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成長が止まらないヨーグルト市場 

池田恵里フードジャーナリスト
ヨーグルト、機能性、飲む、これがキーワードで成長(写真:アフロ)

売り上げ好調のヨーグルト 小売りの売り上げにも貢献

ヨーグルトは15年、7年連続成長で勢いが止まらない。2014年度のヨーグルトと乳酸菌飲料の総市場規模は、前年比2.8%増の5,130億円となっている(2015年 株式会社総合企画センター大阪参照)。小売業ではよく活用されるレジ通過の金額PIでみても、ヨーグルトはこの半年で31693円となっており、ミネラルウオーターが2666円、食パン16304円と比較して頂いてもわかるように、いかに顧客の支持度が高いかが伺える(チェーンストアエイジ2016年6月15日参照)。

とはいえ、ヨーグルトはこれまで幾度となく成長、鈍化を繰り返し、2012年にインフルエンザ予防にヨーグルトが効くとメデイアが取り上げたことで、一気にブーム到来。冬場は在庫切れを起こす勢いとなった。

明治のヨーグルト人気、交錯するそれぞれの思惑

ブームというのは、一時期の現象であることが多い。しかしヨーグルトは今も好調である。

最近の傾向を見ると、2013年「食べるヨーグルト」から「飲むヨーグルト」まで及び、このところ話題となっている腸内フローラ、つまり腸内菌の環境を良くする食品として「機能性ヨーグルト」が取り上げられ、売り上げを牽引している。

ドリンクヨーグルト

まずドリンクヨーグルトについては、2019年の売り上げ予想は1312億円で2011年714億円から見ると、急激な伸び率と言える(富士経済の調べ)。「飲む」という簡易さから、継続性が高まるとされ、売り上げが上がった。ちなみに飲むヨーグルト、中でも明治ヨーグルトR-1ドリンクは、量販店、そしてCVSの定番商品として大きく引っ張り、ドリンクヨーグルトの52%を明治が占め、ヨーグルト全体の売り上げシェアをみても、No1となっている。

食べるだけにとどまらず、飲めるようにしたヨーグルトを見ると、アイスクリームのV字回復する流れとダブってしまう。

ヨーグルトの「飲む」とアイスクリーム「飲む」

アイスクリームは、この数年、売り上げは好調であるが、それまでは減少の一途をたどった。ピーク時の1994年度、4296億円だったころから、年々減少し、2003年には3322億まで落ち込んだのである。その後、近々のデーターだと4300億円となっており、急激な回復をなし、かつてのピーク時の売り上げ数字を追い越す勢いだ。V字回復の大きな要因として、気温には関係なく、価格競争からの脱皮と、各企業がブランドを打ち出し、そして食べ方をも変容させたことにある。食べ方の提案として、「食べるアイスクリーム」から「飲むアイスクリーム」に変えたのが、ロッテの飲むアイス「COOLISH(クーリッシュ)」である。それまでのアイスクリームは「食べるもの」であった。しかし年々の売り上げ減少の調査をかけてみたところ、意外な競合相手が飲みやすい機能性飲料のペッドボトルだったのである。そこで飲料仕立ての微細の氷を入れ、滑らかなアイスクリームにし、新たな領域に入ったのである。勿論、それには容器なども幾度となく改良をかけたとされる。

話を戻すと、ドリンクヨーグルトにすることで、リピートしやすい。その為、アイスクリームのように容量を変え、より簡易にヨーグルトを利用してもらえるように、各社、検討している。

機能性ヨーグルト

さて2015年4月1日、原料高騰からヨーグルトは価格アップを断行し、一時期は売り上げダウンをも危惧されたが、ヨーグルトは物ともせず、売り上げを伸ばした。ドリンクヨーグルトも含む機能性ヨーグルトの貢献が大きいとされる。マスコミに取り上げらるようになり、免疫力アップ、インフルエンザ予防、そして花粉症予防、一般消費者にヨーグルトの効用を知られるようになったことが大きい。その為、冬場に需要が上がっている。そして、近々では「腸内フローラ」が一般消費者に浸透したことで、ヨーグルトのニーズはより高まっている。

腸内の現状

冒頭に述べた「腸内フローラ」、つまり腸内にある約1000種類以上の菌の環境を良くすることは大切であり、寿命にも大きく関わる。腸内に住む菌のバランスが崩れることで、免疫力が低下し、がん、糖尿病、うつ病を引き起こす。最近では体内時計の乱れにも影響し、それは睡眠にも大きく関わるとされる。崩れる要因として、ストレスや運動不足、その他にも抗生物質などの薬による影響もある。しかし最近、日本人の腸内細菌が減少しており、腸の老化が進んでいる。ヨーグルトは、より腸内環境を良くする、つまり善玉菌を増やす役割がある。

腸内細菌の種類、ヨーグルトの効用

約1000種類以上ある腸内細菌は、ご存じのように大きく3つに分かれ、「善玉菌」「悪玉菌」善玉にも悪玉にもなる「日和見菌」が存在しており、これらのバランスが大切である。崩れると体重が増加したり、上記の病気の引き金となる。なかでもビフィズス菌は、老齢期になると減少してしまうため、ヨーグルトの中には、ビフィズス菌を入れている商品が見受けられる。とはいえ、本来、ビフィズス菌は人の大腸に住んでいるものであり、食品由来ではないため、ビフィズス菌入りのヨーグルトというのは、新たに大腸にある菌を付加されたものなのである。菌によって効用も違うようで、花粉症にはフェカリス菌、ピロリ菌にはLG乳酸菌といった具合に、自分にあった菌の入ったヨーグルトはどれなのか、しばらく続けて食する必要があるらしい。免疫力アップの観点から言うと、乳酸菌は生きていなくても効果があると言われている。オリゴ糖入りというのは、ビフィズス菌などの栄養となり、腸内の状態をより良くする。

小売りにおけるオリゴ糖のPI販売額は、前年同月比より140.66%の伸びをしめし(チェーンストアエイジ参照)、いかに消費者が健康に留意し、腸内フローラについて関心がたかまっているかが伺える。

このように人それぞれ、どのヨーグルトが自分に合うのかが大切になってくる。売り場を見ると、選択することが可能なほど、様々なヨーグルトが展開されている。まだまだ「腸内フローラ」については、未知なる部分が多いとされ、ますますヨーグルト業界は、各社、開発にしのぎを削るであろう。

フードジャーナリスト

神戸女学院大学音楽学部ピアノ科卒、同研究科修了。その後、演奏活動,並びに神戸女学院大学講師として10年間指導。料理コンクールに多数、入選・特選し、それを機に31歳の時、社会人1年生として、フリーで料理界に入る。スタート当初は社会経験がなかったこと、素人だったこともあり、なかなか仕事に繋がらなかった。その後、ようやく大手惣菜チェーン、スーパー、ファミリーレストランなどの商品開発を手掛け、現在、食品業界で各社、顧問契約を交わしている。執筆は、中食・外食専門雑誌の連載など多数。業界を超え、あらゆる角度から、足での情報、現場を知ることに心がけている。フードサービス学会、商品開発・管理学会会員

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