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劣悪環境で飼育し、無資格で帝王切開をしていたペット業者の元代表逮捕...私たちはどうしたらいい?

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
(写真:PantherMedia/イメージマート)

ふんや尿が垂れ流しの劣悪な環境で人間の都合で飼育されていた犬の記事を読むだけでも胸が締めつけられる思いです。そのうえ、獣医師の資格のない人が帝王切開をしていたとあるので、繁殖用に飼われていた犬に申し訳ない思いで一杯です。それでは、この事件を詳しく見ていきましょう。

長野県警は動物愛護法違反容疑でペット業運営会社元代表らを逮捕

長野放送によりますと、10月ぐらいから盛んにこのペット業運営会社の劣悪な環境を放送していました。やっと逮捕されたと思っている人もいるでしょう。

時事通信社によりますと、元従業員らが県警などに通報してこのことが発覚したそうです。この元従業員は、動物が好きでこの施設で働いていたけれど、想像を絶する状況だったので勇気を出して県警に行かれたのでしょう。県警はこれを受けて、9月にこの施設を家宅捜索し捜査を進めていたようです。

 県警によると、業者は施設2カ所で約940頭を飼育。約450頭がいたうち1カ所では、一つのケージで複数の犬が飼育され、毛玉で全身が覆われた犬や失明した犬もいた。捜索時、施設内には排せつ物が大量に放置されていたという。

 百瀬容疑者は逮捕前の取材に、「人手が足りず、手が回っていなかった」と話していた。獣医師免許を持たずに帝王切開をしていたことも明らかにしている。

ペット業者元代表ら逮捕 劣悪環境で犬多数飼育 長野県警 より

つまりこの業者は、狭いケージを何段も重ねてふんや尿の垂れ流し状態でもちろん毛をとくなどもせず1000頭近く犬を飼っていたのです。散歩をしてもらえず子犬を産む道具だったのですね。

そのうえ、獣医師ではない人が、帝王切開をしていたそうです。帝王切開は、避妊手術に比べると難易度が高いです。

それは、帝王切開ということは、子宮の中に赤ちゃんがいることなので、その赤ちゃんのために、子宮では血管が太くなっていますし、そして乳腺では産まれてくる子犬のために、母乳が出るための血管が発達しているのです。

帝王切開で子宮を切るということは、乳腺の近くを切って、そして腹筋を切り子宮にたどりつくわけですから、止血などを丁寧にしないと母犬の命にかかわります。

無菌状態で感染症にならないように帝王切開がされていたのかが疑問が残るところです。犬も人間と同様に痛みを感じるのに、適切な麻酔などのペインコントロールをしてもらっていたのだろうか、と読むと信じにくい環境です。

行政の限界なのか

長野県の保健所の人たちもこの業者のところに行っていたようです。しかし、筆者が考えるところでは、自治体による動物取扱業者による指導現場では、経営者が徹底的な言い逃れを重ねていたのでしょうね。以下のように。

□改善策を講じている途中

□今日の指導は都合が悪い

□明日から善処する

など可能な限り言い逃れするのでしょう。厳しい対応の可能性を示唆すれば逆に脅し文句を言ったりするとも聞きます。

直接現場に行く行政の人たちは、苦しんでいたのではないでしょうか。

行政は、なにをしているのだというのは簡単ですが、いまの動物愛護法を考えるとなかなか難しいのでしょうね。

劣悪な環境のパピーミル(子犬工場)をなくすためにあなたにできることは?

写真:アフロ

松本市のこのような劣悪な環境のブリーダーはまれですが、この事件をみなさんに認識してもらうことが大切ですね。動物好きの人たちは、読むに堪えない記事だと思いますが、現実に起こったことなのです。

筆者は、このような扱いをされているパピーミルは他にはないと思いたいですが、これほど大規模ではなくても他にもあるかもしれないと推測するのです。

ペットの購入方法としては、日本ではペットショップが大半を占めています。以下のことを知識として持ってほしいです。

ペットショップでペットを購入する場合は、ひょっとしたら劣悪な環境のパピーミルやキトンミル(子猫工場)からもしれない

ペットを購入する場合は信頼できるブリーダーにする

ペットを購入するとき保護猫や保護犬を考える

あなたの意識が変化すると劣悪な環境で飼育されている繁殖用の犬や猫がなくなっていきます。動物愛護法もこのような現実を即して変わるのでしょうが、時間がかかります。

あなたの意識改革が第一歩ではないかと考えています。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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