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田んぼの持ち主に「カエルの鳴き声がうるさい」とクレームで炎上。動物の騒音問題を考える

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
(写真:イメージマート)

Twitterのユーザーが、田んぼの持ち主への苦情が書かれた張り紙を見つけたという内容が炎上しているとまいどなニュースが伝えました。

その張り紙は以下のように書かれています。

「田んぼの持ち主様へ

カエルの鳴き声による騒音に毎年悩まされています。

鳴き声が煩くて眠ることができず非常に苦痛です。

騒音対策のご対応お願いします。

近隣住民より」

アマガエルが鳴く理由は3つ

梅雨が始まると田んぼでアマガエルが、大合唱します。童謡の『かえるのうた』に「かえるのうたがきこえてくるよ クワクワクワクワ」というものがあり、アマガエルは鳴くものです。鳴くのはオスだけです。

なぜ、オスが鳴くのか、その理由は3つあります。

・オスがメスを呼ぶ「広告音(こうこくおん)」

・オスが縄張りを宣言する

・オスが雨の降ることを知らせる「雨鳴き(あまなき)、レインコール、シャワーコール」

このような理由から、アマガエルのオスが鳴いているのです。

田んぼにおけるアマガエルの役割

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イメージ写真写真:イメージマート

アマガエルが鳴いてうるさいので、田んぼにいないほうがいいと思っている人もいるかもしれません。田んぼはアマガエルにとって重要な産卵場所であり、アマガエルは田んぼの害虫を食べることで稲の生育を助けています。同様に、他のカエルやクモやトンボも田んぼの害虫を捕食します。

一方、カエルは餌として人気なのでウナギ、ヘビ、鳥、ときには大きなクモやタガメにまで食べられます。田んぼはこのような生態系になっているのです。

田んぼの近隣の苦情を訴えた人は、田んぼの生態系の重要性より、日々の生活を優先させて静かに寝かせてほしかったのでしょう。

カエルを駆除するために大量の殺虫剤や農薬を使用すると、害虫は減り同時にカエルたちやそれを餌にする生き物も減少してしまいます。

このように生態系が崩れて、他の生き物たちも生きていけなくなるため、バランスを保つためにもカエルの存在は不可欠です。カエルがいるということは、その田んぼがあまり農薬を使用していないことになり、地域の人にとっても安全なのです。

カエルの鳴き声がうるさいという人がいる時代に犬と猫の飼い主が気をつけること

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イメージ写真写真:アフロ

自然音である田んぼのカエルの鳴き声がうるさいと苦情をいう人がいる世の中です。

寝るときに、カエルの鳴き声が気になるようでしたら、その時期だけ(冬になると、カエルは鳴かないので)、耳栓をするなど工夫をしてもらうといいかもしれません。

今回は、カエルの鳴き声でしたが、犬や猫の鳴き声も騒音として問題になることがあります。犬なら、十分な散歩をさせて、猫なら不妊去勢手術をしていくと、トラブルになるほど鳴くことは少ないです。

その一方で、犬も猫も長寿になっているので、そこで新たな騒音問題が発生します。犬なら認知症、猫なら認知症と甲状腺機能亢進症という病気があります。それらになると、鳴き声でトラブルになる可能性が高くなります。

認知症の夜鳴きをさせないために、投薬がありますが、それもなかなか難しいです。Twitterに「老犬介護」がトレンド入りすることがありますので、老犬を介護する知り合いに相談することもいいかもしれません。

一方、猫の甲状腺機能亢進症で鳴く場合は、内服は効果があります。この病気は、動物病院で血液検査をしてもらえればわかります。猫の認知症も犬と同様、鳴かないようにすることは難しいです。

まとめ

カエルの声をうるさいと感じる人がいることにびっくりしました。そのうち、セミの鳴き声がうるさいから木を切れなどに発展するのかもしれません。

犬や猫を飼っていると、注意していても高齢になると、夜中に鳴くことになるかもしれません。鳴き声は、響くものです。犬や猫を飼っている人は、健康状態をきちんと把握して適切にケアをしたり、近所とのコミュニケーションをしっかりしておくと、トラブルを減らせることができます。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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