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【猛暑到来】犬猫に「夏場のエアコンを使わない」で熱中症になったら法律違反になるの?

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
イメージ写真(写真:アフロ)

5月に千葉県で犬のドーベルマンの母子の2匹が盗まれた事件があり、まだ記憶に新しいと思います。

ドーベルマンを窃盗した容疑者たちは、その飼い主の飼養環境が気にいらなかったので、犯行に及んだと供述しているそうです。いかなる理由があろうとも、飼い主に無断で犬を連れ出すのは、犯罪行為です。

ペットの飼養環境の水準は、個人によって異なります。これで大丈夫だと思っていると、もしかしたら、動物愛護法にひっかかる可能性があります。今年は猛暑なので、夏場の犬猫の外飼いやエアコンの使い方について考えましょう。

動物虐待疑い案件

撮影は筆者 動物虐待疑い案件連絡票
撮影は筆者 動物虐待疑い案件連絡票

先日、行政から動物愛護法に関する書類が送られてきました。そこには、「みだりな殺傷及び虐待を受けた動物の診察された場合」の通報先行政機関が変更になったお知らせと「動物虐待疑い案件連絡票」という用紙も同封されていました。

動物虐待疑い案件の連絡票の記入例には、上記の写真にあるように、ネグレクト(給餌給水を怠る、治療をせずに放置、など)とあります。このネグレクトというのは、人によって適正飼養の水準が違うので難しいところです。

ネグレクトという虐待

写真:イメージマート

犬猫を殴る、傷つけるなどの積極的虐待は罪になることが理解されやすいですが、ネグレクトは、全く悪気や罪の意識がないように思われます。

「犬猫の飼い方はこういうもんだ」という思い込みが動物に対する「ある種のネグレクト」を引き起こす可能性があるのです。

たとえば、この夏は猛暑です。仕事に行くときに、エアコンをつけずに、犬猫を室内に閉じ込めておくと、簡単に熱中症になります。

それ以外でも外飼いの犬猫はなかなか温度管理ができないです。外で飼っていて、熱中症になれば、それはある種のネグレクトになる可能性もあります。

適正飼養とは?

現在では、犬猫に対する意識が高くなり、適切飼養の水準も上がっています。

環境省のサイトを見れば、家庭動物等の飼養及び保管に関する基準というものがあります。以下です。

1 家庭動物等の所有者又は占有者(以下「所有者等」という。)は、命あるものである家庭動物等の適正な飼養及び保管に責任を負う者として、動物の健康及び安全を保持しつつ、その生態、習性及び生理を理解し、愛情をもって家庭動物等を取り扱うとともに、その所有者は、家庭動物等をその命を終えるまで適切に飼養(以下「終生飼養」という。)するように努めること。

上記の基準を見れば、犬猫を適切に飼養することとなっています。適切に飼養というのは、具体的に何度の室温で犬猫を飼うとは書かれていませんが、熱中症になる温度で飼養していれば、適切ではないという解釈もできます。

この辺りが、ネグレクトのグレーゾーンになってきます。

筆者としては、犬猫は、人間のように皮膚に汗腺がなく、汗をかけない動物(肉球だけは汗が出ます)なので、暑さに弱い動物です。そのような子たちが、エアコンがついていない室内に放置されて熱中症になったら、ネグレクトという虐待に当てはまるのではないか、と考えます。

まとめ

イメージ写真
イメージ写真写真:イメージマート

獣医師という職業柄、ペットショップがあれば入って犬猫が販売されているのを複雑な思いで眺めます(消費者はできれば、保護施設か直接ブリーダーのところで犬猫を求めてほしいので)。

子犬や子猫の値段は、一時のことを考えれば、決して安い値段ではないですが、少し落ちついた感じがします。

それでも40万円以上の子犬や子猫が並んでいます。その子たちをローンで購入して、そしてエアコンをつけるために電気代を払い、15年近くの寿命まで、適切飼育できるのかをよく考えてもらいたいです。

犬猫は、こうやって飼養するものと固定観念のある人は、ひょっとしたらそれはある種のネグレクトという虐待になる可能があるのです。

適切な飼養とはなにかは時代とともに改善されるので、アップデートしかないと法律違反になることもあるのです。

産経新聞によりますと、パナソニックの調査で、夏のエアコン利用で約3割の人が「ガマンできるときは消す」、「ほぼ使わない」「使わない」を合わせた「我慢派・使わない派」は合わせて4割超に達したと伝えています。こういう人は、犬猫にはエアコンを使うべきだと理解してほしいです。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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