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日本で珍しいボクサーとはどんな犬種? 具志堅用高さんの愛犬「グスマン」くん天国へ

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
イメージ写真です(写真:Panther Media/アフロイメージマート)

元ボクシング世界チャンピオンの具志堅用高さんは、愛犬家として知られていますね。そんな具志堅さんが飼っていたボクサー「グスマン」くんが、天国へ逝きました。ご冥福をお祈りします。今回は、日本では珍しい「ボクサー」ってどんな犬なのか? と「グスマン」くんの死因と見られる肛門にできた腫瘍について、解説していきます。

「ボクサー」ってどんな犬なの?

写真:Panther Media/アフロイメージマート

それでは、具志堅さんが、愛したボクサーは、どんな犬なのかを見ていきましょう。

・日本では珍しい犬種

日本の街でお散歩をしているボクサーに会うことは、あまりないと思います。筆者の動物病院でもいまは、患者としてきてはいません。ジャパンケンネルクラブ(純粋犬種の犬籍登録、動物愛護精神の高揚のために活動している国際的愛犬団体)の2019年の登録数を見ますと、1位はプードル(トイ72,941・ミニチュア156・ミディアム163・スタンダード980)で74,240匹、2位はチワワで50,169匹です。そしてボクサーは54位で154匹なのです。珍しい犬種だということがおわかりだと思います(この数は日本全部の頭数ではなく、ジャパンケンネルクラブに登録されているものです)。

・ボクサーの名前の由来

ドイツの犬なのですが、名前の由来は4つあります。(1)「Beisser」という噛み付き屋という言葉が変形した。(2)ボクサーの祖先である犬のあだ名「Boxl」が変形した。(3)懸賞闘犬だったので、そのままボクサーという名前になった。(4)この犬が実際に前足を出して、ボクサーのような戦いをする。

・ドイツの犬

・猟犬

・狩猟の際、イノシシやシカなどの獲物をかみ伏せる。つまり、猟師が追いついて止めを刺すまで、獲物の鼻などをしっかりかんで、押さえつけておく役目

・強力な顎を持っている

・ワーキング・ドッグで、軍用犬、メッセンジャー犬、荷役犬、警護犬などして働いていました

第一次世界大戦のときに、ボクサーは懲用されていたのです。

・短毛

・太く強健な骨格とよく引き締まった筋肉を持つ

「習性・性格」

・家族にとってはあまり危険がない

・見知らぬ人には警戒心が強い

・興奮しているときは勇猛

・極端な暑さや寒さにはあまり強くない

・好奇心旺盛

「大きさ」

オス: 57~63cm、 30kg以上

メス: 53~59cm、25kg以上

大型犬ですね。ボクサーが世界的に広まったのは、第二次世界大戦後です。ボクサーは戦争に使われていて、帰還兵によって持ち帰られたからです。

上記のようにマッチョな犬なので、きちんとしつけやトレーニングをしていないと、トラブルを起こしやすい犬です。

女房に「こんな怖い犬、飼えない!」と反対されちゃった。それで3か月間、千葉にあるボクサー犬訓練所できちんとしつけをしてもらったんだよ。だから、行儀が良くて全然、悪さはしなかった。

出典:具志堅用高さん テレビでも人気だった愛犬との別れを初告白 「グスマンは最高だった」

記事で具志堅さんが、言われているように、「グスマン」くんは、訓練学校にも行き、しっかり散歩をされていたようです。

「グスマン」くんは、トラブルを起こしたりしていません。ボクサーという犬は、顎が発達しているので噛む力が強いです。そんな「グスマン」くんの気持ちを読み取り、寄り添って飼われていたので、聞き分けのいい子だったのかな、と推測します。そんな「グスマン」くんにも、シニアになり肛門にがんができたのです。次に、肛門のがんについて見ていきましょう。

肛門周辺にできやすい腫瘍とは?

写真:Panther Media/アフロイメージマート

はじめに、筆者は、直接、「グスマン」くんを診察しているわけではないので、一般的に

肛門周辺にできやすい腫瘍のことをお話しします。以下の3種類の腫瘍です。

・肛門周囲腺腫

最も多い腫瘍で、肛門周囲腫瘍全体の5割以上がこの肛門周囲腺腫と言われています。この腫瘍は、雄性ホルモン(テストステロン)が密接に関与していることが知られています。そのため、発生率とリスク因子は、高齢の未去勢雄で最も好発です。そのためこの腫瘍ができても去勢手術をしないと、再発しやすいです。雌犬がなることは、少ないです。

・肛門周囲腺がん

肛門周囲腫瘍全体の中で発生頻度は低く、2割以下と言われています。悪性腫瘍です。これは、雄性ホルモンとは関係がありません。雌犬もこのがんになることもあります。大型犬によく見られます。

・肛門嚢アポクリン腺がん

肛門周囲腫瘍全体の2割弱です。

雌犬の方が発生率は高いと言われています。性差はないという報告もあります。議論の分かれるところです。

シニア期になると、肛門周辺にも腫瘍ができやすくなります。

この辺りは、ウンチを排泄するところなので、悪性でも良性でも腫瘍ができると、出血しますし、ウンチが出にくくなります。そうなると、貧血を起こしたり、食欲が落ちたりします。飼い主が、毎日、チェックできるところですので、排泄のたびに観察してあげてくださいね。肛門周辺にできやすい腫瘍は、比較的雄犬が多いです。全てが悪性というわけでないですが、特に未去勢の子は注意が必要です。

まとめ

写真:Panther Media/アフロイメージマート

具志堅さんは、ボクサーを引退されてもタレントとして、ご活躍されています。

このように、犬の心を理解して、「グスマン」くんと仲良く暮らしていました。愛犬家としての一面もあり、それもみなさんに支持される理由なのでしょうね。具志堅さんのように、犬や猫を飼っている人は、がんという病気と向き合って最期までお世話をしていただきたいとお願いします。現実には、がんになると飼育放棄する人もいますので。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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