かんぽ生命 再生のカギは組織風土改革。「怒られそうなことを話す会議」をしてはどうか

撮影:日本リスクマネジャー&コンサルタント協会

 増田寛也日本郵政社長は、かんぽ生命の不適切販売について報道機関からのインタビューに回答し、信頼回復を急ぎたい考えを述べたことが2月11日に報道されました。かんぽ生命再生のカギはどこにあるのでしょうか。

組織風土とは何か

 かんぽ生命保険契約問題特別調査委員会は「営業目標達成のために不適切な販売が正当化される風潮があった」と指摘し、原因は「リスク感度の低さに起因し、リスク事象を探知した際、根本原因の追究と抜本解決を先延ばしにし、問題を矮小化する組織風土であったこと」と報告しています。

 企業不祥事が報道され、第三者委員会が報告書を作る度に記載される「組織風土」とはいったい何なのでしょうか。組織風土というと難しく見えますが、言い換えれば「文化」であり、コミュニケーションの質、関係の質だといえます。

 たとえば、かんぽ生命の調査報告書では、「組織風土」の項目で次のように記載されています。(p129,130)

かんぽ生命では、何期入社か、キャリアかノンキャリアかなどにより、自分自身の最終ポストがどのくらいになるのかある程度見通しが立っているため、大きな失敗さえしなければよい、『危ない案件』はたらい回しという風潮が強く、積極的に仕事を取りに行く雰囲気がなかった。

日本郵政グループは本社、支社、支店、郵便局と様々な主体がいるが、『階層意識』、 例えば、『俺らは本社の人間だから優秀。』、『〇〇〇に配属された人は本社の中で使えない 人が割り当てられている。』、『本社の人間は現場を理解していない。』などが強く、それぞれの意思疎通が希薄であった。今回の問題の大きな要因の一つとして、本社と現場との間 のコミュニケーション・相互理解が希薄で、風通しが悪かった点があげられると思う。

 少し遡りますが、2018年に発覚したスルガ銀行のシェアハウスローンにおける不正融資問題についての調査報告書では、次のように記載されています。(P300)

職場で不正行為が蔓延するとそれを報告するなどということは、ほとんど現場の同僚達に対する裏切り行為だと言われてしまう。多くの者が共犯者で、しかもその逸脱行為で営業ノルマを何とか達成しているからである。(中略)内部統制というのは、リスクの分析や対処の仕組みであるが、所詮人間が実施するものであり、関係者が共謀したり、上司が関与したりすれば、たちまち破られてしまう。したがって、何より統制環境(企業風土)が健全であることが全ての始まりである。

 2009年に発行されたリスクマネジメントの国際規格ISO31000でも、2018年の改訂版では「人的および文化的要因を考慮すること」が原則に追加されました。つまり、リスクマネジメント、内部統制推進にあたっては、組織風土、企業文化にメスを入れなさい、というメッセージといえます。

関係の質を変えることから始める

 組織風土は、長い年月をかけて作り上げられるものですが、果たして変えることができるのでしょうか。私はなかなか変えられないから企業不祥事は繰り返されるのだろうと思っていましたが、ある時から考えが変わりました。組織風土は改革できる、と。組織風土改革のプロフェッショナルが実際に重苦しい雰囲気を変革する瞬間を目の前で見たからです。

 「関係の質が変わると、思考の質が変わり、行動の質が変わり、結果の質も変わる。だから、まずは関係性をよくすることがポイント」。「組織の成功循環モデル」(ダニエル・キム提唱)としても確立していました。

 また、広報学研究者であった故猪狩誠也氏は、広報・PRの機能の1つとして「企業文化の変革と維持」があるとし、次のように述べています。

―これまで順調に発展してきたのだから、今後も企業文化を変革しなくとも十分発展していくだろう、とトップが考えているとしたら、おそらくその企業に明日はない。絶えず、経営理念、行動規範、事業領域、蓄積してきた能力などを点検しながら、”正の企業文化“を残し、”負の企業文化“を捨てていかなければならない。それを担うのは、社内コミュニケーションの活性化、社内広報活動による理念と情報と感動の共有であるー(「広報・パブリックリレーションズ入門」)

「怒られそうなことを話す会議」で課題が言いやすくなる

 では、具体的にはどのように組織風土を変えていけばよいのか。観念的に風土改革の必要性を理解していても実践するのが難しい。そこで、チーム作りによる組織風土改革の実績がある嶋谷光洋氏に具体例な事例についてお聞きしました。

 嶋谷氏は「組織への愛着が高いと事故が減る。チームの仲がいいと業績がよくなる。怒られそうなことを話す会議をすると課題は言いやすい」と述べています。「ある工場で大きな事故が起きてしまった。その理由は担当者がなかなか目の前にある課題、リスクについて言えなかったことにある。頻繁に止まっていたラインがこの会議をすることで止まらなくなった」。ただし、この会議のやり方にルールが必要だと強調。「長い会議はダメ。15分で頻繁に行うこと。短い時間でも課題を共有し、行動を習慣化することで確実に職場の雰囲気は変わる」と確信をもって語りました。具体的なやり方のコツは動画で解説。

 「怒られそうなことを話す会議」(チームで課題解決1)*

https://www.youtube.com/watch?v=NJX4f8vRyFU&feature=youtu.be

 第三者委員会は組織風土改革の必要性を述べるのみ。このように日々楽しく実践できるリスクマネジメントが新しい企業文化を作り上げることにつながるのではないでしょうか。

*「チームで課題解決」は、ヤフーロッジスタジオで収録。動画撮影・編集協力は、日本リスクマネジャー&コンサルタント協会。

嶋谷光洋(しまたに みつひろ)氏略歴

Crazy Teams株式会社 代表取締役社長

大阪府生まれ。立命館大学経営学部卒。独立系商社OA機器法人営業部にてトップ成績。1985年、人財育成コンサルティング会社にて、食品スーパー、家電量販店等の小売業界で「売り場づくり研修」「現場のリーダー研修」を提供。2000年、株式会社アイマムを設立し、5,000名規模の職種転換者研修、トレーナー養成研修、1万名以上の管理職ファシリテーション研修の設計とチーム運営を手掛ける。2012年、「180日間営業変革プロジェクト」「180日間組織変革プロジェクト」を開発。300チーム以上に導入。2018年、Crazy Teams株式会社を設立し、ネットとリアルを融合したチーム作りプラットフォームを提供。

<参考サイト>

NHK かんぽ生命問題「信頼回復 早期に」日本郵政増田寛也社長(2020年2月11日)

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200211/k10012280601000.html