「危機感なき」日産・ルノー・三菱の3社連合の行方

経営危機が目前に迫る中でその手腕が問われる日産自動車の内田誠社長(写真:アフロ)

 仏ルノーのジャン・ドミニク・スナール会長、日産自動車の内田誠社長、三菱自動車の益子修会長ら「3社連合」のトップが27日、パリ、横浜、東京をつないでのオンラインで記者会見し、開発、生産などの面でリソースを共有し合うことに主眼を置く「新たなアライアンスの取り組み」を発表した。

 

「ゴーン戦略」からの脱却

 2017年9月、カルロス・ゴーン氏が記者会見して「アライアンス2022」と呼ばれる3社連合の中期経営計画として、2022年までに3社で計1400万台の世界販売を達成させて「世界一の自動車連合を目指す」計画を発表していた。しかし、今回の発表でゴーン氏が策定した「アライアンス2022」が正式に消滅する。

 会見の冒頭でスナール氏は「これまでは台数中心の成長を目指してきたが、これからはビジネスモデルを変化させ、効率性と競争力の向上を目指す」と語り、ゴーン戦略からの脱却を目指す考えを強調した。

 ルノーは2019年12月期決算で、日産と三菱も20年3月期決算でそれぞれ最終赤字に転落。株式の配当についてルノーは大減配、日産は期末無配になった。その要因は大きく4つある。新興国を中心とする拡大戦略による固定費の増大、新車開発費抑制による商品力の劣化、収益性が高かった北米地域で日産が台数を伸ばすために安売りをしたこと、新型コロナウイルス禍による販売減とサプライチェーンの混乱だ。前者3つはカルロス・ゴーン氏が推し進めた無謀な拡大戦略が大きく影響している。

このままでは「財務危機」と社内の声

 トヨタやスズキなど自動車各社は、新型コロナウイルス禍による世界的な販売減は、08年のリーマンショック時よりも大きいと見積もっており、3社連合の置かれた状況も同じだ。特に3社連合の中核である日産の経営状況が最も厳しく、このままでは手持ち資金の枯渇など「財務危機」になると指摘する声も日産社内からは出ている。

 こうした中で、3社が協力し合うことで競争力を高め、危機を乗り越えるための「新たな取り組み」ではあるが、車種開発の効率化の達成目標は2025年と5年先に置かれており、日産系の部品メーカーの幹部は「効果が出るまでに日産や我々の経営自体が持つのか不安だ。この計画から危機感が感じられない」と指摘する。

 

投資額40%削減

 さらに言えば、「コロナ危機」が顕在化する以前から、日産の経営は傾き始めていたが、内田社長以下、現経営陣が反転攻勢策を練り上げるのが遅かったと、筆者も感じる。

「新たな取り組み」の主な内容を見ていくと、まずは3社の車の共通化についての考え方が掲げられている。これまでプラットフォーム(アンダーボディ)を対象としてきたものを、アッパーボディにまで拡大させるという。プラットフォーム数も減らし、たとえば南米では3社連合で4つあるのを1つにする。こうした取り組みにより車種数を3社で計20%減らす計画だ。

 さらには、商品ごとに分けて、たとえば次世代EVは日産がリーダーとなり、マザービークル(タネ車)を開発し、残り2社がフォロワーとなってタネ車をベースに兄弟車を造っていくことにより、3社連合内での分散投資を避け、投資額を40%削減させるという。

1999年当時より「酷い状況」

 地域対応については、日産が日本、中国、北米で、三菱が東南アジア、オセアニアで、ルノーが欧州、ロシア、南米、北アフリカで、それぞれリーダーを務める。各地域において生産拠点や販売網なども相互に有効利用していく。

 この「新たな取り組み」をベースに、各社は中期経営計画の策定を進めており、日産は28日夕方、20年3月期決算の確定値と新たな中期経営計画を発表する。その新中期経営計画で注目される点が、工場閉鎖を伴う過剰な設備・人員の削減についてだ。すでに昨年7月には1万2500人の人員削減計画を発表している。

 ある日産幹部は「新車開発が遅れ始め、世間で見られている以上に日産の経営の内実は日に日に悪化している。人材不足という点ではルノーからの資本受け入れで救われた1999年当時よりも酷い状況にある。21年3月期は稼働率が50%近くまで落ちる可能性があり、設備と人員を大幅に削減しなければ、早期の回復は見込めないが、内田誠社長がどこまで踏み込んだ計画を打ち出せるかがカギ」と言う。