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能登半島地震で愛猫、34日ぶり再会 帰省先で被災 『帰巣本能』がポイント

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
イメージ写真(写真:イメージマート)

能登半島地震で行方不明になっていた飼い猫が、34日ぶりに石川県珠洲市内で無事保護されました。

見つかったのは、金沢市の公務員松田絵里子さん(44)が飼う11歳の雄猫・コタロウくんで、正月は珠洲市宝立町にある松田さんの実家に家族4人と一緒に帰省していたときに、地震になり、コタロウくんは、行方不明になったと時事通信社は伝えています。

コタロウくん、よく生き抜いた

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イメージ写真写真:アフロ

能登半島地震は、今年の1月1日16時10分に、発生しました。時事通信社によりますと、松田さんらは、その頃は、景勝地「見附島」に出掛けていて地震に見舞われ、慌てて実家に戻ると建物はほぼ全壊し、愛猫のコタロウくんは行方不明になっていたそうです。

ここで重要なことは、コタロウくんはもともと金沢市に住んでいて、松田さんらが帰省するので、珠洲市に連れて来られたということです。そこで地震に遭ってしまったのです。

コタロウくんは、捨て猫でした。松田さんは、生後数カ月の子猫を拾い大切に育て11歳まで一緒に暮らしました。そして、今回の地震に遭ってしまったのです。

松田さんは、諦めることはできず、支援団体に協力を仰ぎ、避難所にチラシを張るなど情報提供を呼び掛けました。何の手掛かりもないまま1カ月が過ぎたそうです。

ところが、松田さんの思いとコタロウくんの思いがつながり、34日目に奇跡の再会となったのです。

もちろん、コタロウくんは5キロの体重が4キロまでに減り、脱水などを起こしていたそうです。

コタロウくんの幸運

コタロウくんが、このように奇跡の再会ができたのは、もちろん松田さんが、諦めず捜索したからです。それ以外にも以下のような幸運があります。

コタロウくんの体重が5キロ

体重が2キロ以下の猫だと、体力がないことが多いです。そんな猫は、食べないと低血糖を起こしたりします。このような状態になると命にかかわることもあります。しかし、コタロウくんは、5キロほどありました。34日目に再会したときは、1キロほど痩せていたそうですが、それでも4キロほどあったので、持ちこたえたのでしょう。

お正月で食べ物が各家にあった

能登半島地震が起きたのは1月1日だったので、多くの家では普段よりお正月用の食べ物が豊富にありました。倒壊した家の中には、まだ食べていない料理が残されていました。

コタロウくんは、ネズミを獲ったりできないかもしれません。その一方で、猫なので、狭いところにも侵入できるので、そのようなものを食べていたと推測されます。もちろん、松田さんと再会したときは、痩せて細っていたので食べ物や飲み水には苦労したと思います。

コタロウくんははじめて来たのではなく、何回か来ている(筆者の推測)

これは、あくまでも推測です。コタロウくんは、松田さんの実家なので珠洲市に来たのは、はじめてはない気がします。コタロウくんは11歳なので、何度が帰省していたので、土地勘があったのでしょう。

猫を捜索するときは、帰巣本能を考慮する

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イメージ写真写真:イメージマート

地震が起こると、猫はびっくりして外に出て行ってしまうことはよくあります。阪神淡路大震災のときも、家から逃げ出してしまった猫が多くいました。

多くの猫は、家に戻ってきます。それは、猫には帰巣本能があるといわれているからです。つまり、「猫は家につく」といわれているように、巣である家に戻ってくるのです(コタロウくんは、自分の家でなく実家に戻ってきています)。

嫌なたとえで申し訳ないですが、昔は自宅にいる猫を川べりなどに捨てに行くと、数日後には、また家に戻るので、車で数十キロ先まで捨てに行ったという話があります(いまは、これをすれば、動物愛護法違反で犯罪です)。

猫の帰巣本能の理由はいくつかの説があります。

・感覚地図

外に出ている猫は、視覚や聴覚、嗅覚などを使って頭の中に地図を作っているといわれています。これを使って自宅へ帰り着くのです。

たとえば、都会だとコンビニエンスストアがたくさんあるので、それを目安に、場所を覚える人もいるでしょう。あのコンビニエンスストアを曲がるとお気にいりの店があるとか。

・磁場がわかる

渡り鳥の目には磁場を感じるセンサーがあり、地球の磁場が見えているのでは?といわれています。

猫にも、磁場を感じるセンサーがあるのではといわれています。

このような猫が持っている本能を使って、自宅に戻ってくるのです。

行方不明の猫を探すコツ

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猫はびっくりしたり、何かのアクシデントがあったりして行方不明になることがあります。そのときのコツは、名前を呼んで探すことです。

猫が行方不明になると、猫自身はそんなに遠くにはいきません。猫は自分の名前を呼ばれていることがわかるので「ニャア」と返事をします。

筆者の動物病院で聞いた話ですが、猫が行方不明になって懸命に飼い主は探しました。1週間たって、家の周りに貼り紙をしたり、猫友に話したりして探しました。

飼い主が諦めかけていたときに、かぼそい声で愛猫の「ニャア」という声が聞こえたのです。その方向に行くと、シャターが閉まっているガレージの中から愛猫の鳴き声が聞こえたそうです。それでガレージの持ち主に事情を説明して愛猫を救出しました。

まとめ

飼い猫は、誰かに連れて行かれるとかでないかぎり、自宅の近くにいることが多いです。

人目線で探すとわからないことが多いのですが、しゃがんで低い姿勢になり探すのもいいですね。そして、そのときは、必ず「名前」を呼びましょう。聴覚を使って探すと効果的です(人は犬のように嗅覚は優れていないので、ニオイで探すのは難しいですから)。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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