謝罪できるエリート、できないエリートの違いは?~丸山議員、カネカ、日清食品の事例から

ブラジル日清食品の謝罪CM(同社サイトより)。謝罪できる・できないの違いは?

丸山議員、糾弾決議も辞職を否定

2019年6月6日、国会で丸山穂高議員への糾弾決議案が可決されました。

当初は北方領土を戦争で奪還する趣旨の発言のみが問題視されました。が、その後、泥酔して「女を買いたい」「おっぱいを揉みたい」など、品格ない発言をしていたことが週刊誌報道で判明。さらに、無理に宿舎からの外出を図ろうとしていたことも明らかになったのです。

仮に、北方領土の宿舎から外出してトラブルを起こした場合、ロシアの警察によって拘束されます。そして、ロシアの法によって処分されると、ロシアの実効支配を日本が是認した、とも解釈されかねないところでした。

丸山議員は戦争発言後、謝罪するものの、議員辞職は否定。所属会派(日本維新の会)を除名されると、今度は反発するコメントをTwitterに投稿していました。

ところが、「女を買いたい」発言が週刊誌で報じられると適応障害を理由として本会議を欠席。衆議院理事会からの聴取も拒否し、弁明書は「反省よりも反論が強い感じで、なおさら心証を悪くした」(野田佳彦前首相/毎日新聞2019年6月6日朝刊「丸山穂高議員に全会一致の糾弾決議 背景に悪質な言動の数々」)。

その結果、当初は発言のみで辞職を求めるのはおかしい、としていた与党も一変。与野党共同で国会史上初の糾弾決議案提出となり、全会一致で可決されたのです。

その後、丸山議員は

「ただちに自ら進退について判断を。仔細は議運への提出文書の通り、行蔵は我に存し毀誉は他人の主張にて。その任期を全うし、前に進んでまいります」

と、Twitterに投稿。

丸山議員のTwitter投稿。「女を買いたい」発言への謝罪はないまま。
丸山議員のTwitter投稿。「女を買いたい」発言への謝罪はないまま。

糾弾決議案の翌日、6月7日に放送されたフジテレビ系のワイドショー「バイキング」で取り上げられたところ、コメンテーターの土田晃之さんは、

難しい言葉をどれだけ並べたところで、北方領土に行って「おっぱい揉みたい」と言った人ですから。こんな言葉、何にも入ってこないです。

と、バッサリ。

土田さんのコメントが丸山議員への国民の怒りをあらわしている、と言えるでしょう。

丸山議員は謝罪できないエリートの典型例、と言えます。

カネカの育休騒動、「当社の見解」で炎上

謝罪できない、という点で注目されたのは化学メーカー大手・カネカの育休騒動です。

6月1日に、カネカの元社員の妻がツイッターで、カネカ勤務だった夫へのパワハラを告発しました。元社員は育休取得直後に転勤を命じられて、有給も取らせてもらえず退職に追い込まれたそうです。

その後、日経ビジネスやビジネスジャーナル、Yahoo!ニュース個人などのネットメディアや北海道新聞、中日新聞、西日本新聞、日刊スポーツなど新聞メディアも記事化。炎上状態となりました。

詳しい経緯はYahoo!ニュース個人「カネカの炎上騒動で考える、炎上時の弁護士的対応が燃料投下になる理由」(徳力基彦)記事をどうぞ。

カネカは6月3日時点では「当社の社員ではないのでコメントできない」とコメント。その後、6月6日には「当社の見解」として「対応に問題ないことを確認した」としています。

徳力さんのYahoo!ニュース個人記事にある通り、法律上、違法ではなかったかもしれません。

しかし、男性社員が育休を取ったら、その直後に転勤の話を出すのはどう考えても社会的にはアウトです。

カネカは、くるみんマークの取得企業でした。くるみんマークとは厚生労働省「次世代育成支援対策推進法」の「取り組み企業」認定マークです。女子学生の間では、女性社員の働きやすさを示す目安の一つとなっています。

騒動自体は男性社員に対するものであり女性社員への対応ではありません。とは言え、就活生はこの騒動をネガティブに捉えることは確実です。

武田塾講師、開き直り動画を公開し社長も沈黙

エリートで謝罪できない、と言えば、2019年4月にYahoo!ニュース個人記事でも2日連続で取り上げた武田塾講師の高田史拓・山火武の自称YouTuberも丸山議員やカネカといい勝負です。

武田塾講師が大学侮辱の不適切動画を投稿~武田塾が合格実績を宣伝する一方で

令和に注意したい20代リスク~武田塾講師動画と就活セクハラ、構造は同じ

この塾講師2人は動画で「武田塾は関係ありません」とのテロップを出しつつ、不適切な動画を公開し続けています。

4月には「第一志望ゼロ人説」を立証する、として、法政大学入学式で新入生にインタビュー。嘲笑する動画を撮影し公開。

教育者とは到底言いがたく、新手のバイトテロか、と思わせるほど、下劣な動画でした。

このことを記事化したところ、大きな反響があったのです。

記事化前に取材申し込みも「担当者不在」でスルーした武田塾の運営会社もさすがに何かしらの対応をするだろう、と思っていました。

あれから一か月、運営会社と経営者たる林尚弘社長は全くと言っていいほど、この不適切動画について沈黙したままです。

高田・山火両氏は騒動を多少はまずいと思ったのか、

「さすがにやりすぎたとは思うけど」

と、言い訳じみた話を動画で話す程度。

それどころか、この騒動について、開き直りとも取れる動画も公開していました。

もちろん、反省も謝罪もなく、現在も不適切動画を垂れ流しています。

炎上を「誤解」と強弁する武田塾講師のTwitter
炎上を「誤解」と強弁する武田塾講師のTwitter

所属する塾講師が非公式とは言え、こうした不適切動画を出し続けるとは、バイトテロならぬ社長公認の社員テロか、はたまた、新手の炎上商法か、としか思えません。

確かなことは、武田塾の評判を落とし続けていることです。

この武田塾講師の不適切動画問題も、謝罪できないエリートの典型と言えるでしょう。

「エリートだから謝罪できない」は言い過ぎ

丸山議員の騒動の前には泉房穂・明石市長の職員への暴言騒動もありました。

さらにさかのぼれば、豊田真由子・前議員の秘書への暴言(2016年/「違うだろぉー」)なども記憶に新しいところ。

スポーツのエリート、という点では、アメフト騒動(2018年)の田中英壽・日本大学理事長、女子レスリングのパワハラ騒動(2018年)で話題となった谷岡郁子・至学館大学理事長なども、いずれも騒動の当初は謝罪していません。

この謝罪できない、という点から丸山議員の騒動では、エリート特有の傲慢さを指摘するコメンテーター・識者もいました。

構図としては確かに「エリート=傲慢=謝罪できない」というのは、分かりやすいところ。

しかし、それはちょっと言い過ぎではないでしょうか。

エリートであっても、そうでない人でも、傲慢な人は傲慢ですし、謝罪できない人は謝罪できません。

一方、エリートであっても、謙虚な人、謝罪できる人はいます。

たまたま、エリートで傲慢、かつ、謝罪できない人が相次いだからと言って、それをもってエリート批判、というのは、私の好むところではありません。

謝罪できないエリートの特徴は?専門家に聞いた

では、謝罪できないエリートの特徴は何か、『謝罪の作法』(ディスカヴァー携書)著者でコミュニケーションの専門家でもある増沢隆太・東北大学特任教授に聞きました。

『謝罪の作法』のアマゾン画面より。謝罪の事例やノウハウをまとめた名著。
『謝罪の作法』のアマゾン画面より。謝罪の事例やノウハウをまとめた名著。

「大学受験や就活などで挫折を経験していないエリートは危険です。勝手に『自分は勝ち組』と選民意識が芽生えてプライドモンスターになってしまうのです。こうなると学歴しか優位性を持たずに偏差値序列だけを生きる糧にしてしまいます」

「丸山議員については、謝罪できないエリートの典型例です。特に謝罪タイミングはもう全くお話にならないレベルですね。恐らく東大を出てエリート官僚になり、何かあってエリートの道を諦めた時に維新の会というジャンピングダブルアップチャンス(博打で負けたら勝つまで倍賭け戦法)で国会議員になれてしまった。これで反省の機会を失って、巨大な自尊心がずっと維持されてしまったのでしょう。失敗経験に乏しく、間違ったプライドが温存されて大人になってしまうのは正に悲劇です」

増沢教授は謝罪には「誰に詫びるか」「なぜ謝罪するか」「いつ謝罪するか」の三要件、いずれかが欠けても、謝罪がかえって炎上を招きかねない、と指摘します。

「丸山議員は北方領土で醜態をさらした翌日、訪問団に謝罪しています。しかし、『酒を勧められたので』など他責にするあたり、すでに謝罪になっていません。元島民に謝罪する、というのであれば、議員辞職しかないわけですが、開き直りのコメントをTwitterで出すのは論外です。仮に、ですが、戦争発言が報じられた時点で謝罪し、議員辞職を表明していれば、まだ政治家として復活する可能性もありました。が、それを突っぱねた結果、泥酔による醜態が週刊誌などで報じられました。こうなると、戦争発言以上に国会議員としての適性が問われてしまいます。謝罪のタイミングを逃した結果、政治家生命を失った、と言えるでしょう」

「カネカの場合、法律だけで論じていて、かえって企業のブランド価値を下げてしまっています。くるみんマークを取得した企業なのですから、元社員家族の書き込みに対してすぐ謝罪し、『男性の育児休暇についても社内の理解が深まるよう徹底したい』くらいのコメントを出せば、まだ企業のブランド価値を落とさずに済みました。それが『法律上は問題ない』とするコメントだけでは不十分です。そもそも謝罪ではないですし、その結果、就活生は確実にブラック企業と認定してしまいます」

「武田塾講師や日本大学理事長のように、騒動が起きても一切対応しない、というケースもあります。実はこれが一番問題で、それだけその企業や大学のブランド価値を損ねてしまいます。実際に日本大学はワイドショーで数か月にわたって報じられた、ということもあり、2019年入試では日東駒専クラスの中で唯一、志願者数が減少してしまいました。武田塾講師の動画も酷すぎますね。そして武田塾の運営企業が何も対応しないことでブランド価値を確実に下げています」

謝罪できるエリートは何が違うのか

では、謝罪できるエリートは、できないエリートと何が違うのでしょうか。増沢教授は「謝罪はコミュニケーション」と話します。

「謝罪はコミュニケーションです。コミュニケーションには必ず目的があり、目的のないコミュニケーションは成功しません。そして、謝罪の最大の目的は事態の鎮静化にあります。さらなる損害やイメージ低下を食い止めること。このコミュニケーションを理解できるかどうかで、謝罪できるかどうかが分かれます」

「エリートが謝罪しようとしても、道義的責任や倫理観を重視してしまいます。しかも冷静で理路整然と説明しようとしてしまいます。その結果、かえって反発を招くことがあります。」

「その点、謝罪できるエリートは、謝罪する際に単に道義的責任や倫理観の是非だけで論じない、という謝罪コミュニケーションをきちんと理解しています。その理解のためには広い視野、教養を身に付けている、というのはあるでしょう。それから、大学受験や就活、学生生活などで挫折し、その挫折をいい形に転化しているかどうかも大きいところです」

謝罪の成功例その1:野澤正平・山一證券社長(1997年)

では、これまで成功した謝罪はどのようなものか、増沢教授にお伺いしたところ、1997年の野澤正平・山一證券社長による会見を挙げていただきました。

「1997年に当時、四大証券の一角を占めていた証券会社大手の山一證券が自主廃業に追い込まれました。損失隠しなど不正会計事件後の経営破綻が理由です。当時の社長が野澤正平氏です。不正会計事件そのものは先々代の社長が起こし、事態収拾を任された先代の社長も何もできないまま退任していました。野澤氏は社長就任前は大阪支店長・専務取締役であり、不正会計(簿外債務が2600億円)について社長就任後に初めて知った、と言われています。つまり、本来なら責任はないはずなのですが、自主廃業を発表する記者会見では号泣しながら社員を守ろうとしました」

この記者会見について補足すると、山一證券は自主廃業を臨時取締役会で決議した同日、東京証券取引所で自主廃業を発表する記者会見を開きます。

野澤社長は、

「これだけ言いたいのは…私ら(経営陣)が悪いんであって、社員は悪くありませんから!どうか社員の皆さんに応援をしてやってください、お願いします!私らが悪いんです、社員は悪くございません!善良で、能力ある、本当に私と一緒になってやろうとして誓った社員の皆に申し訳なく思っています!ですから、一人でも二人でも、皆さんが力を貸していただいて、再就職できるように、この場を借りまして、私からもお願い致します!」

と頭を下げ、号泣しながら謝罪したのです。増沢教授は、

「謝罪というコミュニケーションにおいて、『自分をよく見せよう』とする人がいます。確かに自分がどう見えるか、考えることは重要なのですが『自分をよく見せる』わけではありません。その点、野澤社長は鼻水を垂らしながら謝罪。これで会見を見た人は『責任を一身にせおうけなげなリーダー』と捉えました。『全部私らが悪い』『社員は悪くない』との表現は自分中心の逆の視点、つまり、謝罪の相手視点を的確に取り込んでいます」

会見だけでなく、野澤氏はその後、縁のある経営者に「助けてください、社員を1人でも2人でも雇ってください」と再就職を依頼。時には元社員の履歴書を持参することもありました。

その結果、

「(元社員)1万人全員が応じてもまだ余りある求人をいただき」(日経BPnet「新社長を直撃!センチュリー証券 その2~山一證券の十字架を背負い続ける」/2004年8月31日)

となりました。

謝罪の成功例その2:パナソニック(2005年)・ブラジル日清食品(2019年)

企業として成功した例として増沢教授はパナソニックを挙げました。

「パナソニックが過去に製造した石油ファンヒーターは一酸化中毒を引き起こすことが2005年に発覚しました。実際に死亡事故を起こしたほどの重大な欠陥です。一歩、対応を間違えていれば企業のブランド価値を決定的に損ねていたに違いありません。ここで、パナソニックは全CMをお詫び・製品回収に差し替えました。テレビ、ラジオだけでなく新聞・雑誌広告も打ち、さらに膨大な量のチラシを配布したと言われています。製品リコール自体は製造メーカーではよくありますが、パナソニックほど大規模に謝罪、告知活動をした企業は今のところ、ありません。金額に換算すれば数百億円をかけた、とも言われています。欠陥が発覚してから14年経過した2019年現在もパナソニックの企業サイトトップにはリコールの告知リンクが貼られています。長年にわたる謝罪と告知は、結果的にはパナソニックのブランドイメージを引き上げることに成功した、と言えるでしょう」

この謝罪をテーマにCMを作成して成功したのが、ブラジル日清食品です。

同社は、2019年1月に浅野隆司社長の謝罪CMを公開しました。

ブラジル日清食品の謝罪CM。中央の赤ネクタイの男性が浅野隆司社長。

私の名前はタカシ、日清フード・ド・ブラジルの社長だ。

我々は53年間、『完璧なラーメン』の作り方を知っていると信じてきたが、あなたたちはたくさんの作り方を発見した。

私たちは非を認める。私たちは『完璧なラーメン』の作り方を知らない。

そのためにあなた方ブラジル人に心から謝罪する。

これからも自分の好きなようにラーメンを作ってほしい。

「日経MJ」2019年6月5日「『ド真面目』日本人 ラーメン巡り謝罪!?」記事では、この動画について詳しく解説しています。

日本では袋麺と言えば3分間お湯でゆでると相場が決まっている。しかし、ブラジルでは独自の発展を遂げており、「時間は計らないし、砕いてそのまま食べたり、湯切りしたりと別物に進化していた」(ブラジル日清食品の浅野隆司社長)。

日清はこの状況を逆手にとり、日本流の「完璧なラーメン」とブラジル流のラーメンを食べ比べて貰い、どちらがおいしいかを選んでもらう動画を作成。女性タレントを使ったCMなども作り、盛り上げた。

結果的に、調理方法通りの「完璧なラーメン」が敗れたことを受け、浅野社長が謝罪するというストーリーになったことで、冒頭の謝罪動画が大受けした。

(中略)

一連のシリーズ動画の再生回数は合計2500万回を超え、人気映画の予告編に匹敵する規模となった。2月の袋麺の売上高は単月で過去最高を記録。資源バブル崩壊後のブラジル市場で苦戦する日本企業が多い中、異例といえる。

謝罪をテーマとしたCMは赤城乳業のガリガリ君値上げに伴うCM(2016年)など、なくはないですが珍しいところ。

そもそも、真面目で実直な雰囲気のある日本人の社長が淡々と話しながら自国の調理法を押し付けてきた、と謝罪する、そのギャップが面白いです。

それに、最初から謝罪ありきではなく、まず、日本の調理法とブラジルの調理法を比較したCMを作成。そのうえで、ブラジル流の調理法が上、としたところでこの謝罪CMを流しています。

謝罪CMの前に公開したブラジル日清食品のCM。ポルトガル語が分からなくても日本・ブラジルの比較という点で興味深い。

増沢教授の挙げた謝罪の三要件、「誰に対して」「なぜ」「いつ」を全て満たした、素晴らしいCMと言えるでしょう。

謝罪には何が必要か、学びたいという方は、ブラジル日清食品と赤城乳業のCMを参考にするといいかもしれません。