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W杯サッカー、応援のテンションにも男女差 〜選手に自分を重ねる男、純粋にイベントとして楽しむ女〜

五百田達成作家・心理カウンセラー

選手に自分を重ねる男たち

いよいよワールドカップ・サッカーが開幕。日曜のコートジボワール戦は、日本にとって残念な結果に終わり、多くの人が憂鬱な週明けを過ごしています(瞬間最高視聴率は実に50.8%)。ですがその落胆ぶりにも、男女では少し温度差があるようです。

そもそも男は、スポーツと仕事とを近しいものとしてとらえます。いぶし銀のプレイヤーのことを「仕事人」といい、仕事への意気込みを「全力投球」などと語るのは、男だけです。

小さい頃から野球やサッカーなどのチームスポーツをする機会が多い男たちは、そこでみっちりと「チームプレイ」「全体意識」をたたき込まれます。

高校野球などはまさに象徴的。監督がバントしろと言ったら、文句を言わずにバントをする。「バントなんてつまらないから、打ちたいです」などとは当然言わない。その結果、チームが勝ったらわがことのように大喜びする(というか、できる)。

多かれ少なかれ、そういう「スポーツOS」をインストールされている彼らは、大人になってから始める仕事にも、同じノリで取り組むことになります。「犠牲」と「勝利」を重んじ「信頼できる指揮官の下、チーム一丸となって勝ちに行く」のが、男の大好きなモチベーションです。

そんな彼らですから、ワールドカップの試合を見ていても冷静ではいられません。フィールドを必死に駆け回る選手を、自分とついつい重ねてしまうのです。疑問の残る監督の采配には本気で腹を立て、体を張って愚直にディフェンスする選手には過剰なまでのシンパシーを抱く。無残な負け方をしようものなら心から落胆し、涙を流すことも珍しくありません。

イベントとして楽しむ女たち

いっぽうで女たちは、仕事にしてもサッカーにしても、そんな風にとらえることはありません。男に比べるとスポーツOSではないので、上司から「わがままを抑えて、チームプレイに徹しろ」と言われてもピンときません。

男たちのチームプレイが「それぞれの役割をまっとうし、チームを勝利に導く」ことだとすれば、女たちのチームプレイは「みんなで仲良く、円滑に仕事を進める」こと。「やりがい」と「過程」を重視し「雰囲気のいい職場で楽しく働く」のが、女のモチベーションです。

ですから当然、ワールドカップを見るときに選手と自分を重ねたりはしません。サッカーはサッカー。感動を与えてくれるエンタメに過ぎず、4年に一度のお祭りなので応援はしますし、勝ったら勝ったでうれしいですが、負けたとき、男たちみたいに「わがことのように」悔しがる習慣はないのです。

スポーツの関心のない女性はどうすべきか?

「夜帰って来た夫と会話しようと思っても、ダラダラとスポーツニュースで野球の結果を見ていて会話もできない」「せっかくの日曜日なのに、夫がソファに寝そべってゴルフの試合を延々見ている」……こう嘆く女性は少なくありません。

男性の多くは、勝負ごとが好きでスポーツ観戦が大好き。そもそもヒマさえあれば争っていたい男たちは、まるで戦争の代償行為のようにスポーツののめり込みます。

一方、女性は男性ほどスポーツに興味がない。野球であれば、優勝決定戦なら見ようと思っても、日々のペナントレースまでは……という人が多いでしょう。男たちは、何をそんなに一喜一憂しているのか、と。

それでも、女性がスポーツ好きになることは無理でも、「スポーツ好きっぽく振る舞う」ことで、男性とうまくやっていく方法はあります。

男は質問されるだけで大満足

興味もないのに一生懸命、野球やゴルフのルールを勉強したり、意見を言ったりする必要はありません。生半可な知識は逆効果に。単に、一言質問してあげればいいのです。

例えば、ゴルフの好きな男性に対しては「最近、松山英樹が優勝したらしいね! それってどのくらい大きい大会なの?」「今日のスコアはいくつだったの? へー、このあいだより2打少ないね!」などなど。質問の内容は、ほんとうにささいなことでかまいません。大好きなゴルフについて質問された相手は、きっと嬉々として語ってくれるでしょう。

ランニングが趣味の男性には「シューズはやっぱりアシックスがいいの?」などと聞いてみるのがいいでしょう。相手は自分のシューズのブランドやら、最近欲しいランニンググッズについて勢いよく喋り始めるかもしれません。

男が喜ぶサッカー質問、怒るサッカー質問

折しも世の中はサッカー一色。これからひと月の間、多くの職場で、にわかサッカーファンによる「プロジェクトも終盤だけど、最後まで足を止めないでみんなでボールを追おうぜ」だの「このチームに本田は何人も要らないんだよ!」だの、サッカーになぞらえた比喩が多く聞かれることでしょう。

しまいには「俺たちも世界に誇れる仕事をしよう!」などと怪気炎を上げる男たちに対して、内心首をかしげながらも、「そうだよね〜!」と笑顔で合わせる女たち……。これなどもまた極めて日本らしいチームプレイです。

さらに、とことん興味のない女性は、職場で「ワールドカップ、見てる?」「サッカー、興味あるの?」と聞かれても、「えーっと、やっぱり内田とかかっこいいですよね」と無理にコメントするのは避けましょう。「結局、メンクイか!?」「そういう目で見るなよ!」と叱られるぐらいなら、自分の意見は完全に放棄するのが吉。

「選手交代って、どうするのがセオリーなんですか?」「ドログバって、そんなにすごいの?」「今回、優勝候補ってどこって言われてるの?」などと、即座に質問返し。話したくてたまらない相手にどんどんサッカーを語らせるというのが、基本的な身の処し方となります。

関心ある人もない人も、話したい人もそうでない人も、みんなが楽しく過ごせるひと月になって欲しいものです。

作家・心理カウンセラー

著書累計120万部:「超雑談力」「不機嫌な妻 無関心な夫」「察しない男 説明しない女」「不機嫌な長男・長女 無責任な末っ子たち」「話し方で損する人 得する人」など。角川書店、博報堂を経て独立。コミュニケーション×心理を出発点に、「男女のコミュニケーション」「生まれ順性格分析」「伝え方とSNS」「恋愛・結婚・ジェンダー」などをテーマに執筆。米国CCE,Inc.認定 GCDFキャリアカウンセラー。

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