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話題の「Tinder」、人気の秘訣は? ”スマホ越しなら大胆になれる人”が急増。

五百田達成作家・心理カウンセラー
Tinderのロゴ

Tinderを知ってますか?

Tinderというアプリが、日本で秘かに流行り始めています。

これはアメリカで生まれ、2、3年前から海外を中心に大流行している、“ソフト”で”怪しくない”マッチングアプリ。ポイントは、スマートフォンなどの情報端末の位置情報(GPS)を利用し、現在地の近くにいる他のユーザーとのマッチングをはかってくれる点にあります。

使い方としては、画面に表示される他人の顔写真と簡単なプロフィールだけを見て、「アリ」か「ナシ」かを、さっさっとチェックし、めでたく互いに「アリ」になればチャットが出来るようになる、という簡単さ。また海外セレブやスポーツ選手がTinderのユーザーであることを公言したことなどから人気に火が付き、現在では世界に3000万人を超えるユーザーがいると言われています。

日本でも、海外の流行への情報感度の高い人や、旅行好きの人、また、帰国子女の学生などを中心に徐々にユーザー数を増やしています。実際、私の周りでも「Tinderで知り合った人と、今度会おうという話になってる」「この、純粋に顔だけで人を選ぶ感覚が、気分いいんですよ」などという声をチラホラと聞くようになってきました。

去る11月には、Tinderを運営するMatch Group(マッチグループ)が、アメリカ・ナスダックに上場。ビジネス面でも注目されています。

Facebook連携だから怪しくない?

本来の目的は、通りすがりの人に軽い気持ちで挨拶するような感覚で会話を楽しめるようにする、というもの。近くにいる、ちょっと気になる容姿の人や、共通の趣味を持つ人とのマッチを求めて気軽に利用されています。

となるともちろん、いわゆる「出会い系」の側面も指摘されるわけですが、ユーザーのアカウントが実在のFacebookアカウントに連携しているため、さくらや業者などの悪質なアカウントが少なく、ユーザーには比較的安心感のあるサービスとして受け止められているようです。

語学の勉強や旅行ガイドにも

さらには知人の中には、「語学学習」の目的で使っているという人もいます。

Tinderはもともと海外で流行っていたアプリであるため日本でサービスを使おうとすると、日本に旅行中の外国人ユーザーが多数表示されるのだとか。

そのため彼らとチャットを開始すれば、自然と英語でのやり取りを行うこととなるため、語学学習者にとっては無料の英会話学校へと早変わりするのです。

また、逆に自分が海外に旅行した際にTinderを起動すれば、現地のユーザーと知り合うことができて、彼らとのチャットを通してローカルで人気な料理店や名所をガイドしてもらえます。

このように、異国のユーザー間での交流が生まれやすく、思わぬ活用法が注目されるようになったことも最近日本で流行の兆しを見せている一因です。

「世界はスマホの中にある」

これから日本でもユーザーが増えていくと予想されるTinderですが、SNS時代の日本において、とくに若い世代の間では、見知らぬ人と知り合いたいという欲求が高まっているように感じます。

「イマドキの若者は、誰もがスマートフォンの向こう側にいる友人達にのみ夢中で、周囲の人間関係、現実社会への興味が薄れている」といった批判をよく目にしますが、裏を返せば、まさにその「スマホの中」への関心は強まるいっぽう。

TwitterやFacebookなどのリツイート、シェア機能によって、昔では知り得なかったような人の存在を知り、交流ができるようになれば、そこへの欲求が高まるのは自然な流れです。

”スマホ越し”なら出てくる勇気

「もっと身の回りの人を大事にしよう」「普段会う人のことをきちんと見よう」と上の世代から言われても、興味と関心はスマホの中にしかないのだからしかたがない。逆に「スマホ越し」であれば、いくらでも饒舌に、社交的になれるし、勇気だって出る。だからTinderにも抵抗がない、外国人とも話せる、というのが実感なのではないでしょうか?

ふと、カフェに入った時に隣に座った異性に思いを巡らし、この人はどんな人なのだろう、と考えた時、「ああ、この人Tinderやってないかな」なんて考えてみたり。もちろん、面と向かっては話しかけられないけれど、「スマホ越し」ならなんとかなるかも……。

スマホ弁慶=スマホ越しなら何でもできる世代

あるいは、監視の目のように張り巡らされたSNSでつながっているリアル人間関係に疲れ、日常の悩みやくだらない話を思う存分ぶつけあえるような相手が欲しい、なんていう思いが芽生えたり。誰か適度に怪しくない、適度につながってない、人いないかな。リアル友達には言えないことも、「スマホ越し」なら言える気がする……。

まさに内弁慶ならぬ「スマホ弁慶」ともいうべき人々が増えているのです。

「顔だけで人を選ぶ」という背徳的な喜びも

「スマホ越し世代」のニーズにぴったり合った基本設計、つまり、「位置情報」「近くにいる」というリアルさ(責任・手応え)と、「スマホの先の人」「イヤならログアウトすればいい」というバーチャル(気楽・あいまい)の絶妙なバランス。

そこへ、「顔だけで人を選ぶ」という背徳的な喜びが、調味料として振りかけられる……。

このレシピこそが、単なる出会い系アプリとはひと味違うTinderの特徴であり、これだけ流行している理由。今後の動きから目が離せません。

(五百田 達成)

作家・心理カウンセラー

著書累計120万部:「超雑談力」「不機嫌な妻 無関心な夫」「察しない男 説明しない女」「不機嫌な長男・長女 無責任な末っ子たち」「話し方で損する人 得する人」など。角川書店、博報堂を経て独立。コミュニケーション×心理を出発点に、「男女のコミュニケーション」「生まれ順性格分析」「伝え方とSNS」「恋愛・結婚・ジェンダー」などをテーマに執筆。米国CCE,Inc.認定 GCDFキャリアカウンセラー。

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