一律減点が発覚!裏口入学で揺れる東京医科大、さらに窮地へ

読売新聞8月2日朝刊。移動中のANA機内にて(著者撮影)

読売スクープ「一般受験の一次試験で一律減点」

裏口入学で大揺れの東京医科大は、さらに信頼が落ちそうです。

2018年8月2日付の読売新聞は朝刊で女子受験者の一律減点をスクープしました。

同記事によると、一般受験の一次試験(数学・理科・英語)で一律減点を2011年度から実施。

11年以降、女子の合格者を3割前後に抑えるようになり、実際に同年以降の一般入試では、3割前後で推移している。

その理由について、関係者のコメントも記事になっています。

同大出身の女性医師が結婚や出産で離職すれば、系列病院の医師が不足する恐れがあることが背景にあったとされる。水面下で女子だけが不利に扱われていたことに対し、女性医師や女子受験生からは「時代遅れだ」との声が上がる。

「いわば必要悪。暗黙の了解だった」。同大関係者は、女子の合格者数を意図的に減らしていたことについてそう語る。

条件非公開の一律減点は論外

公平さに欠ける、という点で東京医科大の一律減点は論外です。当然ながら文部科学省(と前身の文部省)は大学受験の公正確保について通知を出しています。

私立大学医・歯学部における入学に関する寄附金の収受等の禁止及び入学者選抜の公正確保等について(1977年/文部省管理局長・文部省大学局長通知)

入学者選抜の公正確保

入学者の決定については、関係法令等の規定に基づき適正な手続により厳正に行うとともに、医学・歯学教育を受けるにふさわしい能力、適性等を備えた者を公正かつ妥当な方法により選抜し得るよう選抜方法の改善に努め、入学者選抜の公正確保を期すること。

私立大学における入学者選抜の公正確保等について(2002年/文部科学事務次官通知)

1 入学者選抜の公正確保 

 (1) 入学者の選抜に当たっては、合否判定等基本に係る部分について学長及び教授会が実質的に責任を果たし得る体制を確立し、関係法令等の規定に基づき適正な手続きにより厳正に行うとともに、これらに関する学内規程の整備を図ること。

 (2) 大学教育を受けるにふさわしい能力、適性等を備えた者を公正かつ妥当な方法により選抜し得るよう、合否判定基準の明確化その他選抜方法の改善に努めること。

 (3) 合格発表は、合否判定後速やかに行い、入試情報の漏えいを防止するなど、入学者選抜の適正な実施に努めること。

 (4) 合格発表前に個別に保護者等関係者と接触するなど、いやしくも入学者選抜の公正確保に疑惑を招くような行為は厳に慎むこと。

 (5) 繰り上げ合格者に係る合格発表方法及び入学手続期日等入学手続きに関する事項について、学生募集要項に記載するなどによりあらかじめ公表すること。

要するに、入試は公平公正にやれ、ということです。

条件を出さない形での一律減点は論外と言っていいでしょう。

もちろん、差別的な内容を先に出せばいい、というものでもありませんが。

入試の女子優遇では実施校あり、批判も

大学業界は女子学生獲得に熱心であり、過去においても現在でも女子受験生への優遇策ないし関連イベント・プログラムを実施する大学は多数あります。

多いのは、理工系学部を中心とした女子受験生向けのオープンキャンパス、または女子受験生向けのプログラム。

東京農工大学では「女子中高生のためのSummerSchool」を8月4日に実施。

東京農工大学の女子向けイベントのパンフレット
東京農工大学の女子向けイベントのパンフレット

女子の受験生に対して、先輩の女子学生が学生生活を、卒業したOGが働き方などをそれぞれ話す、という内容が多いようです。

これは東京農工大学だけでなく、他大学でも大なり小なり実施しています。

入試で優遇策を出したのは金沢工業大学、九州大学、大阪電気通信大学などです。

金沢工業大学は2008年度に女子特別選抜を実施。志望者が少ないこともあり2年後に廃止。

九州大学理学部数学科は後期入試で女性枠を2012年度に設けました。しかし、女子受験生を優遇しすぎ、として批判を集め、実施前に撤回。

他、大阪電気通信大学や阪南大学、兵庫県立大学工学部、名古屋工業大学、神奈川大学工学部電気電子情報工学科なども一部で実施。このうち、大阪電気通信大学は廃止。他の4校は2018年現在も継続中です。

2017年1月23日毎日新聞夕刊「追跡2017:入試『女子枠』は脱格差or逆差別? 大学優遇策に賛否」では、阪南大学の女子特別入試について紹介しています。

昨年12月下旬、阪南大(大阪府松原市)の教室に約30人の学生が集まり、模擬面接に励んでいた。秘書技能検定準1級を目指す学生を対象に、大学が開いている講座だ。受講料は2万6000円。ただ、半分の受講者は免除されている。女子だけが受けられる「女子学生特別入試」(女子特、定員5学部115人)で入った学生たちだ。その一人で、国際観光学部2年の学生(20)は「受講料が無料なのは大きい。来年度も他の資格に挑戦したい」と声を弾ませる。

 「女子特」は1986年の男女雇用機会均等法の施行を受け、88年度に始めた。入試で機会を与えるだけでなく、各種の資格講座の受講料を免除し、キャリア形成を後押しする。30年前に1割に満たなかった女子学生の割合は、約35%に上昇。広報担当者は「『女子特』の学生は、学業や就職活動に熱心。成果は出ている」と強調する。

機会均等という面もあれば平等論も

女子受験生の優遇策は機会均等という面があります。

しかし、一方で不平等ではないか、との指摘ももちろんあります。

かつて、女子優遇の入試を実施していた金沢工業大学の志鷹英男・広報課長によると、

「2008年度に学部改変もあり、それに合わせて実施しました。しかし、志願者数が伸び悩んだこともあり、2年で廃止したのです。分析したところ、女子の受験生の側も『入試で女子というだけで特別扱いはしてほしくない』と公平性を求める意見が強くありました」

とのこと。

一方、女子優遇の入試と同時期に開始したのが、女子学生向けの自習スペースです。

「ライブラリーセンター(図書館)では2008年度から女子学生専用の自習室スペースを設けています。こちらも当初、女子学生優遇との批判もありました。ただ、その後、批判的な意見は少なくなりましたし、女子学生が増加したこともあって、現在も継続しています」

一律減点でも女子の入学者は減らず

このように、女子学生・受験生への優遇策は他大学で例があります。しかし、東京医科大学のような入試での一律減点は前代未聞と言っていいでしょう。

ところで、一律減点して、女子の合格率を抑えた、と読売新聞は報じています。

確かにその通りなのでしょうけど、入試データを確認すると、入学者は女子が多いことを示しています。

旺文社の『大学の真の実力情報公開BOOK』の2015年版・2018年版(掲載の入試情報は2014年・2017年)で東京医科大学医学部医学科を見てみました。

2014年 入学者総数120人 うち女子35人 女子比 29.2%

2017年 入学者総数120人 うち女子54人 女子比 45.0%

他の私立大学も横ばいか微減、または東京医科大学と同じように増加しています。

これは女子が不利、と言われながらも結果的には一律減点が無意味であったことを示しています。

無意味どころか、東京医科大学はただでさえ裏口入学でネガティブなイメージがついているところ、女性差別という点でも強い批判を集めるでしょう。

今後、補助金の返還・削減はほぼ避けられないところです。さらに、いくら少数激戦の医学部と言えども敬遠する受験生は出てくるでしょう。

東京医科大学はさらなる窮地に追い込まれることになりました。