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多数の応募から「世界最悪の猫」の里親が決定 飼い主にとって最高のメリットとは?

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

「あなたはここにいる猫を、

健やかなるときも病めるときも、

富めるときも貧しいときも、

愛し、敬い、いつくしむことを誓いますか?」

猫を飼うとは、つまり、パートナーを迎え入れることではないでしょうか。

米ノースカロライナ州で「世界最悪の猫」と紹介されたメス猫の里親が決まりました。このことから、猫を飼うことについて読み解いてみましょう。

世界最悪の猫とは

米ノースカロライナ州の動物保護施設にいたメス猫で、里親募集のフェイスブック広告でユーモアたっぷりに、「世界最悪の猫」と宣伝されました。この子が嫌いなものは

「ピンク色、子猫(元気が良すぎて吐き気がする)、犬、子ども、ディクシー・チックス、ディズニー映画、クリスマス、それにハグ」

と発表。つまり、賑やかで元気すぎるものが嫌いなツンデレの猫だったようです。

世界最悪の猫
世界最悪の猫

CNNのTwitterより

里親になるときは、欠点を尋ねる

女子は、好きな人に気に入られようと、本当は料理が好きではないのに、彼氏に「料理は得意です」といいます。やがて結婚すると、毎日、笑顔で料理を作ることが当然になり、自分のいったことに後悔します。しかし「私、料理が苦手で」といって、美味しい料理を出すと彼には、とても喜んでもらえるでしょう。

猫を飼うことは、結婚生活にもよく似ていて、ずっと自分のいい面ばかり見せることは無理な話です。

一緒に生活することは、自分の欠点も嫌な面もさらけ出すことになるのです。猫の場合も例外ではありません。「性格がいい子です」といってもらってきたのに、ハグをした途端、 爪を出されて逃げられたら、飼い主は、不信感を抱くかもしれません。

このアメリカの「世界最悪の猫」は、ハグが嫌いと知っているから、飼い主としては撫でさせてくれただけで、絶大な喜びに変わるのでしょう。ですから、猫の里親になるときは、施設の人からその子の最悪のことを聞きましょう。

なぜ、最悪のことを聞くといいのか

いまの時代、猫を飼うことは、十年以上、苦楽を共にすることになります。長い場合は、二十年を超える子もいます。そういう長い寿命を持っている猫とやはり、一生涯共に暮らして欲しいのです。

文頭に書いたように、健やかなときも病めるときも、ずっと愛して、いつくしみ傍らにいてあげましょう。途中で放棄することのないように。飼う前に、このような嫌な面を知って、それを覚悟で一緒に暮らそうと思えないといけないと考えています。

具体的にどんなことを質問するか

実際、どのようなことを尋ねるといいのでしょうか。以下です。

・社交的か。

・食べ物の好み。

・ハグは好きか。

・他の猫と遊ぶか。

・人みしりをするか。

・子どもは好きか。

・男性は好きか。女性は好きか。

・抱っこは好きか。

・静かなところは好きか。

・猫は好きか。

・犬は好きか。

などです。一緒に住む前から、そのようなことを知っておいて、覚悟して生活を始めましょう。

FIV(ネコ免疫不全ウイルス) FeLV(猫白血病ウイルス)を持っているか

猫を飼うときに、FIV、FeLVを持っているかどうかを調べておきましょう。

これらの病気を持っていると、すぐに命に関わるということもない時代になりました。でもこれらのウイルスは、猫同士では感染するので、飼い方が変わってくるからです。そして、その子だけ一頭で飼っていても、FIVやFeLVを持っていると、免疫不全なので他の病気が治りにくいことなどがあるからです。

FIVの感染経路

・ケンカなどによる咬み傷からの体液の接触感染が考えられます。

・母子感染は、少ないといわれています。

FeLVの感染経路

・母猫が感染している場合は母胎や乳汁を介して感染します。

・FIVより感染力が強いです。

・感染猫と同じお皿を使ったり、毛づくろいをし合ったりする程度でも感染します。

・交配、喧嘩なども感染します。

FIV FeLVを持っている場合

・FIV FeLVを持っている子は、交配しないように、避妊・去勢手術をする。

・なるべく一頭飼いで。

・多頭飼いのところは、FIV FeLV持っている子は隔離する。

・FIV FeLVを持っている子の排泄物は速やかに処理する。

・FIV FeLVを持っている子の食器は、他の子とわけて、清潔に保つ。

まとめ

猫とひとつ屋根の下に住むことは、猫のツンデレのところ、病気をするところ、老いることを見せながら、生きていくことになるのです。人間も猫も同じで、時間を共に紡ぐことは、年齢を重ねて、歯が抜けて、フードをパラパラ落とすとか、上手く食べられない状況を見せることになります。老猫がトレイに行こうと思ったけれど、間に合わずトイレの前でウンチやオシッコを漏らしてしまうこともあるのです。飼う前に、その子の欠点を包み隠さず知ることで、生涯、その子を愛し通す覚悟ができるのではないでしょうか。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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