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ビーチバレーって楽しい!ビーチ記者1年目の奮闘記

市川忍スポーツライター
アフロ(写真:アフロ)

ビーチに不似合な、修行僧のような選手が

 ファレル・ウィリアムスの軽快な曲に合わせて、スタンドの観客は楽しそうに、思い思いにリズムをとっている。青い空と強い日差し。しかしそのノリノリの特設ビーチコートには不似合いなくらい、ただ一人、修行僧のような表情でボールをにらみつけている男がいる。2017年シーズンからビーチバレーボールに転向したゴッツこと石島雄介だ(トヨタ自動車)。

 この日、石島はビーチ転向後、日本で初めての公式戦勝利を挙げたが、相変わらずの仏頂面で、言葉も少ない。しかし、それがかえって新鮮だった。この明るく、開放的な場所で、何か新しい風が吹いている印象を受けた。

 2017年、インドアバレーボールから越川優(ホリプロ)、石島がビーチに転向したことで、遅ればせながらわたしもビーチバレー記者としてデビューすることとなった。インドアの記者としては25年近い経験があるが、ビーチは初めてで、しかも全く違う競技といってもいいほどその特性が違う。慣れるまでには時間がかかるな、と覚悟を決めて会場へ向かった。

ビーチ取材に行けなかった理由

 初めてビーチバレーの会場に脚を運んだときに会った西村晃一選手(WINDS)に「よろしくお願いします」と挨拶をすると「え?今?」と笑われた。インドア時代に頻繁に取材をさせてもらっていた西村選手がインドアからビーチに転向した2002年、取材に誘われたが、うやむやにして避けていた経緯があるからだ。しかし言い訳をさせてほしい。避けていたのにはそれなりの理由がある。わたしは日光アレルギーなのだ。それもかなりの重症で、直射日光に当たるとじんましんが出るだけではなく、ひどいときには高熱も出る。同じ症状で苦しんでいる人には理解してもらえると思うが、これがけっこうつらい。

 そこで記者になってからは、野球の取材ではドーム球場をねらって出没し、屋外球場に行かなければいけないときは、日中はカメラマン席やベンチの奥にひっそりと隠れていた。それくらい酷いアレルギー持ちなのである。

 そんなこともあって、ずっとビーチの取材はご遠慮させていただいていたのだが、2017年はそうはいかなかった。越川や石島がどんなプレーをするのかこの目で見たかった。そして、インドアバレーで日本代表として戦ってきた彼らが、どれくらい通用するのか知りたかった。何より、彼らが加入することで、ビーチバレー界に起こるであろう波紋がどんなふうに広がるのかが見たかった。

 そして、ビーチバレー記者としての第一歩がスタートしたのである。

多くの観客を集めた越川優と石島雄介

 ビーチでプレーするのには、強靭な体力が必要だという。砂に脚を取られ、体育館の床で動く以上の体力を消耗する。それを実感したのは、自分も砂の上を移動して取材に走り回ったあとだった。脚がだるい。だるくて、翌日も筋肉痛が続く。

 それから、悩まされたのはやはり強い日差しだった。記者席はテントの中にあり、直射日光は当たらないものの、取材のときには外に出て、炎天下で選手に話を聞く。その数分間に当たった日光のせいで、最初の取材のあとさっそく皮膚科に直行した。

 最初は会場での動きもよくわからなかった。インドアであれば、記者会見場で待てば選手が来てくれる。しかしビーチはそうはいかない。試合が終わったあと、どこに行けばいいのかわからず右往左往していた。記者席の椅子が足りなくなっても誰に言えばいいのかわからない。ビーチバレースタイルの編集長に聞くと「昨年まではこんなに取材陣が来たことがない」とのこと。運営も、まだ取材対応に慣れていないのが現状のようだ。

 観客の多さも昨年以上だそうだ。湘南ひらつかビーチパークは誰でも入れる会場なので、観客動員数の推移ははっきりとはわからないが、関係者によれば「第一試合から来るお客さんの数は明らかに増えた」そうだ。ふらっとビーチパークに遊びにきて、バレーをやっているから見てみようという通りすがりの人が足を止めるのではなく、明らかに試合開始時間に合わせて来場した人だ。実際、越川と石島がそれぞれ出場した試合はメインコートではなかったが、彼らが登場するコートの周辺には多くの観客が集まっていた。

記者としての失敗談もたくさん

 もちろん、失敗談もたくさんある。

 朝、大雨が降っていたので、てっきり中止だと思い眠っていたら「開催します」というツイートが回ってきた。大雨でも嵐でも開催することを知らなかったわたしは、跳び起きて会場に向かった。大遅刻で第一試合を見逃した。

 あるときは会場のシャワーの前の水たまりに、ICレコーダーを落とした。レコーダーは壊れ、データはすべて消えた。買ったばかりのサンダルも、砂にまみれて1シーズンで履きつぶした。思えば、初めてのことづくしで、すべてが新鮮で楽しかった。きっとプレーしていた越川、石島両選手も充実した1年を送ることができたのではないだろうか。

初めての取材で見えた「希望」

 まだまだビーチバレーのプレーや戦略についてはわからないことばかりだが、ジャパンツアー終盤の試合で、石島の高いブロックを避けようと、相手選手がスパイクミスを連発する姿を見て、わたしは確信した。彼らの転向は明らかに日本のビーチバレー界にとって、大きな刺激となったはずだ。そして刺激だけにとどまらず、石島の高さはビーチでも大きな武器なのだ。スタートしたばかりの一年、うまくいかないことが多かったとしても、伸びしろはたくさんあると思っている。

 来年はもっとビーチに足を運びたいと思う。

スポーツライター

現在、Number Webにて埼玉西武ライオンズを中心とした野球関連、バレーボールのコラムを執筆中。「Number」「埼玉西武ライオンズ公式ファンブック」などでも取材&執筆を手掛ける。2008年の男子バレーボールチーム16年ぶり五輪出場を追った「復活~全日本男子バレーボールチームの挑戦」(角川書店)がある。Yahoo!公式コメンテーター

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