日産と東電が仮想発電所 EVシフトが日本の電力を変える

仮想発電所の実証試験で使われる日産の「eーNV200」(ニュースリリースから)

 日産自動車と東京電力ホールディングスが12月13日から、バーチャルパワープラント(VPP)の実証実験を始めた。バーチャルパワープラントとは、仮想発電所のこと。たとえば、点在する小規模な発電所と電力の需要をマッチさせたり、余っている電力を効率的に利用してもらったりすることで、あたかも一つの大きな発電所を稼働させるような仕組みのことだ。発電所を新たに建設せずに、増える電力需要に対応する狙いがある。

 

EVも発電所の位置づけ

 日産と東電が組む最大の目的は、電力が余っている時間帯に効率的に電気自動車(EV)に充電してもらい、逆に電力が足りない場合には稼働していないEVのバッテリーから供給する仕組みを構築するためだ。後者のケースは、稼働していないEVを小さな発電所として位置づけている。

 東電では、年末年始や深夜など会社が動いていない時間帯などは電力が余る傾向にある。この電力をEVの充電に使い、電力が足りない時間帯にEVが充電するケースを減らすことができる。将来、EVが大量普及して電力が不足する可能性が生じても、こうした仕組みを構築していれば対応できる。

夜間に充電してアマゾン商品券

 今回の実証実験では、日産の商用車EV「e―NV200」と「リーフ」を使い、モニター45人が参加する。スマートフォンのアプリを使って東電側が余っている時間帯をモニターに通知し、モニターの充電電力量に応じてインセンティブを支払う。今回のインセンティブはアマゾンの商品券となる。将来的にVPPが正式に実施されるようになると、電力が余った時間帯に充電した電力料金は安くすることも検討されている。今回の実証実験では、どの程度のインセンティブを出せば充電してもらえるかを見ていく。

 東電の管轄域内では企業が長期の休日に入っている場合などに電力が余っているという。しかし実は電力がいつ余っているかは、地域によって違う。たとえば、電力は真夏の暑い日中に需要のピークを迎えるとよく言われが、最近はその構造が変化している地域もあるそうだ。

たとえば、太陽光発電の普及によって昼間に発電した電力を多く購入している地域では真夏の昼間に電力が余り始めているという。また、家庭のオール電化によって家事で電力を使うため、夕方にピークを迎えるケースもあるという。

EVが誘発するイノベーション

 関西電力と住友電気工業もVPPの構築を研究しており、そこにも日産は協力している。トヨタ自動車も今年6月、デンソーや豊田市などと協力して、VPPの仕組みを構築すると発表した。トヨタのケースは、プラグインハイブリッド車(PHV)の充放電を制御することなどによって、再生エネルギーの効率的な需給体制の構築を目論んでいる。

 トヨタは2030年までに世界販売に占めるPHVやEVなどの電動車の割合を50%にする計画。ホンダも同様に65%にする。

こうしたプロジェクトから見えてくることは、将来的にEVやPHVが大量に普及すれば、日本の電力の供給システムを変えていく可能性も秘めているということだ。しかし、VPPについて日本は欧米に比べて取り組みが遅れているという。EVシフトを絶賛するつもりはないが、それが社会にイノベーションを生み出すという視点が日本社会にもっとあってもいいのではないだろうか。