「ラブライブ!」の人気を支える「ファッションオタク」。

大学生の日常に「ラブライブ!」

最近、大学生と話したり、彼らのツイッターを見たりしていると、「ラブライバー」「スクフェス」「にこにー」といった言葉に触れる機会があります。

たとえば

「試験勉強しなくちゃいけないのに、スクフェスばっかりやってしまってつらい」

「あ、ちょうどいま、ライブが一曲終わったところなんで大丈夫ですよ」

といった具合です。

これらはすべて、大ヒット中のコンテンツ「ラブライブ!」に関する言葉。その大ヒットぶりはつい先日、Yahoo!ニュースにも登場したほどです。

芸能界にファン多数、“聖地”神田明神は初詣客殺到 今さら聞けない「ラブライブ!」入門

「ラブライブ!」はアニメ?ゲーム?

「ラブライブ!」はアニメ? ゲーム? なんだかよく分からない! と思っている方が多いでしょう。実はこの作品、もともとはある雑誌の企画で始まったもの。

2010年「電撃G’s magazine」という雑誌において、「スクールアイドルプロジェクト」として始まりました。潰れかけの女子校に通う生徒たちが、アイドル活動で学校を活性化し廃校の危機から救う、というストーリーがベース。

ときにメンバーの人気投票を行い、上位のキャラクターは実際に発売されるシングルCDのセンターになるなど、読者参加型のコンテンツとして成長。さらにはアニメ化をきっかけにファンが急増。

こうした雑誌企画やアニメ、音楽などすべてのメディアミックスを含めたコンテンツ群を「ラブライブ!」といい、そのファンのことを「ラブライバー」と総称するのだそうです。

「ラブライブ!」から派生した「スクフェス」

いっぽうで、「スクフェス」なら知っている、という人もいるかもしれません。

「スクフェス」は国内ダウンロード700万人を突破したことがニュースになった大人気・スマホ音ゲー。念のために解説すると音ゲーとは、曲に合わせて落ちてくるボールやバーをリズムよくはじき返す「音楽を使ったゲーム」一般のこと。

「スクフェス」の正式名称は「ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル」。つまりこれも、「ラブライブ!」のメディアミックスの一つというわけ。プレイヤーは、ライブに臨むキャラクターたちを手伝うという設定でゲームが展開されます。

「スクフェス」には「ラブライブ!」のキャラクターがそのまま登場するため、「スクフェス」を遊ぶことで特定のキャラクターのファンになり、そこからアニメに先祖返り(?)して、「ラブライバー」になる人も少なくないのです。

神田明神を詣でるファンたち

その人気はしばしば、メディアの枠を飛び出ます。

ストーリーが神田、秋葉原、神保町周辺の地域を中心として展開されるため、この近辺には「ラブライブ!」ゆかりの地がとても多いのだとか。

例えば、老舗の甘味処「竹むら」。もともとはあんみつが人気の店でしたが、現在は「ラブライブ!」の聖地として有名に。ストーリー中で、あるキャラクターの実家のモデルとなっていることが理由です。

また、秋葉原界隈の氏神としてよく知られる「神田明神」。こちらも作品内に頻繁に登場するということで、今年の正月は「ラブライバー」たちがこぞって参拝し大混雑したことで話題になりました。

このように「ラブライブ!」は、知らないではすまされない、社会現象と化しているのです。

ヒットの要因は?

ではなぜ、「ラブライブ!」がここまで爆発的な人気を獲得したのでしょうか。要因は一つではありません。

巧妙で緻密なメディアミックス、9人のキャラクターどれかには感情移入できる仕組み、AKB48人気とも相通じる読者参加企画、スマホ音ゲーのヒットに合わせた「スクフェス」の展開などなど、マーケティング的な勝因はいくつも挙げることができます。

それでもそれでも。

どうしても、疑問が残ります。正直、似たような背景・意図で企画されたコンテンツは、これまでにもあったはず。その多くは、それほど知られることなく消えていったことでしょう。

なのになぜ、一部のファンのみならず、多くの人を巻き込んだブームになったのでしょうか? ある大学生女子にヒアリングしたところ、興味深いことが見えてきました。

ヒットを支える「ファッションオタク」

いま、大学生の間では「ファッションオタク」という言葉が一般的に使われています。これは「ファッションや洋服、メイクなどのジャンルに精通したオタク」ということではありません。

「表面的にオタクを装っている人」「キャラとしてオタクを演じている人」という、多少の揶揄・自虐を込めた呼称です。「キャラとしてのオタク」「にわかオタク」と言いかえてもいいかもしれません。

「オタク」という言葉、本来は、相手をけなす意味で生まれました。ところが、ここ20年ほどで「オタク」は、世界に誇る文化に成長しました。並行して、何か一つのジャンルに入れ込んで語れる「オタク」は一種の憧れの対象に。

確かに一昔前に比べて、「僕、オタクなんで」と胸を張ったり、むしろ逆に「いやいや、それほどでも。私なんてオタクのうちに入らないですよ」と謙遜したりする若者を見る機会が増えました。

自分にはそれほど語れるものがない。他の人がみんなでアニメの話をしていると羨ましいし、疎外感も感じる。かといって、それほどディープな世界には首を突っ込めない。なにか適度にオタクっぽくなれるものはないだろうか……。

「ラブライブ!」はオタク初心者にぴったり

そんなニーズにぴったりとはまったのが「ラブライブ!」であり「スクフェス」でした。

「ラブライブ!」はとても分かりやすい設定で、キャラに嫌味もなく、女子たちにとっても「好き」と言っていて不自然でない。しかもまわりにはすでに愛好家が多い。そのため「私もいまはまってる」と「ラブライバー」を名乗ることで、ファッションオタクを演じやすくなったというわけです。

オタクになりたい若者たち

実際、彼女の周りで、「ラブライバー」を自称している人の中には、女性でも男性でも、今まであまりオタク的な一面を見せてこなかった(というより持っていなかった)人々が多いと言います。

つまり「ファッションオタク」のニーズにばっちりこたえることで、「ラブライブ!」はここまでヒットを記録することができたのでしょう。

ディープなオタクにはかえって不評?

実際、ベタでストレートな「萌えキャラ」&「青春ストーリー」に、ディープなアニメファンからは「ベタすぎる」「あんなのは素人が見るドラマだ」などと不評もあるのだとか。

それでいて、メディアミックス作品それぞれでファンを確かに獲得。アイドルオタク、アニソンオタク、音ゲーマーなどそれぞれの世界で完全に「舌が肥えている」人々にとっても、納得のいくクオリティを提供。こうしてオタクが楽しめるだけでなく、普通の人が「ファッションオタク」になりやすい作品が完成したというわけです。

芸能人にファンが多いのも、この敷居の低さがポイントでしょう。

憧れの社交ツール

人づきあいにおいて、「共感」と「話題の共有」は欠かせません。

サラリーマンになれば、やりたくなくてもゴルフを始める。流行りのドラマをおさえておかないと、会話についていけない。ジャンプやマガジンを読んでないと、学校の休み時間が楽しくない……。

以前、「AKB48から篠田麻里子が脱退したら大人たちは話を合わせるのに困る」という記事を書きましたが、それと似たような現象が「ラブライブ!」「スクフェス」を巡って起きているのかもしれません。

アニメ作品の枠を超えて、大事な社交ツールにして、「ファッションオタク」の印籠となった「ラブライブ!」。2015年は企画始動から5周年の節目の年ですが、その勢いは衰える気配がありません。

■参考記事

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初対面の「気まずいタイム」→「見たことそのまま」が効果的。

「あの件ですが、よろしくお願いします」→どこが間違っている?