3年前に成立した「改正動物愛護管理法」により、“飼養頭数の制限”や“飼養施設の広さ”などの数値制限が導入されました。

これで、繁殖犬の飼養環境が改善されたように思うかもしれません。しかし、まだ、日本ではあまり議論が起こっていない問題があるのです。今日はそのことについて見ていきましょう。

カナダの動物保護団体が犬の声帯切除手術の禁止を呼びかけ

わんちゃんホンポが、以下のように伝えています。

カナダのブリティッシュコロンビア州の動物保護団体『BC動物虐待防止協会』が、ブリティッシュコロンビア大学獣医学部に対し、犬の声帯切除手術を禁止するよう呼びかけていることが報道されています。

同団体は過去にも猫の抜爪手術、美容目的の犬の断耳や断尾について獣医師会に働きかけ、2015年に同州でのこれらの手術の禁止が法律で定められた実績を持っています。

つまりカナダの動物保護団体は、動物の福祉から考えると、犬の声帯切除手術はよくないので、止めるべきだといっているのです。

日本でも繁殖犬は吠える声を出なくする手術がされている?

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イメージ写真写真:アフロ

筆者は、全国の元繁殖犬を診察しているわけではありません。しかし、臨床現場にいると、元繁殖犬のなかには、吠えることができない子がいるのです。

以前、元繁殖犬とその犬の娘を飼っている家庭に遊びに行ったことがあります。外で物音がしたときに、娘の犬は走ってワンワンと吠えました。その一方で、元繁殖犬の母犬は、吠えている動作はしているのですが、声が出ていないのです。咳をするかのような声しか出せませんでした。

不思議に思っていると飼い主が「この母犬は、6歳までブリーダーさんのところにいて、吠えないように手術してあるの」と教えてくれました。

つまり、犬を繁殖させているところでは、犬が数多くいるので吠えないように声帯を取る手術などをしていることがあるのです。犬によっては、キューキュー音を出すおもちゃのような声を出す子もいます。または、ハトのような声に変わってしまう場合もあります。

吠えることができない繁殖犬がいることはあまり知られていません。犬にとって吠えることができないとはどういうことなのかを見ていきましょう。

吠えることができない犬のなにが問題か?

犬が多頭飼育されているところでは、部外者が来ると一斉に犬が吠えて、近隣住民に騒音被害を起こすこともあります。

そのため、犬の繁殖場では、吠えることができない犬がいるわけです。こうしておくと、ブリーダーは騒音の面で考慮することが少なくなります(人間の都合です)。しかし、犬にとっては、以下のようにいろいろな問題があるのです。

吠えることができない犬の問題点とは?

・吠えたいという要求が叶わず、ストレスがたまります。

・吠えない手術をしたので、吠えるとのどに痛みがある子もおり、メンタルの疾患になる可能性があります。

・気道の手術により気道閉塞や誤嚥性肺炎のリスクが高くなります。

・声帯あたりに腫瘍のリスクが高くなります。

吠えない繁殖犬を見て、おとなしい子だと思っていると、このような手術がされている可能性があるのです。これは動物福祉から考えるとある意味で虐待行為になるのではないでしょうか。

吠えることができない手術って必要なの?

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もちろん、プロのドッグトレーナーをつけて、吠えないように改善されないときなどは、声帯を取る手術が必要な場合があるかもしれません。

または、「声帯付近にがんができ、除去しなければ犬が死んでしまう」という状況の場合は、声帯切除手術する飼い主は多いでしょう。

しかし、犬の繁殖場で吠えるからというだけで、このような手術をしてもいいのでしょうか。

まとめ

日本の全ての繁殖犬が、声帯を取る手術をしているわけではありませんが、そのようなことをしている犬もいるのです。

ペットショップに並んでいる子犬は、キラキラしていて本当にかわいいかもしれません。消費者が、その母犬に関心を持つことで、少しずつ飼養環境が変化していくのではないでしょうか。消費者が知ることで、繁殖犬の飼養環境が改善されて動物福祉がすすみます。