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男子バレーボール ジュニアチーム出身、初のVリーガー佐川翔選手が現役引退。Vol.2

市川忍スポーツライター
写真提供 BLAZERS SPORTS CLUB

酒井新悟監督と出会い、セッターに転向

9年間の現役生活を終えた堺ブレイザーズのセッター、佐川翔さんが「あの出会いがなければVリーガーにもなれなかった」と語るのが、元堺ジュニアブレイザーズ監督の酒井新悟氏(現・久光スプリングス監督)だ。

「僕がジュニアブレイザーズに入ってすぐ、監督が新悟さんに変わりました。それまで僕はアタッカーだったんですけど、新悟さんから『セッターもやってみれば?』と言われたのがセッターを始めたきっかけでした。もしあのときにセッターに転向していなければ、こうしてトップリーグには入れなかったと思います」

ジュニアブレイザーズの練習は「キツかった」と振り返る。現在の日本製鉄堺体育館が新築される前の旧体育館は観客席に多くの階段が設置してあった。その階段を何往復もしながら、体育館の外周を使ってランニングをしたり、体育館の隣にあった池の周りを走るメニューもあった。1人でも遅れる選手がいると、遅刻した選手が来るまでランニングを続ける日もあった。

「今はジュニア世代でそこまでハードな練習をするチームはないと思いますけど、僕らのときは厳しかったですね。でも、その代わりに楽しいこともたくさんありました。一度、僕は練習時間を間違えてトップチームの練習開始の時刻に体育館へ行ってしまったことがあったんです。トップチームのコーチも兼任していた新悟さんから『何してんねん?』と聞かれて事情を説明したら、『じゃあ、ブレイザーズの練習に入れ!』と(笑)。中学生の僕が1人だけ混じって、トップチームの選手と対人パスをしたり、当時のレギュラーセッターの方から教えてもらったり、贅沢な時間を過ごしました」(佐川さん)

7年越しで再びブレイザーズへ

佐川さんはジュニアブレイザーズを卒部後、和歌山の強豪、開智高校へと進み春高バレーに出場した。その後、関西学院大でもセッター兼アタッカーとして活躍した。そしてついに2012年、堺ブレイザーズに内定選手として入団。7年越しでブレイザーズのユニフォームに再び袖を通すことになったのだ。

現役引退後は日本製鉄の社員として働く。5月の取材時点では「まだどこに配属されるかはわからない」と語っていたが、堺の元選手であり、日本製鉄の社員である他のOBのように配属先周辺で行われるV.LEAGUEの試合には「応援のために顔を出したい」と笑顔で語った。

写真提供 BLAZERS SPORTS CLUB
写真提供 BLAZERS SPORTS CLUB

現役生活に悔いが残るとすれば……

最後に選手として悔いはないかと尋ねてみた。

「全くないと言えばうそになりますね。一つ、悔いが残っているとすれば、『Vリーグで日本一になりたかったなぁ』ということです。内定選手として帯同した年にブレイザーズが優勝したのですが、僕はコートエンドで試合を見ていただけで……。喜ぶみんなの姿や胴上げを見て、そのあとはずっと、自分が選手である間にもう一度、自分がコートに立って優勝するシーンを思い描いてプレーしていましたから」

優勝は叶わず、佐川さんの在籍中は長らくチームが下位に低迷した時期もあった。それでも試合に足を運んでくれるサポーターの姿を見て幾度も励まされたと語る。

「こんなときでも来てくださっているんだなって思うと、もっともっと頑張らないといけないなって、サポーターの方たちには本当にこの9年間、何回も励ましていただきました。僕がチームを離れても、ブレイザーズの歴史はまだまだ長く続いていきます。僕も一緒に応援していきますので、一緒にブレイザーズを見守ってほしいですね」

今でこそV.LEAGUEの加盟ライセンスに〝ジュニアチームの保有〟が含まれ(※ディビジョンによって違う)、堺ジュニアブレイザーズの発足後は各チームもジュニアチームを作って地域の活動に貢献するようになっている。日本代表で活躍する富田将馬選手(アローズジュニア→東レアローズ)のように、ジュニアチーム出身の選手も徐々に増えた。来る8月27日からは2日間に渡り、V1~V3の各カテゴリーが保有するチームを含めた男女計35チームが一堂に会し『2022Vリーグジュニア選手権大会』が開催される。

そして、奇しくも、佐川さんの引退と入れ替わるように、2021-2022シーズンから堺ジュニアブレイザーズ出身である重留日向選手も堺ブレイザーズの一員となった。

「本当に良い思い出ばかりです」と振り返る佐川さん。これからさらに増えるであろう〝ジュニア出身〟の後輩たちを温かい目で見守ってくれることだろう。

スポーツライター

現在、Number Webにて埼玉西武ライオンズを中心とした野球関連、バレーボールのコラムを執筆中。「Number」「埼玉西武ライオンズ公式ファンブック」などでも取材&執筆を手掛ける。2008年の男子バレーボールチーム16年ぶり五輪出場を追った「復活~全日本男子バレーボールチームの挑戦」(角川書店)がある。Yahoo!公式コメンテーター

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