スマートニュースが渋谷区内のオフィスでワクチンの職域接種を開始するプレスリリースを7月1日に発表したところ、反発コメントが多数寄せられました。プレスリリースの内容は、渋谷区とワクチン接種の連結協定を結び、同社社員と家族だけではなく、渋谷区民も同社のオフィスで接種を受けられるとしたもの。よくある企業のプレスリリースのように見られますが、言語・非言語表現、タイミングの3点でリスクをはらんでいました。今後も企業による職域接種は増え、そのたびにプレスリリースがなされることが予測されます。多くの企業が陥りやすい教訓に満ちていますのでリスクマネジメントの観点から、プレスリリースで注意すべき点を解説します。

スマートニュースの前には、ソフトバンクやトヨタ自動車もワクチンの職域接種の発表をしており、近隣住民も対象としているのに、なぜ、スマートニュースの発表はこのような反発を招いたのでしょうか。しかもソフトバンクは当初社員10万であったところ、近隣住民にも拡大し25万人規模。

同社創業者である鈴木健氏のツイッターに寄せられた反発コメントで筆者が着目して掘り下げて考えたのは、「職場接種予定だったのにできなくなった」「支援物資を独占して炊き出しとは」「私企業が宣伝に利用している」の3つの視点です。

そこで、時系列で整理してみました。ソフトバンクとトヨタ自動車の発表は6月中旬。政府が企業にワクチン配布を発表した直後であり、自治体の遅さを企業が支援することへの歓迎ムードがあったと思います。しかし、企業からの申し出が殺到し、政府は企業への提供を6月25日に一時停止しました。その結果、ワクチンを確保できた企業とできなかった企業の不公平さが生まれてしまいました。政府の一時停止後で不満が募る中でのプレスリリース。ここはタイミングが悪かったといえそうです。

第二の失敗は、「炊き出し精神」といった言葉を使ってしまったこと。炊き出しは、被災者や困窮者に対して、自ら食糧を購入して提供する活動です。ワクチンは無料ですから、炊き出しのように原価が生じているとはいえませんから、重ね合わせることに無理があり、うまく滑り込んで確保した勝者目線、上から目線の言葉のように見えてしまいました。

三番目の失敗は、渋谷区長と一緒に撮影した同社CEOの写真をプレスリリース上で使用したこと。ここもつい普通の広報目線でやってしまったということでしょうが、ワクチン熱望競争の中においては一緒に写真を撮影するといった宣伝色は排除する配慮が必要でした。一枚の写真がもたらす影響が大きいことを十分知っているメディアとしてもうかつだったといえます。宣伝色、脚色、誇張といった表現を控える必要があったのではないでしょうか。

今後、ワクチンを確保できた企業は職域接種、近隣住民への提供もすることになるでしょう。その際には、スマートニュースの失敗を教訓として、タイミングや言語・非言語リスクを洗い出し、気持ちのよいプレスリリースを配信してほしいと願います。