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「Skype帰省」する人が増加中!? ”ながらSkype”は、LINEより便利と評判。

五百田達成作家・心理カウンセラー
(写真:ロイター/アフロ)

家族会議にSkypeで参加

先日、海外に留学している友人が、日本で行われる親族会議にSkypeで参加したという話を聞きました。中華料理店の円卓に10名ほどの家族が居並ぶ中で、彼だけiPadで話に加わったその様子は、だいぶシュールなモノだったはずです。

このエピソードを聞いて、少し違和感をおぼえるのががSkypeというツール。なんでもかんでもLINEで済ましてしまう毎日において、もはやメールをしたり電話をしたりするシーンは圧倒的に減りました。そんな中「ああ、Skypeねえ。そういえば、そんなものあったなあ」「昔は、よくお世話になったなあ」と感じるのは人は、私以外にも多いのではないでしょうか?

ネット通話のはしり

インターネット環境があれば誰とでもと話せる、しかもビデオ画面を通じて、というのは登場当時、じつに画期的でした。私自身、仕事の打ち合わせをSkpeで行ったこともありますし、Skypeでキャリアカウンセリングを行っていた時期もあります。

それでも、一世を風靡したコミュニケーションツールが、いまでは廃れているという例は枚挙に暇がありません(公衆電話、FAX、ヤフーメッセンジャーなどなど)。ここ数年LINEの隆盛により、Skypeもまた、あまり聞かなくなった印象です。

どっこい生きてるSkype

そこで簡単に調べてみると、どうやらSkypeはまだまだ全然元気、のようなのです。

インターネット電話サービス「Skype」は、現在160ヶ国以上、3億人を超えるユーザーに使われています。現在はマイクロソフト傘下に入っていて、Skype for Businessという企業向けのサービスも展開中。

日本での月間アクティブユーザー数はおよそ900万人。メッセンジャーアプリとしては、高い水準をキープしています。また、日本における利用者層の約50%を20~30代が占め、うち55%はビジネスで利用しているという数字もあります。

グループビデオ通話が最大10人まで接続可能というのも、根強い人気を誇っている理由。海外ドラマでも、よくPCやスマホを通じてビデオ通話するシーンがありますが、あれもSkypeなのでしょうか。冒頭の例のように、日本以外の海外では、意外とまだまだSkype、というのが実態なのかもしれません。

だらだら通話に最適?

そんなSkypeを、いまでも普通に日常的に使っているという大学生(22歳・川崎市在住)の話を聞くことができました。

彼は、地元の仲間と普段から習慣的にSkypeを使っているとのこと。ですが集中してなにか会話をしたりするわけではありません。接続しっぱなしで、それぞれが適当に部屋の中で他のことをしたりします。もちろん気が向けば、オンラインゲームの協力プレイや、動画やページを共有してチャットしたりしますが、基本的には「ながらSkype」。というか、「Skypeしながら生活」のほうが正しいでしょうか。

ながらSkypeは適度に存在を感じられる

他にも名古屋と仙台で遠距離恋愛を育むカップルが、2人とも帰宅してすぐに、PCを起動してSkypeでビデオ通話を始めるという話も聞いたことがあります。

その後は別にずっと話しこむでもなく、それぞれ料理をしたり洗濯をしたりテレビを見たりと、ほぼほったらかしの状態。生活音も漏れてくるので、相手が何をしているかなども丸わかりです。そして、ふとした時に「ねえねえ」と呼びかけ、会話をする……。そんな使い方をしているのだとか。

こうした使い方はまるで、「家族と同じリビングにいるけれど、それぞれはスマホを見たり、テレビを見たり」という、いまや日本の多くの家庭で見られるのと同じようなイメージです。

リビングのような感覚

これらの事例から分かるのは、「通話をする」「チャットをする」「目的があってつながる」ではなく、「一緒にいる感覚」を共有することに重きを置いている、ということ。

何かの作業(たとえば会話)を積極的に一緒に行うのではなく、声を聞きながら、視界の端に相手を置きながら、それぞれが勝手に生活をすることで、より深いつながりを意識することができる。私たちはつながっているし、いざとなれば声を聞ける。それが「ながらSkype」の良さなのでしょう。

もちろん、FacebookやTwitter、LINEといったSNSも、「相手の存在(ログイン・コメント・既読)を確認しながら、ゆるく絡む」というコミュニケーションが可能です。ですが、Skypeはビデオ通話をしている分、もうすこし深くて濃い関係にならざるをえません。親密な相手と「リアルに存在を感じながら、ともに生活をする」のに適したツール、というわけです。その相手は、家族でも友人でも恋人でもかまいません。

セミリアルな人間関係

きちんと面と向かうべき家族・恋人がリアルな存在で、SNS上がバーチャルな空間だとしたら、ちょうどその間に位置する「セミリアル」な場が、「ながらSkype」の効用と言えるでしょうか。

この年末年始、忙しくて帰省することができない人や、めんどくさくて気まずい人、それでも、ちょっとだけでも実家の空気を感じたい(でも、あくまで少しでいい!)という人には、ぜひ新たな家族の形=「Skype帰省」をオススメしたいと思います!

(五百田 達成)

作家・心理カウンセラー

著書累計120万部:「超雑談力」「不機嫌な妻 無関心な夫」「察しない男 説明しない女」「不機嫌な長男・長女 無責任な末っ子たち」「話し方で損する人 得する人」など。角川書店、博報堂を経て独立。コミュニケーション×心理を出発点に、「男女のコミュニケーション」「生まれ順性格分析」「伝え方とSNS」「恋愛・結婚・ジェンダー」などをテーマに執筆。米国CCE,Inc.認定 GCDFキャリアカウンセラー。

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