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「もう飼う余裕がない」イギリスでペットを手放す人が急増。日本は大丈夫?

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
イメージ写真(写真:アフロ)

ペットの先進国というイメージが強く、深刻な物価高に陥っているイギリスで、生活費の不足からペットを手放す人が急増していると、ABEMA TIMESが伝えています。

イギリスの事情と比較しながら日本はペットの遺棄が増えないのかを見ていきましょう。

イギリスではコロナの不安で“ペットブーム”

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イギリスのここ数年のペット事情を見ていきましょう。

イギリスでは新型コロナによる長期的なロックダウンに不安を感じた人々が、動物に癒やしを求めてペットを飼い始めました。日本でもコロナ禍になり新規でペットを飼う人が増えました。

イギリス国内だけでは、ペットの供給が追い付かず、海外から子犬や子猫を輸入するほどの加熱ぶりだったということです。

イギリスの物価高で“ペットを手放す”

一度は愛して家族の一員に迎えたペットですが、ペットを手放す理由は、イギリスを襲っている物価高だそうです。

インフレ率は10%を超えていて、ある調査によると、イギリスの4人に1人がせっけんやトイレットペーパーなしでの生活を余儀なくされているといいます。

イギリス・ロンドン南部にある犬猫専門の保護救助センター(バタシー・ドッグス・アンド・キャッツ・ホーム)では、最大で約200匹の犬を収容できるが、9月の1カ月間だけで引き取ってほしいという問い合わせが700件を超えました。

コロナ禍で、ペットを飼ったけれど以下の理由でペットを手放しています。

・ペットの医療費を払えない

・エサ代が払えない

・生活費を下げるためペット不可の物件に引っ越す

・仕事が忙しくなりペットの面倒を見られなくなった

などから、このようなことが起こっているのです。

日本は“ペットを手放す”人が増えないの?

毎日新聞によりますと、10月は原材料価格の高騰や記録的な円安の影響で、飲食料品の値上げは今年最多の約6700品目となっています。値上げラッシュの結果、生鮮食品を除く食料が5.9%上昇。電気料金やガス料金などエネルギー価格も15.2%上昇と高騰が続いています。

特に猫は、寒さに弱い動物なので、留守でもエアコンをつけておかないと、下部尿路症候群などのオシッコが出にくい病気になりやすい子もいます。

今年の4月を皮切りに価格改定されたペットフードが多く、腎臓病などの病気のペットが食べる処方食を出しているROYAL CANINやHill'sなども約10%値上げをしました。

ペットフードだけにとどまらず、オムツやトイレシートといった衛生用品にも値上げをしています。

シニアの子や慢性疾患(腎臓病、心臓病、糖尿病など)を持っている子は、安価なペットフードを選ぶと命にかかわることもあるので、ペットフードの節約はできにくい状態です。

値段が高騰したからといって、トイレの世話を怠るとペットがオシッコを我慢して膀胱炎などの病気にかかる場合もあります。

ペットフードやペット用品の値上げはどうすれば?

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いつも購入しているホームセンターやスーパーなどのセールを活用することは大切です。

ネット通販でペット用品を購入している人は、たとえば楽天市場だと定期的にスーパーセールを実施しています。Amazonも頻繁にタイムセールをしているので、日頃からよく利用するサイトのセールをチェックするとお得にペット用品を買えることもあるのでこのような情報は重要です。

生活が困窮しているので、ペットの診察を控えたら?

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生活が困窮しているので、ペットの診察を控えたら、余計に治療費がかかることに陥ることもあります。

たとえば、寒くなると猫に多いオシッコが出にくい下部尿路症候群にかかり、症状がひどいと命にかかわることもあります。初期に治療を行うと通院だけで完治したのに、入院する必要があり高額の治療費がかかることもあります。

そうはいっても、光熱費が上がって生活が楽ではないのに、基本的に人間のように保険適用されない(民間の保険は適用されるケースが多いです)ので、動物病院に行くのをためらう気持ちはよく理解できます。

いつもと様子が違うと思ったら、自己判断せずにかかりつけの動物病院に連絡して尋ねてみてくださいね。

イギリスはペットを手放す人が急増しているが、日本は大丈夫なのか?

イギリスと日本のペットについて比べてみましょう。

イギリスの人口は6604万人(2017年11月)、日本の人口は1億2642万人(2018年12月)です。イギリスの人口は日本の約半分です。

イギリスで飼育されている数は犬が900万頭、猫が800万頭、日本で飼育されている数は犬が892万頭、猫が952万6千頭です。

つまりイギリスにおける犬や猫の数はよく似ていますが、人口が日本の半分なので、ペット飼育世帯率は日本の約2倍ということです。

イギリスは、確かにペットを飼っている率はかなり高いです。イギリスに旅行に行くとカフェやレストランや公共施設などの日常の場面で、ごく自然に社会に溶け込んでいるペットを見る機会が多いです。

そんなペットが身近なイギリスでもこのようなペットを手放す人が増えているのです。

日本でも物価高が続くと同じようなことが起きてもおかしくないです。

まとめ

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最近では、ペットは家族の一員という言葉が定着しつつあります。きれいごとかもしれませんが、経済状況が悪くなったからといって、子供を捨てる親はほとんどいないと思います。ペットも家族なので、その辺りを考えてほしいです。飼い主の生活スタイルを変化させて、ペットを遺棄しないようにと思います。

犬や猫の寿命は平均で約15年あります。その間にいろいろなことがあるので、その覚悟を持って飼ってほしいです。犬や猫は、自力で生き抜いて新しい家族を見つけることは難しいです。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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