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「安倍氏は空気が読めてない。小池氏はNYのクオモ知事のよう」米紙 軍配は小池氏に?

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
ニューヨークのクオモ知事のように、毎日、新型コロナの状況を伝えている小池氏。(写真:つのだよしお/アフロ)

 “Tone-Deaf”

 ”Out of Touch”

 どちらも、空気が読めてない、つまり、KYという意味だ。

 アメリカのメディアは、KYな動画を投稿して批判されている安倍首相のことを、そう表現している。

 CNNは、国民が在宅勤務がままらなず苦しんでいる時に、家でリラックスしている動画を投稿した安倍首相について、こう伝えた。

「日本のSNSユーザーは、安倍首相は空気が読めてない(Tone-Deaf)と非難している」

 また、アメリカの2大新聞も、

「何様のつもり? とても空気が読めていない(out of touch)」

というコメンテイターの発言を紹介している。

小池氏はクオモ氏のよう

 “貴族か”とも批判された動画を投稿した安倍氏が叩かれる中、したたかにも1本取ったのは小池百合子都知事かもしれない。

 アメリカの2大紙、ニューヨーク・タイムズワシントン・ポストが掲載している、安倍首相のツイッター動画に関するAP通信の記事「日本の指導者、“ステイ・ホーム”を訴える新型コロナツイートをして叩かれる」は、安倍氏と小池氏を比較、小池氏の対応を、新型コロナ対応が高評価されているニューヨーク州知事のアンドリュー・クオモ氏のようだと言及している。

「地方の指導者たちはパンデミックともっと積極的に闘うよう安倍氏をプッシュしている。彼らをリードしているのは東京都知事の小池百合子氏で、彼女は、ニューヨークのクオモ州知事のように、彼女の場合はユーチューブでだが、毎日(コロナ情報を)生配信している」

「小池氏は、クオモ氏のようにはっきりと物を言っており、的を射ている。事実から外れていないし、東京を守るという使命感を持っている」

「非常に的外れの安倍氏と比べて、小池氏の言うことはもっともだとみな考えているようだ」という上智大学教授の中野晃一氏の発言も紹介されている。

 小池氏が、安倍政権に圧力をかけて、東京のナイトクラブやパチンコ店、ゲームセンターなどのホットスポットを休業させるのに成功したことにも触れられている。

 さらに同記事は安倍氏と小池氏の休業要請への対応も比較。

「経済にダメージを与えることを警戒し、安倍氏ら指導者たちは店の休業に反対、地方の指導者たちに、必要不可欠な店の休業要請を決めるのに2週間待つよう求めた。小池氏は土曜日から休業させ、中小企業に最大100万円を支給すると約束した」

無能で信頼されていない安倍政権

 ロイター通信は「安倍首相のライバル、小池都知事、新型コロナ政策で厳しいスタンスを取る」というタイトルで、小池氏が地方政府も動かしていると指摘している。

「小池氏の断固とした厳しいスタンスに押され、地方政府は、中央政府が待てと言っているにもかかわらず、事業主に休業を呼びかけている。それは、中央の政治家が、通常、地方のねぐらを支配している国にあっては珍しい動きだ」

 また、識者のコメントを通して、安倍政権の無能さを批判し、小池氏のリーダーシップを評価。

「知事たちが、中央政府の命令に抵抗するのは珍しいことだ。中央政府が無能で、信頼されていない証拠だ」(上智大学政治学教授中野晃一氏)

「小池氏が傑出している点は、国民が欲するもの=自信がにじみ出る強いリーダーシップ、を与えているところだ」(日本アナリスト、ジェスパー・コール氏)

 安倍首相の“空気が読めない動画”は、皮肉にも、ライバル小池都知事のしたたかさを世界に知らしめる結果に終わったようだ。

在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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