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捕まえて食べても大丈夫?【外来種のウシガエル】水遊びの季節が来る前に

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
イメージ写真(写真:イメージマート)

神戸新聞NEXTによりますと、職業体験で訪れた中学生が、「なか・やちよの森公園」で兵庫県内での絶滅が危惧されている希少種・モリアオガエルを発見しました。

中学生たちは、ウシガエルが外来種で他の生物を食い荒らしていることを知り「捕まえて食べてやる」と意気込んで捕獲したカエルが希少種」だったということです。中学生が、モリアオガエルを捕まえたことは、すばらしいことですね。

川辺や水田にいるウシガエルを食べても大丈夫なのか法的な面と衛生的な面から見ていきましょう。

ウシガエル

ウシガエル 目の後ろに鼓膜
ウシガエル 目の後ろに鼓膜写真:アフロ/撮影協力:井の頭自然文化園

日本で食べられるカエルは、一般的には販売している食用ガエルのウシガエルだけです(ヒキガエルは食べられません。後述で説明します)。

現在の日本で、カエルの食用はあまり一般的ではありません。もともと1900年代にアメリカから食用としてウシガエルが輸入され、それが逃げて外来種のカエルであるウシガエルが全国各地で繁栄するようになりました。

ウシガエルの大きさ

・体長11~18cm

・体重500~600g

ウシガエルの特徴

□水に対する依存度が高い

ウシガエルは普段から水辺に生息しています。

たとえば、身近なアマガエルは普段は草木に生息しており、積極的に水の中に飛び込みませんし、飛び込んでも水の中での泳ぎは遅いです。

その一方、ウシガエルは泳ぎが得意なので、ヒレや後ろ足の筋力が発達しています。

鼓膜が目より大きい

ウシガエルやアマガエルやトノサマガエルにも共通するのが、目の後ろに丸い鼓膜があることです。

ウシガエルの鼓膜は成長と共に大きく発達し、目の大きさを超えます。そして、鼓膜と体の境界線が鮮明なのもウシガエルの特徴と言えます。

ヒキガエルは食べるとNG

ヒキガエル
ヒキガエル写真:アフロ

大型カエルであるヒキガエルは、日本でよく目にします。

ヒキガエルは、ヒキ、ガマガエル、ガマ、イボガエルとも呼ばれています。体表にイボのようなものがあります。

そのうえ、ヒキガエルは皮膚に有毒物質を含んでいるため、大型でありながら食用としては利用できないのです。

ヒキガエルの毒

ヒキガエルは鼓膜の横の「耳腺」という部分から白い毒液を出します。

「ブフォトキシン」と呼ばれる毒を出します(「ブフォ」はヒキガエルの学名、「トキシン」は毒という意味です)。

ブフォトキシンの人間への害

ヒキガエルの毒「ブフォトキシン」は強力な神経毒で、皮膚に触れると赤く炎症を起こしてしまうことがあります。

ヒキガエルの毒が人間の口から入ってしまった場合、嘔吐、下痢、幻覚、心臓発作などを引き起こし、命に関わることもあります。

ブフォトキシンの犬・猫への場合

犬や猫がヒキガエルにちょっかいを出してしまうことがあります。

犬や猫は人間よりも致死量が少ないため、食べてしまった場合はとくに危険です。

ヒキガエル
ヒキガエル写真:アフロ

ヒキガエルの大きさ

・体長7~18cm

・体重50~600g

ヒキガエルの特徴

・背中には多数のイボやシワがある

一般的には、見た目が美しいとは言い難いかもしれません。

・ヒキガエルは、普段は地面の上にいます(水の中にはほとんど入りません)。

ウシガエルは外来生物法が適用

ウシガエルは特定外来生物※1なので、食べる場合は、その場で処分※2しないといけません。そうしないと、法律違反です。

ウシガエルは外来生物法が適用になり、飼育、生きたまま運搬することが原則禁止されます。つまり、捕獲しても生きたまま家に持って帰って、家族に見せることはできないのです。

※1 特定外来生物

海外起源の外来種(外来生物)で、生態系、人命、身体、農林水産業などへの被害をおよぼす、または、およぼすおそれがあるものの中から政令で指定されたものをいいます。

具体的には、アライグマ、カミツキガメ、ウシガエル、セアカゴケグモなど100種以上が指定されています。

※2 処分

動物の愛護及び管理に関する法律では、愛護動物をみだりに殺し、または傷つけることが禁止されています。

人の占有していない野生の外来種については、動物愛護管理法の対象とはなりませんが、その処分に当たっては、できる限り対象となる動物に苦痛を与えない方法をとるようにしましょう。

ウシガエルを食べる場合の注意点

ウシガエル
ウシガエル写真:イメージマート

その場で処分してウシガエルを食べれば、法的に問題はありません。しかし、衛生的には、寄生虫により食中毒になる可能性があります。

ウシガエルの寄生虫・マンソン裂頭条虫

気をつけなければならないのは、マンソン裂頭条虫が寄生していることです。

マンソン裂頭条虫は、幼虫のまま人間の皮下組織に侵入し、皮下組織内を迷走する幼虫移行症を引き起こします。場合によっては失明の危険性もあります。治療法は外科手術のみです。

ウシガエルを食べる場合はしっかりと火を通して生食を避けましょう。

まとめ

写真:アフロ

夏になり、水遊びの季節になりました。ウシガエルを捕獲しても特定外来生物なので、生きたまま運搬は原則禁止なので捕まえて食べるというのは、あまり現実的な話ではありませんね。

間違って、ヒキガエルを捕まえたら、毒を持っていて危険なので触らない方がいいです。

犬や猫がカエルを食べようとしていても、寄生虫の問題があるので、食べさせない方がいいですね。

カエルは、自然の中でどんな生活をしているかを観察しておくのが一番のおすすめです。もし、カエルの種類がわからないときは、ネットで調べるか専門機関に連絡して教えてもらいましょう。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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