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野良猫にとって厳しい冬到来。子猫を“耳カットなし”で避妊手術のお願いに来た人の思いとは?

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
撮影は筆者 メイちゃん

BS大分放送によりますと、おおいた動物愛護センターで収容できるのは猫の最大数は100匹に限られていて、現在、預かっているのは143匹にのぼっているとのことです。コロナ禍が始まった頃は、巣ごもり需要で動物を飼いたい人が多かったけれど、感染状況が落ち着きを取り戻したため、ペット需要が伸び悩み、譲渡希望者が減っているという残酷な現実があるそうです。

そんななか、筆者の動物病院では「寒くなるので、外の子猫の避妊手術をしてもらますか」という電話がかかってきました。小さな行動ではありますが、目の前の子猫を救うことについて考えてみましょう。

「寒くなるので、外の子猫を避妊手術してもらえますか?」と電話が 

猫の保護活動と聞くと、愛護団体を作って大規模に行動するものだと思っている人がいるかもしれません。1匹の野良猫を救うことも立派な動物愛護活動です。

筆者の動物病院は、一般的な動物病院なので、野良猫専門に不妊去勢手術をしているところではないです。それでも飼い主のなかには猫が好きな人が多く、外で見かける子猫を保護して飼っている人も多くいます。

「寒くなるので、外にいた子猫を家に迎え入れようと考えています。その前に避妊手術してもらえますか?」と電話をかけてきたFさんは、シニアの猫を飼っている飼い主です。

猫を飼っている人は、外で見かける猫が気になる人が多いです。Fさんもそのひとりでした。「春ぐらいにうちの近所で生まれた子でね。母猫と一緒に来ていたのですが、母猫が来なくなり、この子がひとりで庭にいるようになりました。うちのところにシニアの猫がいるから、その子と一緒にできるかな?」と心配そうでした。

「子猫の方は、まだ遊びたい盛りなので、先住猫と仲良くできると思いますが、シニアの猫は警戒するし、嫌がるかもしれませんね」と筆者は答えました。

「先に家にいる子にワクチン打っておきます」

ワクチン接種のイメージ写真
ワクチン接種のイメージ写真写真:アフロ

外に出さないし、シニアの猫・ミーちゃん1匹しか飼っていないFさんのところでは、しばらく混合ワクチンを打っていませんでした。しかし、外の子を入れるので、Fさんはミーちゃんにワクチンを接種させました。

動物病院あるあるなのですが、猫の多頭飼育をしている家で室内飼なのでワクチン接種をしていないところに1匹の外の子を入れたら、シニアの子、病気がちな子に、猫の風邪がたちまち広がったということがあります。

外の子はたいした症状がなくても猫ウイルス性鼻気管炎(ネコヘルペス)を持っている子が多く、猫同士ならワクチンを打っていないと感染しやすいです(このウイルスは人間には感染しません)。シニアの子、免疫が弱い子、慢性疾患を持っている子が、猫ウイスル性鼻気管炎にかかると命にかかわることがあるので、注意してください。

Fさんは、ミーちゃんのワクチン接種も終わったので外の子猫を捕獲して筆者の動物病院に連れて来ました。

メイちゃん(外の子猫)は、洗濯ネットに入り紙袋でやってきた

外の猫と聞くと、獣医師の筆者は触れるのだろうか?と思います。外の子は、人間に危害を与えられたので狂暴になるケースもあります。それでも、麻酔をして猫の不妊去勢手術をしなくてはいけません。

筆者は緊張してFさんの来院を待っていました。Fさんはケージを持っていなくて、買い物の帰りのような感じで動物病院にやってきました。どこに猫がいるのだろうと目で探すと、百貨店の紙袋の中に洗濯ネットに入った子猫がいました。筆者の心配は杞憂に終わりました。

とても人懐っこい子猫でした。そうじゃないと、いくら洗濯ネットに入れていても暴れて紙袋が破れてしまいます。

メイちゃんの避妊手術の後の耳のカットはしなくていい

外の猫を捕獲して、不妊去勢手術をする人がいますが、全部の猫が家猫になるわけではなく、元の場所に戻されることもあります。TNR※というものです。そのとき、猫に不妊去勢手術をしているかどうか尋ねても答えてくれるわけではないので、一目見て不妊去勢手術をしていることがわかるように、耳をカットをします。耳のカットした形が桜の花に似ていることから、桜猫と呼ばれています。

「この子の耳のカットをしておくのですね?」と筆者は尋ねました。「私がこれから、室内で飼うつもりなので、耳のカットはしなくていいです」とAさんは、はっきりと答えました。

メイちゃんは、外に戻されることがなく、室内飼いの猫になって温かい部屋で平和に暮らしています。まだ先住猫のミーちゃんと仲良くできないかもしれないので、部屋は分けて暮らしているそうです。

※TNRは「Trap(捕獲)、Neuter(不妊手術)、Return(元の場所に戻す)」の頭文字で不妊去勢手術をして元の場所に戻すことです。

まとめ

イメージ写真
イメージ写真写真:アフロ

外の猫がかわいそうと思って保護する気持ちは大切です。これから寒い時期になるので、外の子は寝るところもフカフカしていないことが多く、冷たい風に当たるしかないかもしれません。毎日、きちんと食べ物にありつけないこともあるでしょう。

そのため、室内飼いは猫にとってはよい環境です。その一方で、猫は繁殖能力が旺盛な動物なので、家に入れるときは必ず不妊去勢手術をしてあげましょう。

多頭飼育崩壊のニュースを見ると、自分とは関係がないとを思うかもしれませんが、家に入れた猫がほんの一瞬、家出をしただけで妊娠している可能性があるかもしれないのです。

メイちゃんの骨格は小さいですが、避妊手術したときに、内臓脂肪が多くあったので、太らせないようにと伝えてあります。メイちゃんは、温かい部屋でクリスマスを過ごすことができるでしょう。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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