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「勝利あるのみ」の日韓戦を前に光をもたらしたムードメーカーの気構え

小澤一郎サッカージャーナリスト
韓国戦前日のトレーニングでもメリハリを付けて精力的にメニューをこなした高木大輔

13日、ミャンマーの首都ネピドーで日本サッカー界の今後を占う上でとても大きな一戦が行われる。日本時間18時(現地時間15時半)にキックオフが迫ったのがAFC U-19選手権ミャンマー2014のグループC最終戦となる日韓戦だ。初戦(中国戦)でまさかの敗戦を喫したことで、日本は「韓国戦(第3戦)での勝利以外に準々決勝進出の可能性がない」状況に追い込まれている。

11日に行われた第2戦のベトナム戦では、90分に同点に追いつかれながらも6分間のアディショナルタイムに2ゴールを決め、何とか3-1で勝利した。劇的勝利をおさめたことでU-19日本代表の士気は上がっているが、2試合共に低調なチームパフォーマンスであったことは否めない。ベトナム戦で怪我人が発生したことで韓国戦は先発メンバー数名の入れ替えが予想されるも、チームには光も見え始めている。

■”もがくこと”を知るチームのムードメーカー

その光の中心にいるのが、チームのムードメーカーであるMF高木大輔(東京ヴェルディ)だ。持ち前の明るさで初戦敗退翌日のトレーニングでは精一杯声を張り上げ沈んだムードを払拭すると、ベトナム戦では同点に追いつかれた直後にベンチを飛び出し必死にチームを鼓舞してピッチでうなだれるチームメイトを奮い立たせた。追い込まれた状況での冷静さはある側面で大切だと思うが、ここまで追い込まれた状況下では“もがくこと”以外に抜け出す道はない。

「ロスタイムに追いつかれて落ちかけましたけど、それを跳ね返せるというのはこのチームの今の強さだと思います」と話す高木は、ベトナム戦での奇跡的なリアクションについてこう説明する。「チームとして戦わなければ、こういうところで勝てないというのは誰もがわかっていること。ピッチに出ていないとあの(同点弾の)辛さはわからないからこそ、(鼓舞する言葉を)言えたのかなというのはあります。自分がもしピッチに出ていて90分戦っていて、あの形で失点したら自分もあの状態になっていたかもしれない。ピッチの選手がダメならピッチの外から。監督以外に言える選手がたくさんいないとチームのまとまりであったり、更に上に行く強さは持てないと思うので」

■「(試合に)出れなくてもやれることはある」

この1、2戦で出番のなかった高木は「もちろん、ここに来ている以上は試合に出たいです。でも、出れなくてもやれることはたくさんあります」と言い切る。「まだまだ足りないとはいえ、チームを盛り上げる部分などで貢献できることはたくさんあります。中1日、連戦、これだけきつい中で、まだ出ていない選手がたくさんいます。力的にも余っている選手がたくさんいるので、そういう選手たちがこの韓国戦、その上の準々決勝で結果を残さないといけないと思っています」

もしかするとこの韓国戦でも出場機会が回ってこないかもしれないが、出場の有無にかかわらずチームに貢献する方法を知り、明るい兆しをもたす高木大輔のような選手がこのU-19日本代表にはいる。そんなチーム、選手たちを信じてこれから数時間後にキックオフする決戦を見守りたい。

日本からミャンマーまで応援に駆けつけたサポーターが10日の練習場で掲げた弾幕
日本からミャンマーまで応援に駆けつけたサポーターが10日の練習場で掲げた弾幕
サッカージャーナリスト

1977年、京都府生まれ。早稲田大学教育学部卒。スペイン在住5年を経て2010年に帰国。日本とスペインで育成年代の指導経験を持ち、指導者目線の戦術・育成論を得意とする。媒体での執筆以外では、スペインのラ・リーガ(LaLiga)など欧州サッカーの試合解説や関連番組への出演が多い。これまでに著書7冊、構成書5冊、訳書5冊を世に送り出している。(株)アレナトーレ所属。YouTubeのチャンネルは「Periodista」。

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