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植物性食、インポッシブルバーガーって?直視せざるを得ない食糧事情 

池田恵里フードジャーナリスト
日本にもインポッシブルバーガー到来(写真:ロイター/アフロ)

食料難の時代がすぐそこに・・・

世界では毎年、約8300万人、人口が増加しており、2050年には世界の人口は98億人となる予測。

これまでは動物性たんぱく質の供給のみで問題がないとされてきたが、人口増加に伴い、今よりたんぱく質が2倍必要となってきているのだ(世界銀行の発表)。

世界市場で見ると

2017年、植物性たんぱく質の世界市場は2025年までに約163億米ドル(約1兆円7690億円) 2017年の100億米ドル(約1兆840億円)から約1.5倍見込まれとなることが見込まれると言われている(2017年、Persistence Market Research出典)。

これは市場というより、社会的な課題として取り組まなければならない火急の件である。

食糧危機の問題は全世界的な問題であり、アフリカ、アジアでは特に直面するとされるからだ。

米国と言えば動物性たんぱく質嗜好、それが・・・

米国と言えば、肉汁たっぷりのステーキというイメージがつきものである。

しかし米国でもすでに大豆ミートは浸透しており、

・植物性食のみを食べる「ヴィーガン」人口は全体の6%

・植物性食を中心に食べる「フレキタリアン」人口は全体の36%

となっている。

そして今、植物性たんぱく質を使ったミート「インポッシブルミート(動物性ミートを使わないミート)」が定着してきており、日本にも到来している。

健康ももちろんのこと、環境負荷に対する考え方もあっての浸透である。

畜肉に育てるのに必要な水分は穀物を育てる場合の10倍近く必要とされるからだ(出典 東京大学生産技術研究所 沖研究室)。

これらを考えるとおのずと植物性たんぱく質の在り方も模索せざるを得ない。

日本でもこれまでも幾度となく、取り組みがなされ、大豆を使った料理は中食・外食で出現した。

最近では2019年5月9日に販売されたロッテリアの『ソイ野菜ハンバーガー』390円(税込み)もその一つだ。

ロッテリアのホームぺージより引用
ロッテリアのホームぺージより引用

そこで大豆ミートを半世紀手掛ける不二製油グループ株式会社のイノベーション戦略グループ新規事業創造チームの岩舘澄江氏、並びに長島慎氏にお話を伺うことにした。

不二製油グループ株式会社 長島慎氏、岩舘澄江氏
不二製油グループ株式会社 長島慎氏、岩舘澄江氏

岩舘氏「これまで大豆ミートは咀嚼感付与や肉汁保持などの機能を生かし、肉の一部代替として黒子的立場で使われていたものでしたが今、大豆ミートそのものに注目が集まっています」

長島氏「アメリカでは数年前からインポッシブルバーガーやビヨンドミートなど、Plant-based-food(植物性食品)、なかでもバーガーが注目されています」

インポッシブルバーガーとは

・一切、お肉を使わず、お肉の味を再現する

ビヨンドバーガーとは

・植物100%の家庭向けハンバーガー用パティ

とのこと。

開発について

開発について伺うことにした。

これまで食感はいまいちというイメージがあったからだ。

岩舘氏「鶏肉の食感の再現では、鶏の繊維感を重視し顕微鏡観察なども行い、組織構造を模索いたしました」

いろいろな大豆のミート筆者撮影
いろいろな大豆のミート筆者撮影

色目はココアなどの自然な色素で牛肉の色に近づけたり、鶏肉の色目に近づけたりしている。

岩舘氏「大豆バーガーは動物原料より価格が安定していることも大きなポイントです」

畜肉は乱高下の幅があり、大豆だと安定的な価格を推移する。

長島氏「そしてわが社はサステナブルな社会を目指すためにこの大豆ミートを考えております」

マーケティングについて

開発はもちろんのこと、不二製油グループ株式会社ではマーケティングも行われている。

1950年から1999年生まれの1030名を対象に実施したアンケート調査。

実施期間は2017年11月10日から11月11日

あなたが食事に対してこの5年で期待するようになったことは?

調査主体 不二製油グループ株式会社
調査主体 不二製油グループ株式会社

この5年で圧倒的に健康が1位となっており、50.3%。2人に1人が健康と回答している。2位に美味しさとなっており、40.6%である。

植物性食品に対して、約3割の人が関心をもっているとのこと。

調査主体不二製油グループ株式会社
調査主体不二製油グループ株式会社

さて、2019年5月9日に販売開始されているロッテリアの『ソイ野菜ハンバーガー』を試食してみた。

ロッテリア『ソイ野菜ハンバーガー』390円(税込み)
ロッテリア『ソイ野菜ハンバーガー』390円(税込み)

食べてみると、言われないとわからないほどごく普通に食べられるのにびっくり。

ほのかにナツメグ、クミンの香りがし、それが決して騒がしくないのだ。

この商品のカロリーは約260キロカロリーと通常の物より30%カットだとか。

「普通に食べれる」(失礼・・・)

これまで大豆たんぱく質のミンチは「植たん」ということでハンバーグの増量剤で使用されることが多く、水分を抜き取った植物性たんぱく質は水を3倍吸収し膨らむ。そのため、食感がいまいちといったイメージが強かったが、普通のお肉とそん色がないことに驚いてしまった。

そして岩舘氏、長嶋氏の両氏が言われたので印象的だったのが、ミレニアル世代がこれまでとは食への価値観が違うことだ。

ミレニアル世代の価値観が台頭

食の業界内で注目を集めている世代。それがミレニアル世代なのである。

ミレニアル世代とは

1981~96 年までに生まれた人口(2018 年時点で 22~ 37 歳の人口)」が「ミレニアル世代」と言われ、バブル崩壊後では、それ以前とは食の価値観が全く違うとされる。そしてこれらの世代が次の担い手、そして価値観を作り出すのだ。

ちなみにミレニアル世代のキーワードは

「植物性」「ボタ二カル」「べジ」のイメージが良好で植物性食中心の食生活への関心が高いとされる(品田知美社会学者引用)

そして技術革新による植物性たんぱく質を積極的に取り入れたいとミ二アル世代は回答する。

不二製油グループ株式会社提供
不二製油グループ株式会社提供

大豆の価値

世界的にたんぱく質不足は大きな問題である。

肉汁もうまくだし、限りなく動物性たんぱく質に食感に近いベジタブルミート。

これからはミレニアル世代の食への価値観が中心となって形成される。彼らが考える大切な価値とは、健康で地球にやさしい食を求めることである。

これは持続可能な食をめざすことでもあり、日々、改善して続ける企業が今後、ますます社会的に求められていくであろう。

資料提供、そしてお時間を頂戴しましたこと、本当にありがとうございました。

フードジャーナリスト

神戸女学院大学音楽学部ピアノ科卒、同研究科修了。その後、演奏活動,並びに神戸女学院大学講師として10年間指導。料理コンクールに多数、入選・特選し、それを機に31歳の時、社会人1年生として、フリーで料理界に入る。スタート当初は社会経験がなかったこと、素人だったこともあり、なかなか仕事に繋がらなかった。その後、ようやく大手惣菜チェーン、スーパー、ファミリーレストランなどの商品開発を手掛け、現在、食品業界で各社、顧問契約を交わしている。執筆は、中食・外食専門雑誌の連載など多数。業界を超え、あらゆる角度から、足での情報、現場を知ることに心がけている。フードサービス学会、商品開発・管理学会会員

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