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いま一番盛り上がっているSNS、「ミクチャ(Mixchannel)」は、何がすごいのか?

五百田達成作家・心理カウンセラー
Mixchannelのロゴ

女子中高生の間で爆発的に流行

いま、女子中高生の間で爆発的に流行っている動画共有アプリ・Mixchannel。「ミクチャ」の愛称で知られるこのアプリでは、ユーザーが編集・投稿したショートムービーに対して「like(いいね!)」や「コメント」を出来るSNS的な機能が特徴です。

中には沢山のファンがつく有名ユーザーが出現し、一大コミュニティが形成。2013年12月にリリースされてからのダウンロード総数は300万以上、動画の月間再生回数は5億回超(2015年3月時点)。ユーザーの8割が女性で、年代も9割近くを10代が占めており、日本全国の女子中高生達がくまなく利用しているので、業界からも注目を集めています。

セレブカップルも出現

この夏休み期間中には、日清食品がMixchannelとコラボ。カップヌードルが登場する動画の投稿を募るキャンペーンを実施しました。いっぽう、Mixchannelにおける著名人カップル「れんみさ」は人気歌手のミュージックビデオに出演するなど、ミクチャ出身のスターも出現していて、メディアとしての勢いはとどまるところを知りません。

キス動画をはじめとする恋愛コンテンツが最大のウリ

Mixchannelの各動画は、いくつかのカテゴリに分かれていて、面白動画やアテレコ動画など様々なコンテンツ群が存在しますが、中でも一際注目を集めているのが「LOVE」カテゴリです。

ここでは多くの中高生がパートナーとのラブラブな日常や「キス動画」をBGM付きで投稿し、沢山のファンを集めています。特に美男美女の“有名カップル”の動画には数千、数万の「like(いいね!)」が付き、前述の「れんみさ」もこのカテゴリが生んだスターカップル。

「別れました動画」も人気

良識あるオトナであれば、「おいおい、そんなことして、別れてしまったらどうするんだ!」と突っ込みたくなるところですが、驚くなかれ「LOVE」カテゴリには、別れてしまったカップルの思い出を編集した「別れました動画」も多数投稿されていていて、それらに対しても「感動しました!」「別れても仲が良さそうで素敵です!」といったコメントが並んでいます。オトナの心配は取り越し苦労に過ぎないということでしょうか。

20代前半ですら絶句する見せつけぶり

Mixchannelについて20代前半の学生たちにヒアリングしてみると、少ししか世代が違わないにも関わらず「最近の女子高生は何を考えているんだ…」、「彼(彼女)とのラブラブな姿を人前でさらすなんてありえない…」、「そもそも恋愛は秘めるのがいいのに…」といった声が多く聞かれました。中には、驚きで言葉を失う男子も(笑)。

「やれやれ、最近の若者文化はここまで来たか…」などとまとめてしまうのは簡単ですが、果たして本当に今の10代だけが異常で特殊なのでしょうか? こうした恋愛見せびらかし文化は突然変異のように誕生したものなのでしょうか?

「キスプリ」を覚えてますか?

キス動画といえば思い出されるのが「キスプリ」。

90年代後半から一世を風靡したプリクラは、放課後の女子中高生文化の代名詞として多くの若者達に利用されました。カップルでキスをしながらプリクラを撮る「キスプリ」はごく普通のこと。「キスプリ」を撮った・見たことがある20代、30代も少なくないでしょう。今でも、売れっ子アイドルの過去の「キスプリ」が流出しては週刊誌を賑わしています。

こうした「キスプリ」は、人目にさらされる携帯電話の裏に平然と貼られたり、「mixi」や「前略プロフィール」などにアップロードされていたものです。また、プリクラ機の種類によっては他人の取ったプリクラに人気投票を出来る機能があったわけで、これなどはMixchannelと同様のサービスと言えるでしょう。

意外とベタで王道なトレンド

こう考えると、中高生の「目立ちたい」「人気者になりたい」→「手っ取り早いのは彼氏・彼女とのラブラブぶりアピール」という発想は、なにも今に始まったことではないことに思い至ります。

つまり、今も昔も、若い世代は恋愛コンテンツを作っては拡散するのです。

それがたまたま、動画の撮影編集が簡単になり、SNSでの拡散が容易になった現代において、Mixchannelが火をつけてお膳立てをしてあげたに過ぎないというわけです。「恋愛」×「動画」×「口コミ」と考えていくと特段変わったニュースではなく、むしろドラマ「テラスハウス」のヒットなどを思わせる、シンプルで王道なトレンドとも言えます。

恋愛の醍醐味は「共有」にあり?

若い世代に限らず恋愛の醍醐味のひとつに、公然とカップルとして振る舞い、周りから羨ましがられることがあるでしょう。彼氏ができたら見せびらかしたいし、結婚したら祝福されたいし、別れたら慰められたい。「恋愛を周囲と共有することで承認欲求を満たしたい」というのは普遍の価値観。それがSNS時代にばっちりはまったのが、Mixchannnelなのだとも言えます。

最低限の注意が欠かせない

もちろん現代はそのあまりの容易さから、「リベンジポルノ」や「バカッター」のような事態を引き起こしかねないので最低限の注意が必要。

大好きな人と恋愛をして、キスをして、それを自慢して、みんなから称賛されたら、それはもう、麻薬中毒的に楽しくなってしまうのは当たり前。誰もが発信者になれる夢のような時代だからこそ、安全面には十分気を付けたいものです。

作家・心理カウンセラー

著書累計120万部:「超雑談力」「不機嫌な妻 無関心な夫」「察しない男 説明しない女」「不機嫌な長男・長女 無責任な末っ子たち」「話し方で損する人 得する人」など。角川書店、博報堂を経て独立。コミュニケーション×心理を出発点に、「男女のコミュニケーション」「生まれ順性格分析」「伝え方とSNS」「恋愛・結婚・ジェンダー」などをテーマに執筆。米国CCE,Inc.認定 GCDFキャリアカウンセラー。

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