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【爆発物探知犬・地雷探知犬】ウクライナ侵攻におけるパトロンくんの活躍とは?

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
BBC News Japan 爆発物探知犬、チェルニヒウで活躍 ウクライナ侵攻

ロシア軍がウクライナ侵攻で残した地雷や不発弾の撤去に、爆発物探知犬が活躍しています。

人間は、犬が優れた能力があることを知り使役犬を作り出しました。使役犬とは、人間のために働いてくる犬ですが、盲導犬、介助犬、牧羊犬、麻薬探知犬などいろいろな形で働いてくれています。今日は有事に働く【爆発物探知犬・地雷探知犬】について見ていきましょう。

爆発物探知犬、チェルニヒウで活躍 ウクライナ侵攻

BBC News Japan 爆発物探知犬、チェルニヒウで活躍 ウクライナ侵攻 より

ウクライナで地雷や不発弾の撤去に、爆発物探知犬が活躍しています。ジャック・ラッセル・テリアのパトロンくんは爆発物探知犬で、現在2歳半。生後6カ月からこの任務についています。現在は、チェルニヒウの救急隊に参加し、これまでに90発以上の爆発物を発見したと言います。

地雷探知犬と爆発物探知犬

BBCのニュースの動画によりますと、地雷も撤去しているので、まずは地雷探知犬について紹介します。

地雷探知犬とは?

提供:イメージマート

地雷探知犬とは、広大な土地のどこにあるかわからない地雷を探す犬のこと。地雷は、地面の下に埋められていて、その上を人間が歩くと爆発する仕組みになっている兵器です。

犬の嗅覚は人間の数百千倍から数百万倍以上も鋭いと言われています。こうした犬の能力を使ったのが、地雷探知犬です。犬は地面の下に埋められたまま何年もたった地雷でも捜索できます。地雷を探すことが、犬にとっては獲物を探す行為によく似ているからです。犬がもともと持っている「狩猟本能」を使って訓練します。「爆発物マーカー(軍用爆薬に混入させている物質)」を獲物に見立て探させるようにします。

地雷探知犬の特徴は、人間が好きで、人間に喜んでもらいたいと思っていることです。犬が爆発物マーカーを見つけたときは、ほめてあげることで犬は、何をすればいいのかの理解が深まるそうです。これを「陽性強化方法」と言って、小さいことでもほめてほめて身につけさせます。

犬は、元来は自由に歩き回るのが好きですが、爆発物マーカーに最短距離で行けるようにも訓練されます。そして犬はごほうびに、おもちゃをもらいます。おやつではなく、なんとささやかなごほうびだろうと思いかもしれません。このような使役犬は、大好きな人間に大好きなおもちゃで思い切り遊んでもらえるほど嬉しいことはないのです。

探知機では捜索できない地雷の存在

いまや科学が進歩しているので、地雷探知犬を使わないでも探知機で大丈夫と思っているかもしれません。しかし探知機だけでは捜索できない地雷の存在もあります。探知機は、金属反応で探すものが多いからです。

その一方で、犬は嗅覚で火薬の臭いを感知して捜索するので、地雷探知犬は優れているのです。

地雷探知犬とともに行動するハンドラー

世界には、不発弾も含めたこうした地雷が、8,000万個〜1億個残されたままになっていると言われています(特に被害が深刻なカンボジアだけでも400〜600万個も残されたままになっています)。

そのため犬の力を借りなければ地雷を捜索することは困難になっているので、彼らの存在は重要なのです。

そして、犬は地中に染み出た火薬の臭いや鉄の臭いを嗅ぎ分けて捜索していますが、そのとき必ずそばにつき添うハンドラーがいます。

ハンドラーは地雷探知犬と信頼関係があり、地雷探知犬の能力を信頼しているからこそ、そのように地雷原を歩くことができるのです。地雷探知犬と一緒に捜索している人間は、地雷探知機だけを使用して捜索している人間より安全で捜索中に死亡する率もより低いそうです(それでも、犠牲になってしまう地雷探知犬とハンドラーは存在しますが)。

爆発物探知犬とは?

写真:イメージマート

似たように思われるかもしれませんが、地雷探知犬と爆発物探知犬との違いがあります。それは、探す場所が異なることです。爆発物探知犬は、空港、建物、荷物、車両といった限られた場所から爆発する恐れのある物を探します。テロのときなども出動します。

どちらの探知犬も「爆発物マーカー」と呼ばれる物質を嗅ぎ分ける訓練が行われ、爆薬に混入されている爆発物マーカーの臭いを頼りに爆薬を発見します(この点が 犬の嗅覚の優れた点ですね)。

こうして命がけで人間の命を守る活動をしている地雷探知犬や爆発物探知犬の存在やそのハンドラーが危険な環境で作業を行っているという現実を知ることは大切なことです。

このウクライナ侵攻で地雷の存在を目のあたりにしました。地雷探知犬や爆発物探知犬の存在に感謝します。このような犬たちが、あまり仕事をしないですむ平和な日々が来ることを願うばかりです。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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