イシダと日本製紙のコラボ 環境にやさしい紙製バリア素材を使ったガス置換包装とは
賞味期間を長くすることで食品ロス、人手不足解消、しかも体に優しい
数年ほど前から、コンビニ、そしてスーパーでも少しずつ、これまでとは違った容器が並べられるようになった。
コンビニではロスの問題、人手不足から人件費が高騰し、店舗側、つまりフランチャイジーにとってその負担が大きくなっている。
スーパーでも同様の問題が起こっており、これまで店舗内調理による「出来立て」の弁当で製造されていたが、昨今の人手不足から店舗内オペレーションが回らなくなってきている。
いかにロスを減らし、人手不足の問題も考えると、解決の糸口の一つとして、賞味期間をいかに長く伸ばすのも一つの方法である。
さて、これまで賞味期間を長くする方法として、昔からあるのが冷凍や缶詰、そしてレトルトパックがある。
今回、紹介するのはガス置換包装である。
既に、ガス置換包装は業界内で知られているところであるが、さらに進化させたガス置換包装を「スーパーマーケットトレードショー」で見かけた。
それが株式会社イシダと日本製紙株式会社がコラボした紙製バリア素材「シールドプラス」のガス置換包装である。
そこで株式会社イシダの商品企画部 産機商品企画課奥野久氏(以下奥野氏) 日本製紙株式会社企画本部パッケージング・コミュニケーションセンター技術調査役で包装専士野田貴治氏(以下野田氏)にお話しを伺った。
無害で長持ちさせるガス置換包装とは
まず読者の方はきっと「ガス置換?それって何?」と思われるであろう。
池田「コンビニなどで見かけるガス充填包装について、教えていただけますでしょうか」
奥野氏「空気は窒素が78%、酸素約21%、そして少量のアルゴンと二酸化炭素で成り立っています。ガス置換包装では、空気を酸化防止や腐敗制御に効果のあるガスに置き換えて密封包装をします」
一般的に生鮮品や加工食品が劣化する事柄は主に2つ
・カビや微生物の繁殖によって腐敗する
・油が酸素に触れることによって劣化する
そこで酸化させる要因となる酸素の代わりに窒素、カビや微生物の増殖抑制に効果がある二酸化炭素を食品と一緒に容器に封入する事で、日持ち向上させるのである。多くの人はガス置換包装と聞くと、体に悪いと言われる方も・・・。
奥野氏「ガス置換包装には窒素や二酸化炭素、時には酸素も使用しますが、それらは空気中にも存在しており体には害はありません」
結果、空気の代わりにガスを入れることで、微生物を抑制し、酸化も防ぐことから、品質の劣化を遅らせて通常より賞味期間を延長することが可能になった。
ガス置換包装では、窒素のみ、または窒素や二酸化炭素を混合したガスを使用し、食材によってはその割合を変えることがあると言われる。
ガス置換包材はヨーロッパでは主流
ヨーロッパのスーパーではこのガス置換包装は一般化されている。
シール(上ぶた)の部分はアルミ箔、もしくはバリヤ機能を持つプラスチックとなっている。
ガス置換をしても容器そのものが中のガスが漏れてしまうと意味がなくなってしまうためだ。
プラスチックをやめる流れ
野田氏「最近では、ヨーロッパではプラスチックフィルムの使用を禁止する流れになっています。2030年にはすべてのパッケージ素材をリサイクル可能にするように推進しております」
脱プラスチックが今後、大きな世界の流れと言われるのだ。そこで紙素材、つまり木から作られることでCO2排出量が大幅に削減でき、紙でガスが漏れない素材を開発したとされる。
環境にやさしい紙製バリア素材「シールドプラス」。
特徴として
ガスが漏れない紙製バリア素材を容器の上ぶたに張り付けた包装
利点としては
・酸素・水蒸気バリア性
優れたバリア性により、内容物を保護し品質を維持できる
・フレーバーバリア性
内容物の香りを保持し、「匂い」漏れ・「匂い」移りを抑制
・環境適合性
循環型資源である「木」を基材としており、環境適合性に優れている
野田氏「この開発には5年の歳月を要しました」
匂いをも解決 宅配においても重要ポイント
さて匂いについてだが、実際、比較させてもらった。
まず紙バリア素材のものは中に何が入っていないのか、わからない。それほど匂いを遮断しているのだ。
普通の紙袋を匂うと、一目瞭然でチョコレートであることがわかる。
野田氏「今後、宅配の需要が増加し、いろいろな食品を一つにまとめて送られます。つまり匂いが他の包装に移るのです。これで匂いが移っていないこと、おわかりになったかと思います」
今後、紙バリア素材で容器を作る、全体を紙バリア素材にすることも検討しているそうである。
配送されるまで、異物混入を阻止するために
次に素材をパックして、配送するまでの流れを奥野氏にお聞きした。
配送されるまで、いかに1パックにおける重量が正確であるか、異物混入されていないか、梱包までにラインの中で機械を通して、調べるのである。
ここで重量が正確かどうかを確認。
異物混入も調べる。
シールと容器の間に食材が挟まれる、いわゆる「かみこみ」もチェックし、あれば外される。
一見、普通の紙に見える。しかし紙にはすかし印刷されており、アプリをかざすことで埋め込まれた情報を読むことができるのだ。
これによりトレーサビリテイ、食品の製造時間、場所などのその情報を追跡できる。
奥野氏「初期投資は確かにかかります。しかし工場に導入することで、これまで約10人だったことが2人まで減らすことができます」
食材を詰める人、そして重量が正確かどうかをチェックするのみで大幅削減できるという。
技術を合わせることで新たなる市場へ
日本の技術は世界的にもそのレベルの高さは目を見張るものがあり、今回、各企業が持つノウハウをコラボすることで相乗効果により新たなる市場が開けると痛感した。
忙しい中、いろいろな質問に答えていただき、本当にありがとうございました。