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就活相談6・グループディスカッションのクラッシャーが迷惑です

石渡嶺司大学ジャーナリスト

質問:グループディスカッションで話の長い学生が同じグループにいます。この企業はもう受からないですよね?

回答:話の長い学生などをクラッシャー学生と言います。モンスター、爆弾岩、メガンテなどの呼び方もあるかな。

遭遇すればいい迷惑なのですが、あなた自身が気づかないうちにクラッシャー学生になっている可能性も結構あります。

もちろん、グループとしては相当危険です。このクラッシャー学生にどう対処したかで大きく分かれます。

グループディスカッション関連本では、史上最高峰(石渡調べ)の『東大生が書いた 議論する力を鍛えるディスカッションノート』(吉田雅裕、東大ケーススタディ研究会・編、東洋経済新報社)は、モンスターと呼称、以下の9タイプに分類しています。

・デストロイヤー(暴君タイプ)…議論を暴君のように強引に進める

・デストロイヤー(頑固親父タイプ)…自分の意見を絶対視して周囲の説得にも関わらず自説を曲げない

・眠れる船長…司会に立候補したが意見をまとめない

・ロジックオタク…過剰にロジックにこだわる

・評論家…批判ばかりで代案を出さない

・演説屋…自分の話ばかりをする

・カタカナ星人…カタカナ用語にこだわりすぎる

・ゆるキャラ…発言が的外れで議論を脱線させる

・お地蔵さん…発言しない

このうち、実害が大きいのは「デストロイヤー(暴君タイプ、頑固親父タイプ)」「ロジックオタク」「評論家」「演説屋」「ゆるキャラ」あたり。

「眠れる船長」「カタカナ星人」「お地蔵さん」は実害はそれほどでもないですが、議論の流れを悪くする点ではマイナス。

こうしたクラッシャー学生を非難するだけで終わったか、抑えつつ議論を前に進めようとしたか。

前者ならクラッシャー学生ともども、落ちる確率が上がりますが、後者なら、選考通過の確率が上がります。

グループディスカッションは序盤から中盤にかけての選考です。まだ、企業が求めるレベルに達していない学生やレベルは高くても他の部分で劣る(志望度が低い、コミュニケーション能力などが低い、企業の求める学生像と違う、など)学生も混ざっています。

企業からすれば、そうした学生がクラッシャー学生になりやすいことを承知のうえでグループディスカッションを実施します。

この狙いを承知のうえで、クラッシャー学生にも冷静に対処してください。

質問:クラッシャー学生への有効な対処方法があれば教えてください。

回答:前の質問でご紹介した『東大生が書いた 議論する力を鍛えるディスカッションノート』(吉田雅裕、東大ケーススタディ研究会・編、東洋経済新報社)には、クラッシャー学生(同書では「モンスター」)を9タイプに分類、対処方法も書いています。

以下、私のコメントと対策の一言をまとめました(対策の一言は一部は同書からの引用)。

なお、同書は9タイプですが、私の取材結果から4タイプ、追加しました。

・デストロイヤー(暴君タイプ)…議論を前に進めようとはしているが、あまりにも独善的。他の学生と共同戦線を張りつつ、抑えていくしかない。対策は「ご意見は素晴らしいのですが、もうちょっと、他の学生にも発言の機会をいただけませんか?」

・デストロイヤー(頑固親父タイプ)…自分の意見を絶対視しやすい。対策は「ご意見はその通りなのですが、時間も迫っています。結論を出すまでがこのグループディスカッションですから、今回はこの方向で進みませんか?」

・眠れる船長…司会に立候補したが意見をまとめる能力なし。対策は司会をさりげなくスライドさせること。「司会を差し置いて申し訳ないけど、私なりに話をまとめたいので、いいかな?」

・ロジックオタク…過剰にロジックにこだわりすぎ。難関大や理工系大、院生に多い。対策は「頭悪くてすみません。××って何ですか?」

・評論家…批判ばかりで代案を出さない。演説屋に似ているか、1人で評論家・演説屋を兼ねることも。対策は「批判も大切な視点ですが、ここはいったん前向きに考えませんか?」

・演説屋…体験談など話が長い。お題が「コンビニの売り上げを伸ばす方法」など学生生活に近い内容だと高い確率で出現。対策は「興味深いお話ですが、他の皆さんがお話できないのでお気遣いいただけませんか?」

・カタカナ星人…カタカナ用語を多用。ロジックオタクと似ている。ロジックオタク以上に理工系大・学部に多数生息。本人に悪気はないが、理解できないコメント多数。対策は「頭悪くてすみません。××ってなんですか?」

・ゆるキャラ…発言が的外れで議論を脱線させる。アイデアは面白いが、それを深掘りしすぎると時間はいくらあっても足りない。クラッシャータイプと違い、本人は無自覚、かつ、抑えれば引くタイプが多い。大学・学部だと女子大、芸術系大、文学部など。女子率高め。対策は「ご指摘はその通りなのですが、今は××について議論しているので、そのご指摘はまたあとにしませんか?」。もちろん、あとでも議論はしない。

・お地蔵さん…発言しない、もしくはできない。グループディスカッションに慣れていない中堅以下の大学、理工系大や地方国公立大などに多い。放置していると、それはそれでフォローしていないと見られて参加者全員の評価を落としかねない。司会も含め、適宜パスを出す必要あり。出身や専攻などその学生個人とお題または論点に結び付けて、話を振ることが対策。「××さんは▽が専攻とのことですが、今の論点の事例って何かありますか?」。

・ヒックリカヤシ妖怪…ディスカッション時間の終了土壇場になって、「これ、そもそも定義がおかしいからそこ、話さない?」などと言い出す。これまでの議論をヒックリカヤシ、もとい、ひっくり返す。真面目で何事もきっちりしていないと気が済まないタイプ、特に女子学生に多い。対策は「定義は確かに曖昧なまま進んでしまいましたが、ここでそこから話すと時間切れになって、グループ全体としての結論が出せません。今回はこの定義のまま進ませんか?」

・豆腐メンタル…強いことを言われてもいないのに、急に泣き出すなどメンタルが弱い。泣き出さなくても、「どうせ私の話なんか、誰も聞いてくれませんよね」と叫んで、周囲をシーンとさせる。グループディスカッションに慣れていない女子学生でたまに出現。対策は他の学生に対しては「いや、皆さん、色々あると思いますが、ここは一端改めて、場の空気を変えてみんなで議論をすすめましょう」。

豆腐メンタルに対しては「×さん、大丈夫?▽さんは別にあなたの意見も人格も否定したわけじゃないから。グループディスカッションだから、少し落ち着いたらまた意見を出してください」

・5歳児リピーター…最初に論点が設定されているのに、それを無視して論点設定からやり直しさせようとする。それを抑えても、またしばらくすると同じ話をしだす。そのリピートぶりにイラだって声を荒げると、5歳児リピーターともども落ちかねない。対策は保育士になったつもりで、何回でも諭すように抑える。「ご指摘もその通りと思いますが、最初の論点設定のまま進ませんか?そうでないと、皆さん話が進みませんし」

・ふてくされる独裁者…デストロイヤー(暴君タイプ、頑固親父タイプ)、演説屋、評論家など実害の高いタイプが序盤で他の学生から「話しすぎだし議論が進まない」など強く言われると、ふてくされて途端にコメントしなくなる。放置しておくと危険。と言って、発言を促す際、フォローしすぎると他の学生から無用の怒りを買ううえ、独裁者学生が復活して議論が混迷する可能性も。対策は、軽く発言を促すこと。「どうせ、聞いてくれないんでしょ」などと言い出したら「いや、序盤では議論に参加されていたじゃないですか。×さんが『議論が進まない』と言われたのは話が高度すぎて誰も付いていけなかったし。せっかくのご縁だし、みんなで議論を前に進めませんか?」。それでも、ふてくされているなら見捨てるしかない。

クラッシャー学生のタイプ、他にもありそうだけど、この辺で。新種発見の際はお知らせください。

ところで、対策の一言は臨機応変に変えていただくとして、ある共通点に気付かれました?

それは、「相手への承認プラス要求」がセットになっていることです。いきなり「相手への要求」だけではありません。

たとえば、

ケース1 「話長いからさあ、もっと短くしてよ。みんな発言できなくて迷惑だし」

ケース2 「お話興味深いのですが、もう少しテンポよくお話いただけませんか。他の皆さんも議論に参加できないですし」

ケース1が「要求」のみ、ケース2は「承認プラス要求」です。要求の中身は全く同じでも、ケース2の方がソフトでしょ?

気心が知れた友人同士ならいいのですが、知らない学生同士で進めるのがグループディスカッションです。

ストレートに言いすぎると、感情的になってしまう危険があります。ご注意ください。

※『300円就活 面接編』(角川書店 電子書籍)より引用

大学ジャーナリスト

1975年札幌生まれ。北嶺高校、東洋大学社会学部卒業。編集プロダクションなどを経て2003年から現職。扱うテーマは大学を含む教育、ならびに就職・キャリアなど。 大学・就活などで何かあればメディア出演が急増しやすい。 就活・高校生進路などで大学・短大や高校での講演も多い。 ボランティアベースで就活生のエントリーシート添削も実施中。 主な著書に『改訂版 大学の学部図鑑』(ソフトバンククリエイティブ/累計7万部)など累計33冊・66万部。 2024年7月に『夢も金もない高校生が知ると得する進路ガイド』を刊行予定。

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