Yahoo!ニュース

【新型コロナ】飲食店の利用が増えると、新規感染者数も増加 米・銀行カードの利用データが示唆

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
カリフォルニア州は会食を通じた感染を防ぐため、店内飲食の再停止を命じた。筆者撮影

 新型コロナウイルスによる1日の新規感染者数が5万人を超えて、感染拡大が続くアメリカ。

 今、感染の中心は、アメリカ東部からフロリダ州、テキサス州、アリゾナ州、カリフォルニア州などアメリカ南西部へと移っている。

 そんな動きがある中、今後、どの地域で新規感染者が増加するのか気になるところだ。しかし、それは、飲食店でのクレジットカードやデビットカードの利用動向から予測できるかもしれない。アメリカでは飲食店で食事をする際、カードを利用して支払う客が多いからだ。

 そこに着目したJPモルガン・チェース&Coのエコノミスト、ジェシー・エドガートン氏は、チェースのクレジットカードとデビットカード保有者3,000万人の利用動向とジョンズ・ホプキンス大学の感染トラッカーのデータを分析、その結果、飲食店内でのカードによる支払い(オンラインでの利用ではなく、店内での利用)が昨年同期より増加した州では、その後3週間の間に新規感染者数も増加していることを発見した。

 つまり、昨年同期と比較した場合の飲食店でのカード利用の増減が、3週間後の新規感染者の増減を予測する一つの指標になるわけだ。

飲食店利用と新規感染者数に関係性

 例えば、アリゾナ州では、3週間前、飲食店でのカードによる支払いは昨年同期と比べてあまり下がっていなかった。それだけ、同州の人々は飲食店で食事をしたことになるが、今、同州では、新規感染者数が増加している。逆に、マサチューセッツ州では、3週間前、飲食店でのカードによる支払いが昨年同期と比べて激減した。それだけ、飲食店で食事をする人々が減少したわけだが、同州では、新規感染者数も減少している。

 エドガートン氏はまた、スーパーでのカード利用動向も調査した。その結果、スーパーでのカード利用が昨年同期よりも増えた州では感染拡大が鈍化していることがわかった。

 例えば、3週間前、昨年同期と比べると、スーパーでのカード利用が20%以上増えたテキサス州とアリゾナ州では感染拡大が鈍化、10%以下の増加に留まったテキサス州とアリゾナ州では感染が拡大したという。

 つまり、エドガートン氏の分析結果は、感染拡大が鈍化した州の人々は、飲食店よりもスーパーで消費することにより、ソーシャルディスタンスを保持し、感染しないよう防止していたことを示唆している。

 飲食店やスーパーでのカード利用動向と新規感染者数には相関関係があるのかもしれない。言い換えると、それだけ、飲食店内での食事は感染リスクが高いのである。

集まりは再考してほしい

 実際、アメリカの多くの州は、ロックダウンの際は飲食店の店内飲食を真っ先に制限、経済再開の際も店内飲食はなかなか許可されなかった。

 また、今、感染が拡大する中、アメリカで再開された経済活動の再制限が行われ始めているが、中でも、制限のターゲットになるのが飲食店の店内営業だ。ニューヨーク市は、7月6日から予定していた飲食店の店内営業を延期。カリフォルニア州のニューサム知事も、3週間の飲食店の店内営業を再停止した。3週間としたのは、新型コロナウイルスの潜伏期間の2週間を考慮したものだという。

 飲食店が制限のターゲットにされているのは、飲食の際にはマスクなどのフェイスカバーを外さなければならず、また、家族や同居人以外の人々と会話を通して交流する場所になるからだ。会話は飛沫感染に繋がる可能性がある。

 ニューサム氏は訴えている。

「多くの人々が、一緒に住んでいる人以外の人々と集まったことによって感染している。こういった集まりに参加するのは再考してほしい」

 そんな集まりの場所となっている飲食店。

 今、日本では「夜の街」関連の新規感染者数が増加しているが、経済再開とともに、友人と飲食店で会食する人々も増えていることと思う。東京では新規感染者が100人を超える日が続いているが、7月3日、「夜の街」関連の感染に次いで多かったのが、会食を通じた感染だった。

 アメリカで感染拡大が始まった当初、米国立アレルギー・感染症研究所所長のファウチ博士はこう明言した。

「私はレストランには行かない」

 ファウチ博士の言葉が思い出されるべき時が、今また来ているのかもしれない。

(関連記事)

This chart shows the link between restaurant spending and new cases of coronavirus

Restaurant spending could predict spread of coronavirus, economist says

在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

飯塚真紀子の最近の記事