マツダCX-8 いまディーゼル車を出す意義とは

新型SUVのCX-8をお披露目するマツダの小飼雅道社長(撮影:筆者)

 マツダは14日、SUVの新型車「CX-8」を発表した。国内市場向けモデルと位置付け、12月14日から発売する。価格は319万6800円~419万400円。「CX-3」や「CX-5」などを製品ラインナップにもつ同社のSUVの中では最上級モデルで、3列シートにしたことでSUVとミニバンを合体させたようなイメージのクルマになった。中高年になってもかっこいいSUVに乗りたいと考えるユーザーはいる。一方で家族を乗せるにはミニバンが欠かせない状況がある。こうしたユーザーを取り込む狙いもある。

 筆者が注目するのは、CX-8は今のところディーゼル車しかないという点だ。環境規制が強まって欧米や中国ではEVシフトの動きが強まる中で、敢えてディーゼル車にこだわるのはなぜか。そこからはマツダの企業理念やそれを実行する高い技術力がうかがえる。

油田からタイヤまで

 マツダは環境問題に取り組むうえで「Well to Wheel」という概念を重視する。これは直訳すれば、「油田からタイヤまで」。油田から原油を採掘、それが精製されて軽油やガソリンになって燃料としてクルマに使われる全プロセスで二酸化炭素を削減するためには何が有効かといった考え方のことだ。この考え方の下では、ディーゼル車は環境問題解決に貢献できる力をもつ。たとえばディーゼル車の燃料である軽油の体積エネルギー密度は、EVの動力源であるリチウムイオン電池の約40倍あると言われ、エネルギー効率は高い。

 こう考えても分かりやすい。火力発電所で発電したエネルギーをEVに充電して使うと、EV自体は二酸化炭素を出さないが、発電プロセスで二酸化炭素が出る。ディーゼル車はガソリン車に比べても二酸化炭素の排出量が少ない。また、燃料電池車に使う水素は精製の過程でエネルギーが必要だ。マツダはこの「Well to Wheel」で二酸化炭素の削減量を2030年に10年比で半減させていく環境戦略も公表している。

 それとディーゼル車は今のところEVや燃料電池車よりもコストを安くして造ることができる。消費者目線に立てば価格は重要ファクターだ。二酸化炭素排出抑制に協力したいが、高いクルマを買う余裕がない顧客へのソリューションがディーゼル車なのだ。

ディーゼルは本当に「悪者」なのか?

 しかし、ディーゼル車は今や世界では「悪者」扱い。冷静な議論がないまま「悪者」にされている面も否定できない。その主な要因は、ドイツのフォルクスワーゲン(VW)が不正ソフトウエアを使ってディーゼルエンジンの試験をごまかしていたからだ。ディーゼル王国の「盟主」が不正をしていたわけだから、消費者が「ディーゼルは全部不正」といったイメージを持つのももっともだ。

 CX-8は燃料タンクを満タンにすれば、実燃費に近い「WLTCモード」で1137キロ走行できる。あくまでも試験上の値だが、これは都内から博多くらいまで一回も燃料を補給せずに走れることを意味する。電池切れを心配せずに長い航続距離を確保できる。

 ディーゼル車のメリットをこう説明すると、窒素酸化物などの有害物質を出しているではないか、といった指摘が必ず出る。有害物質が出ることは間違いない。多くのメーカーが有害物質の対策のため、「後処理工程」と呼んでマフラーなどに新たなデバイスを付けて排ガスを浄化する。ここでコストが上昇し、価格面でのディーゼルでの優位性がゆらぐ。

 

「正直者」が評価されるディーゼルを!

 マツダの場合は、コンピューター制御技術を駆使して噴射のメカニズムを徹底改良、改良というよりも今までにない概念の燃焼パターンを考え出して、「後処理工程」なしにディーゼルエンジンの排ガスを浄化できる技術を確立させた。愚直に技術開発に挑み、それを達成させた。だからマツダは、一部のメーカーの不正によってディーゼルが「悪者」扱いされていることに強い憤りを感じており、「正直者が評価されるディーゼルを出す」といった企業としての意地のようなものもある。

 CX-8のエンジンは「スカイアクティブーD2.2」。既存モデルに搭載されているエンジンだが、ピストンの形状を変えてエネルギーロスを少なくし、圧力センサーを内蔵させた燃料噴射システムを採用することで応答性能を高めた。新開発かと思われるほどエンジンの性能が格段に上がった。

 エンジン開発には時間がかかるが、短時間でそれをやり遂げるノウハウがマツダの技術力の源泉でもある。そこには2つのキーワードがある。一つ目は「コモンアーキテクチャー」。別名「一括企画」とも呼ばれる。長中期の商品戦略を練り上げた上で、新しい技術が出ればベース技術の上に新技術をすぐに採用できる構造のエンジンや車体を開発している。

スパコンを駆使

 二つ目が「モデルベース開発」。スーパーコンピューターを駆使したバーチャル技術で解析・実験して、実物の試作エンジンで実験したのと同等のデータを得られる開発手法のことだ。これを日本メーカーでは先駆けて確立させている。これだと、試作車や試作エンジンの製作数を大幅に削減でき、開発期間の大幅な短縮にもつながる。

 ここでEVの話を触れよう。筆者はEVを否定してディーゼル車を絶賛しているわけではない。大きな流れはEVに傾いているのかなとも思う。特に空気が悪い大都市などでは、走行中に有害物質を全く出さないEVは普及していくだろう。一方で充電設備などEVのインフラが整わない地域や、長距離を楽に走りたいユーザーはガソリン車やディーゼル車の方が利便性は高い。要は、地域やユーザーが特性やニーズに応じて、動力源を選ぶ時代が来ているのだ。

 マツダの小飼雅道社長も「クルマのパワートレイン(動力源)はマルチソリューションの時代」と語る。だからマツダは19年に出す予定のEV開発にも力が入っている。ここでも前述した「コモンアーキテクチャー」や「モデルベース開発」を駆使して独創的なEVを出す作戦だ。8月にトヨタとマツダが資本提携して、EVを共同開発することなどが発表されたが、EVの共同開発ではマツダが主導権を握る。実はマツダの方がトヨタよりも「バーチャルエンジニアリング」などEVの開発手法では長けているのだ。

 

 次世代の自動車は何が主役になるのか。複眼的かつ深く見ていかないと分からなくなったと言える。