得者層の学生が学費減免と給付型奨学金(返済不要)を受給できる法律です。なお、大学無償化法という名称から大学のみが対象、と誤解されがちですがそうではなく、対象となる学校は大学、短大、高等専門学校、専門学校です。

※詳細は2019年5月15日公開、Yahoo!ニュース個人「大学無償化法は対象外でも得をする?~専門学校・中間層などが間接影響も」をどうぞ。

専門学校も対象になるのですが、この法律により、大学進学率は間違いなく上昇します。

文部科学省資料が引用している「文部科学省科学研究費基盤(B)『教育費負担と学生に対する経済的支援の在り方に関する実証研究』(小林雅之研究代表)『2012年高卒者保護者調査』」によると、世帯年収400万円以下だと大学進学27.8%に対して高卒就職は32.1%でした。

この調査にはありませんが、学費の高さから4年制大学を敬遠し専門学校進学に変えていることは多くの高校教員が認めるところです。

それが条件付きとは言え、大学進学にかかる費用を国が負担するわけで、そうなると、大学を敬遠し専門学校に志望先を変える理由が一つ、なくなります。

「定員60%未満」がバレてしまう

大学無償化法が専門学校に及ぼす影響は高校生の四年制大学志向だけではありません。これまでブラックボックスだった経営状態が明らかになってしまいます。

大学無償化法は対象外とする大学・短大・高等専門学校について、

1:運営する法人が債務超過の状態

2:法人の収支が3年連続赤字

3:3年連続で学生の定員充足率が8割未満(学校別)

の3要件を定めています。

ただ、この3要件に該当する大学・短大は

「全国で900以上ある私大、短大のうち対象外は10校程度にとどまる見通しだ」(読売新聞2019年5月11日朝刊「[解説スペシャル]大学無償化法 成立 学費減免 世帯年収の壁」)

と、意外にも多くありません。

要件のうち学校法人の債務超過を入れているところがミソ。

大学・短大が定員割れでも小学校・中学・高校などで生徒・児童を集めていれば学校法人としては債務超過にならないのです。

さて、専門学校については3要件のうち、定員充足率について、特例でさらにハードルを下げることが判明しました。

読売新聞2019年5月31日朝刊「給付型奨学金の予約開始 6月下旬にも」によると、

専門学校については、定員充足率の基準を「6割未満」とする特例経過措置を取る。

日本私立学校振興・共済事業団の17年度の集計では、専門学校で定員充足率が6割未満なのは46%となっている。

とのこと。

大学よりもさらに甘く6割まで下げても46%の専門学校が対象外となる可能性があるのです。

定員充足率60%未満は現実的

大学・短大関係者からすれば「なんで大学・短大は定員充足率80%未満で、専門学校は60%未満の特例扱いなんだ、おかしいじゃないか」と思うかもしれません。

ですが、60%は現実的な数字です。

リクルートマーケティングパートナーズの「専門学校の教育に関する調査2016」でも、定員充足率の平均値は63.64%(1398校回答)と高くはありません。参考までに私立大学の定員充足率平均値は102.64%、短大は88.06%(日本私立学校振興・共済事業団「平成 30(2018)年度私立大学・短期大学等入学志願動向」)。

大学・短大よりもハードルを下げないと、専門学校は厳しすぎるのです。

専門学校の情報公開は進んでいない

これまで専門学校は経営状態・定員充足率などの情報が公開されてきませんでした。

2013年には文部科学省が「専門学校における情報提供等への取組に関するガイドライン」を策定しています。

が、これで公開が進んだ、というわけではなく。

2018年には文部科学省委託事業による「情報公開を活かした専修学校の質保証・向上に向けて~専修学校における情報公開実践の手引き~」の冒頭にこんなことが書かれています。

一方で、情報提供等の内容は、学校間に差があることや、各専修学校の特色を分かりやすく公開し、外部から適切な評価を受けながら、教育水準の向上を図る観点がいまだ十分ではないことも明らかとなりました 。

「いまだ十分ではない」から、わざわざ「情報公開実践の手引き」を作成しているわけです。不十分と感じたのは文部科学省だけではありません。高校教員も同様です。

文部科学省が2016年に実施した「職業実践専門課程の実態等に関する調査研究」アンケート(高校1764校が回答)によると、専門学校が公開している情報について「提供される情報は信頼できる」の項目で、「そう思う」8.8%、「ややそう思う」69.7%、「あまりそう思わない」19.9%、「そう思わない」1.5%との結果でした。

否定的な回答が合計21.4%を占めており、不信感があることが見て取れます。

自由記述では、

・募集定員の充足率、正規教員数、経営状況、財務状況についての情報がない。

・学費免除や奨学金などの情報が掲載されているが、その対象者数や希望者数が記載されていない。

・資格合格率100%があまりにも多い。資格取得率や就職率の母数が入学生なのか 卒業生なのか明記されていない。

・割合だけが掲載され、在学生数や受験者数、合格者数の実数が示されていない。

など、厳しいコメントが並んでいます。

大学無償化法によって、専門学校は現状以上に情報公開を迫られます。

しかし、それによって、専門学校の不安定な経営状態や大幅な定員割れが明らかとなるでしょう。

本記事タイトルにある「Fランク専門学校」は私の造語です。よくFランク大学は経営が危ないだの、いつ廃校になってもおかしくないだの、と批判されます。

が、経営状態の良くない専門学校が「Fランク専門学校」として敬遠されてしまうのは当然のことです。

今までは情報公開をしなくても済んでいたのが、大学無償化法によって白日の下にさらされる。そして、それは「Fランク専門学校」にとって廃校が近づくことを意味します。

留学生問題も大きく影響

大学無償化法により、「高校生が大学・短大を選び専門学校を敬遠」「対象外となる専門学校が多すぎる」という2点の影響がありますが、もう1点、影響しそうなのが、留学生の不正入学・失踪問題です。

2019年3月、東京福祉大学が非正規(研究生)の留学生を大量に受け入れ、大量に失踪・除籍していることが判明しました。

そして、研究生受け入れにあたって、中国籍か、それ以外の国籍かによって、学費に差をつけていたことも明らかになっています。

この問題、大学の話だけか、と言えば、そうではありません。

大学以上に専門学校は留学生を大量に受け入れていました。どれくらい受け入れていたか、文部科学省が調査。それを2019年4月25日に「私立専門学校における留学生の受入れ状況の把握に関する都道府県の取組についての調査結果とそれを踏まえた一層の取組について」として公表しています。

なぜか、あまり話題にならなかったのですが、同調査の結果はすさまじいものでした。

私立専門学校2610校が回答し、留学生を受け入れている専門学校は871校。うち、生徒の半数以上を占める専門学校は195校。さらに90%以上は101校、全生徒が留学生の専門学校も45校ありました。

2018年時点で私立大学は603校(文部科学省・学校基本調査)。東京福祉大学以外にも留学生を大量に引き受けている大学はあります。

日本学生支援機構は毎年、外国人留学生在籍状況調査を実施。「外国人留学生受入数の多い大学」も公表しています(2019年6月現在は2018年現在の在籍者数)。

ただ、早稲田大学や東京大学などの難関大学は国費留学生が中心です。東京福祉大学のように不正に受け入れている(か、またはその疑いが強い)とは断定できません。

留学生が大半を占める(か、その疑いが強い)と言われているのが、東京福祉大学以外だと日本経済大学と日本ウエルネススポーツ大学。

データを公表している大学で飛びぬけて高いのは、立命館アジア太平洋大学で47.2%を占めます。ただ、立命館アジア太平洋大学が東京福祉大学と同列か、と言えば別問題で、グローバル教育を展開しています。

他に高いのは東京国際大学の18.5%くらい。

つまり、立命館アジア太平洋大学を含めても、留学生比率が高いのは5校程度。専門学校は留学生比率90%以上が101校ですので、数が大きく異なります。

さすがに、文部科学省も驚いたのか、

文部科学省は、留学生の比率が高いこの101校の実態を把握したいとして、来月中に生徒の卒業後の進路や退学者の数など、追加の調査を行う方針です。(NHKニュース・2019年4月28日)

とのこと。

東京福祉大学系列の専門学校でも不正受け入れが発覚

しかも、この調査結果が出てから1か月後、今度は東京福祉大学グループの専門学校である保育・介護・ビジネス名古屋専門学校でも不正受け入れ問題が判明しました。

千六百人超の留学生が所在不明になっている東京福祉大(本部・東京都豊島区)を巡り、同大系列の専門学校「保育・介護・ビジネス名古屋専門学校」(名古屋市中区)に収容定員の四倍を超える五千人近い生徒が在籍している可能性のあることが、本紙取材で分かった。生徒のほとんどが留学生で、学校側は二〇一五年度から定員超過が常態化していたことを認めている。

 愛知県と出入国在留管理庁は今月六日に専門学校に立ち入り調査に入っている。学校側はこうした在籍実態を報告しているとみられ、県などが確認を進めている。この専門学校でも所在不明の留学生がいるとみられ、調査の対象となっているもようだ。

 専門学校は県に対し、社会福祉や介護福祉など、六学科全体の定員を計千百十六人と届け出ていた。しかし関係者によると、留学生向けの国際教養、国際ビジネス情報の二学科だけで五月時点で四千数百人が在籍していたという。

 本紙が入手した資料や関係者の証言では、入学者数は年々増加し、国際教養学科では一七年度が約千五百人、一八年度が約千七百人、一九年度が約二千百人となっている。

 専門学校を運営する学校法人「たちばな学園」は本紙の取材に対し、一五年度から定員超過になっていたことを認め、「各地の日本語学校からの受け入れ要請を断り切れなかった」と釈明。在籍する生徒数については「数値の公表は差し控える」としている。

 中日新聞2019年6月12日朝刊「東京福祉大系 定員4倍超 名古屋の専門学校 大半が留学生」

もはや、性善説ではやっていけない、と文部科学省も留学生受け入れには厳格に対応するようになりました。

そうなると、専門学校は留学生を受け入れることによって生徒数増加を図る、従来の戦略が取れないのです。

優良校とFランク校の格差、広がる

まとめますと、大学無償化法により、高校生は大学・短大を選択。しかも、定員割れ状況などが明らかになって、経営状態の悪い専門学校を敬遠するようになります。

その一方、留学生問題の影響で、不正かつ大量に受け入れることによる生き残りも難しくなりました。

もちろん、全ての専門学校が大学無償化法・留学生問題の影響を受ける、というわけではありません。

公立の専門学校は学費が安いこともあり各地域で根強い人気があります。

それから、医師会や医療法人等が設立する看護・医療系の専門学校も人気ですし、就職先もしっかりしています。

中日本航空専門学校など、伝統があって、特定の分野に強い専門学校も生き残れるでしょう。

が、歴史の浅い専門学校は、いくら「高い就職率!」と宣伝しても実態が伴っていないことは高校教員や保護者なども理解しています。

生徒が集まらないため、オープンキャンパスでは「交通費補助を出す」「豪華な景品の当たる抽選会」「受験料を免除する入学パス」の3点セットで受験生を集めます。

が、それで立て直せるわけがなく、教育内容も劣化していきます。

そうなると、なおます受験生が集まらず、悪循環に陥る…。

これが、Fランク専門学校の実態です。

優良、かつ、財務体質の優れた専門学校であれば生き残れるでしょうし、大学または専門職大学への昇格を検討することもできます。

が、Fランク専門学校の場合、日本学生は集まらず、留学生を入れようにも国・文部科学省が厳しく見るのでそう簡単に入れられません。

この30年間、よく「大学冬の時代」などと言われていました。が、大学は実は先にご説明した通り、冬から脱却しつつあります。

逆に、これまでは注目を集めていなかった専門学校が冬の時代を迎えているのです。

さて、厳冬期を迎えるであろう現代で生き残れる専門学校は…。