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<最新写真報告>北朝鮮―中国国境を行く(1) 鴨緑江を遡上して見えたもの

石丸次郎アジアプレス大阪事務所代表
デート? 鴨緑江の川べりに座り込んで話す若い男女。平安北道の朔州郡 撮影石丸次郎

初秋、北朝鮮と中国の国境地帯を訪れた。1993年夏以来、毎年取材しているエリアだ。遼寧省の丹東市から鴨緑江を遡り、吉林省に回ってもう一本の国境河川・豆満江の河口近くまで下った。

筆者は北朝鮮に住む協力者と共に国内事情を取材している。普段の連絡には、北朝鮮に搬入した中国の携帯電話を使っている。外国ジャーナリストが北朝鮮に入国してできる取材では、寝ている時以外は案内員という名の監視がつく。越えることのできない高い壁の隙間から、かの国の内実を窺い知るのは容易ではない。

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中国側からの取材も制約だらけで限界があるのだが、それでも肉眼で見ておくことは大切だ。朝中国境は全長約1400キロ。国内から届けられる情報を念頭に置いて、国境沿いの風景を見つめ、合法・非合法に中国に出国してきた北朝鮮の人々と接触する。そんな取材方法を採ってきた。

鴨緑江は、日本のどの河川より長く800キロ近い大河。北朝鮮当局は、中国側からの「見栄え」に神経を使って建物を整え、住民に対し振る舞いや服装に注意するよう指示している。それでも辺境に暮らす庶民の日常や、平壌の政策の反映を垣間見ることができる場所である。

※写真はすべて2019年9月に石丸次郎撮影

連載の2回目です <最新写真報告>北朝鮮―中国国境を行く(2) 脱北難民が消えた! 厳戒の豆満江撮った

写真1

日本の植民地時代に作られた水豊ダム。右側が北朝鮮。朝中間で共同運営されている。
日本の植民地時代に作られた水豊ダム。右側が北朝鮮。朝中間で共同運営されている。

写真2

鴨緑江は恵みの川だ。水量が多く澄んでいて魚影も濃い。地引網を曳く北朝鮮の人々。平安北道の朔州(サクジュ)郡 
鴨緑江は恵みの川だ。水量が多く澄んでいて魚影も濃い。地引網を曳く北朝鮮の人々。平安北道の朔州(サクジュ)郡 

写真3

鴨緑江で洗濯する女性たち。飲料水としても用いられ、夏場は水浴びする人も多い。平安北道の朔州(サクジュ)郡 
鴨緑江で洗濯する女性たち。飲料水としても用いられ、夏場は水浴びする人も多い。平安北道の朔州(サクジュ)郡 

写真4

この日は好天。洗った衣類を河原で干していた。平安北道の朔州(サクジュ)郡 
この日は好天。洗った衣類を河原で干していた。平安北道の朔州(サクジュ)郡 

地図

朝中国境地図 (製作アジアプレス)
朝中国境地図 (製作アジアプレス)

写真5

屋根が落ち廃墟になった青水(チョンス)化学工場。近くの煙突1本から煙が出ていたので、まったく稼働していないわけではなさそうだ。平安北道の朔州(サクジュ)郡 
屋根が落ち廃墟になった青水(チョンス)化学工場。近くの煙突1本から煙が出ていたので、まったく稼働していないわけではなさそうだ。平安北道の朔州(サクジュ)郡 

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写真6

青水(チョンス)化学工場を望遠レンズで撮影。「心臓を捧げよう母なる祖国に」のスローガン。平安北道の朔州(サクジュ)郡 
青水(チョンス)化学工場を望遠レンズで撮影。「心臓を捧げよう母なる祖国に」のスローガン。平安北道の朔州(サクジュ)郡 

写真7

検問所でバスの乗客が降ろされ兵士のチェックを受けていた。平安北道の朔州(サクジュ)郡
検問所でバスの乗客が降ろされ兵士のチェックを受けていた。平安北道の朔州(サクジュ)郡

写真8

検問所を望遠レンズで撮影。迷彩服の国境警備兵と褐色の軍服に腕章を巻いた兵士が、バスの乗客の証明書を確認しているようだ。国境地域は移動統制が厳しい。平安北道の朔州(サクジュ)郡
検問所を望遠レンズで撮影。迷彩服の国境警備兵と褐色の軍服に腕章を巻いた兵士が、バスの乗客の証明書を確認しているようだ。国境地域は移動統制が厳しい。平安北道の朔州(サクジュ)郡

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写真9

 国境警備隊の兵士が電話をしている。横にはサンドバックのようなものが。手前の構造物は「潜伏哨所」。半地下になった警備施設だ。平安北道の朔州(サクジュ)郡 
国境警備隊の兵士が電話をしている。横にはサンドバックのようなものが。手前の構造物は「潜伏哨所」。半地下になった警備施設だ。平安北道の朔州(サクジュ)郡 

写真10

収穫後の畑に積み上げられたトウモロコシのわら。今年は各地から大不作の報せが届いている。慈江道の満浦(マンポ)市近郊。
収穫後の畑に積み上げられたトウモロコシのわら。今年は各地から大不作の報せが届いている。慈江道の満浦(マンポ)市近郊。

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写真11

中国側から見る白頭山の頂上の天池(チョンジ)。対岸の右側が北朝鮮領だ。
中国側から見る白頭山の頂上の天池(チョンジ)。対岸の右側が北朝鮮領だ。

写真12

超望遠で北朝鮮側に寄ると人の姿がはっきり見えた。大きなパラボラアンテナが。白頭山の天池(チョンジ)。
超望遠で北朝鮮側に寄ると人の姿がはっきり見えた。大きなパラボラアンテナが。白頭山の天池(チョンジ)。
アジアプレス大阪事務所代表

1962年大阪出身。朝鮮世界の現場取材がライフワーク。北朝鮮取材は国内に3回、朝中国境地帯には1993年以来約100回。これまで900超の北朝鮮の人々を取材。2002年より北朝鮮内部にジャーナリストを育成する活動を開始。北朝鮮内部からの通信「リムジンガン」 の編集・発行人。主な作品に「北朝鮮難民」(講談社新書)、「北朝鮮に帰ったジュナ」(NHKハイビジョンスペシャル)など。メディア論なども書いてまいります。

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