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ペットのネコからパンダにラクダ、ゾウまで 体重測定はなぜして、どうやってするの?

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師

私たち臨床獣医師などは、毎日、動物の体重を計測しています。人のように、自分で体重計に乗りじっとしてくれれば、問題はないのですが、動物はそういうわけには、いきません。そのため、工夫をしながら、やっています。そもそもなぜ、体重測定をするか? そしてどのようにして体重を計測しているのか? を写真を見ながら解説します。

なぜ、体重測定するか?

体重測定の本来の役割は、動物の健康を守るためです。動物の健康状態を把握する上で必要な行為で、動物にもほとんど負荷をかけることなく行えるのです。

(赤ちゃんの体重測定とは)

人の新生児も体重測定を健康のためにしています。具体的にお話すれば、ミルクは哺乳瓶に入っているので、どれぐらい飲んだか、わかりやすいです。一方、母乳は、どれぐらい飲んだか、わかりにくいです。そのときは、哺乳前後の新生児の体重を測定し、差し引くことで赤ちゃんの母乳摂取量を確認することができます。

特に子猫や子犬は、体重測定は、健康を守るためにも大切です。幼い動物たちは、毎日、体重が増えるものです。昨日と今日で変化がないのは、まだいいのですが、体重が減るようなことがあると「体調が悪いこと」を示すので、命の危険につながるケースもあります。そういう場合は、ミルクを足したりします。数百グラムしかない子に毎回、血液検査をするわけにもいかないですが、体重測定は、毎日できます。体重測定だけなら、ほとんど動物に負担をかけません。

(大人になってからの体重測定とは)

大人になると、肥満の問題があります。もちろん、増えすぎると、心臓病、糖尿病、関節炎などの病気になります。体重は、健康を管理する上では、大切なことなのです。

それでは、どうやって測定するか、見ていきましょう。

動物病院編

(子猫 1グラム単位で計測できる体重計)  

撮影筆者の知人 子猫
撮影筆者の知人 子猫

↑ずぐに逃げるので、ケースに入れて計測

保護猫の赤ちゃんなどは、人慣れしていないことが多く、じっとしていないので、このようなケースにいれて体重を測定しています。

撮影筆者 子猫
撮影筆者 子猫

↑この子は、比較的おとなしいので、1頭で計測

この子は、飼い猫なので、おとなしくしてくれるので、かごに入れて測定しています。

(体重2キロから5キロぐらいまでの動物 50グラム単位で計測できる体重計)

撮影筆者 チワワ
撮影筆者 チワワ

↑比較的おとなしい 

犬や猫の体重の軽い子は、50グラムも減るとたいへんなので、しっかり測定します。このチワワは、体重計に乗せたら、比較的じっとしてくれました。

撮影筆者の知人 猫
撮影筆者の知人 猫
撮影筆者の知人 猫
撮影筆者の知人 猫

↑おとなしくない子は、洗濯ネットに入れて計測

大人になっても、動物病院では逃げることを考えるケースは、このような洗濯ネットに入れて計測しています。

(体重5キロから100キロぐらいまで 500グラム単位で計測できる体重計)

(グレート・ピレニーズ)

撮影筆者 グレート・ピレニーズ
撮影筆者 グレート・ピレニーズ
撮影筆者 グレート・ピレニーズ
撮影筆者 グレート・ピレニーズ

この体重計は、診察台についています。診察台に動物を乗せると計測できるようになっています。

動物園編

(コアラ)

天王寺動物のYouTube から
天王寺動物のYouTube から

この子は、賢いコアラで、飼育員さんに「体重計に乗るように」といわれると乗ってじっとしていますね。

(レッサーパンダ)

撮影筆者の知人 レッサーパンダ
撮影筆者の知人 レッサーパンダ

(ラクダ)

撮影筆者の知人 ラクダ
撮影筆者の知人 ラクダ

床が体重計になっています。大型の動物だと、そこに、移動させるのが、たいへんです。小動物だと抱っこして体重計に置くことができますが、大型の動物は、自分で乗ってくれません。デリケートな動物は、体重計に乗るのをためらうことがあります。計測する前に、体重計に慣れさせて、体重計は怖くないことを教えて計測するのです。

動物の体重計測の難しさと意義

人は、比較的簡単に体重計ができます。でも、動物は、体重計になかなか乗らないし、じっとしてくれないので、簡単に体重計といってもいろいろと工夫をしています。上野動物園では、園内に体重計があり、そこに動物が乗れば、体重がわかるようになっています。

(サル)(ゾウ)

それを見た人たちは、サルやゾウの体重がわかって勉強になります。ゾウの体重計は、200キロにならないと動かないって興味深いですね。

上野動物園は、個別に体重測定をされています。

(パンダ)(スローロリス)

(ニシアフリカコガタワニ)

私たち獣医師や飼育係りは、いろいろ考えながら、動物の体重を測定しています。体重計の種類もいろいろとあり、1グラムから動くもの200キロから動くものまで、それぞれの動物に合わせたものを使っています。そして、彼らの健康管理をしているのです。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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