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スープにして終わりじゃもったいない、実は可能性の宝庫「おや鶏」とは? 

池田恵里フードジャーナリスト
おや鶏レシピBOOK試食会を2月14日に開催(筆者撮影)。予想外の反響!

鶏のなかでもある地域でしか食べられていない「おや鶏」

日本養鶏協会が「おや鶏レシピBOOK」を作成、2020年2月14日に発表会とともに試食会が開催された。当初、人が集まるかという危惧にしていたのに反して、総勢60人近く集まり、いかに関心があるかが伺えた。

おや鶏レシピBOOK、この中に8品のメニューを掲載。無料で配布されています(筆者撮影)
おや鶏レシピBOOK、この中に8品のメニューを掲載。無料で配布されています(筆者撮影)

レシピ本が作成されたその背景には、

これまでおや鶏の多くはチキンエキス、加工食品に使われてきた。より汎用性をもたせることで生産者、企業、消費者を含めてフードロスをなくしていくことを考える大きな要素となる。

出典:一般社団法人日本養鶏協会出典より引用

青年部でまずは各企業のレシピを・・・

今回のレシピ本が出来る前段階、つまり昨年3月に養鶏の各企業が「おや鶏」のレシピを提案し、コンテストも実施された。

各企業の方々が一丸となって「おや鶏」の美味しさを伝えようとするのがひしひしと感じられる温かい良い場であった。

そこから次なるステップとして、「冊子を作ろう」という流れとなった。

おや鶏レシピBOOK

おや鶏肉の普及啓発を目的とし、オリジナルレシピ集を作成しました。レシピ集の中から4品を試食会でご紹介いたします。

硬いが旨味がいっぱい やわらかいことが美味しさわけではない

さて、この「おや鶏」。

今までのイメージだと一般に「硬い」といわれ、どうしても市場に流通されにくかった。多くの料理専門家は「スープにすると良い旨味が出るよね」と言って終わってしまった。そしてほとんど出回っていない、ある意味、幻の食材だ・

確かにブロイラーのように生まれてから45日で出荷される「やわらかさ」から比べると、1年半、卵を産んだ「おや鶏」は硬いことは否めない。しかし「おや鶏」を水だけでシンプルに茹でてみると、出来上がったスープの上澄みに綺麗な黄色の脂が浮き、それをスーッとスプーンで取って飲むと何ともいえないコクがあるのだ。

頂いてみると、非常に味わいのある濃厚な味わいで口の周りにまとわりつくような粘りがある。後でわかったことは、これがコラーゲンだったのであり、「おや鶏」のグルタミン酸は少ないがコラーゲンは豊富なのだ(日本食品保蔵化学学会誌文献)。さて、このコラーゲンはご承知のとおり皮膚の若返りはもちろんのこと、人間の骨にも非常に大きな役割を持つ。60歳以上になると女性の2人に1人は骨粗しょう症となるなか、最近ではカルシュウムの摂取のみならず、コラーゲン摂取の重要性が言われている。骨密度だけでなく、骨質も大切でそのカギとなるのがコラーゲンなのだ。

おや鶏の地方性

私が知るところ「おや鶏」を食する地域は、岡山、香川、広島、四国、そして福岡といった西の地域に限られている。東そして北に行くに従い、食することが少ない。知らない人が多いのは、実にもったいない話なのである。

そこでこの旨みを何とか消費者向けにアピールできないかを考えたのである。

既に家庭では調理離れが起こっている今、惣菜を購入して買って食を済ます消費者も多い。そこでスーパー、ベンダー、メーカーが人手不足も考慮するレシピが大切である。

調理20分

実際に今回のレシピ本の特徴としては

・家庭でもつくれるようにg量りではなく匙で測れるようにした。

・時短→家庭では調理20分まで、スーパーのバックルームだと揚げるだけで出来上がる商品もある。

・ヘルシー→もともとヘルシーな鶏肉に野菜をとり入れたもの。

・調理器具はどの家庭でもあるもの→冊子には調理器具をレンジアップ、フライパン、鍋でできるもの。

レシピについては構成比率(%でも)でも仕上げている。

おや鶏よ、アジアにはばたけ!

今回のレシピ発表会で興味深く聞かせてもらったのはアジアにおける鶏の食べ方である。

「アジアの人々は食感のある鶏を好むため、市場性がある」と一般社団法人日本食鳥協会鈴木稔専務理事が言われたことが印象的であった。

日本のみならず世界をも視野に入れることでおや鶏の美味しさを一気に広めることが出来るのではないだろうか。

フードジャーナリスト

神戸女学院大学音楽学部ピアノ科卒、同研究科修了。その後、演奏活動,並びに神戸女学院大学講師として10年間指導。料理コンクールに多数、入選・特選し、それを機に31歳の時、社会人1年生として、フリーで料理界に入る。スタート当初は社会経験がなかったこと、素人だったこともあり、なかなか仕事に繋がらなかった。その後、ようやく大手惣菜チェーン、スーパー、ファミリーレストランなどの商品開発を手掛け、現在、食品業界で各社、顧問契約を交わしている。執筆は、中食・外食専門雑誌の連載など多数。業界を超え、あらゆる角度から、足での情報、現場を知ることに心がけている。フードサービス学会、商品開発・管理学会会員

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