クラブチームとしてVリーグ制した堺ブレイザーズ、王者にさらに求めるもの

ブロックを決めた横田一義が、右手を高く掲げ応援団の声援に応える。スパイクを決めた石島雄介も両手を力強く突き上げ、やはり横田と同じように応援団席に向かって雄たけびを上げる。2013年4月14日、東京体育館で行われたVプレミアリーグ優勝決定戦。堺ブレイザーズはセットカウント3対1で前年度覇者のパナソニックパンサーズを下し、2年ぶり5度目の優勝を果たした。

「ファンの皆さん、ありがとうございます。僕らはファンとスポンサーの皆様に育ててもらっているチームです。クラブチームとして、ファンの皆さんとともに勝ち取った一勝です」

試合後のインタビューで優勝の感想を聞かれた主将の石島は、真っ先にサポーターとスポンサーへの感謝の言葉を述べた。

堺ブレイザーズは地域密着型のスポーツクラブ

堺ブレイザーズは2000年に発足した地域密着型総合スポーツクラブである。母体企業を持つチームと違い、ブレイザーズは複数のスポンサーからの広告収入と、ソシオ会員と呼ばれるサポータズクラブの年会費、そして年に数試合開催されるホームゲームの入場料収入などを資金に運営している。

「クラブチームとしての優勝に価値がある」とヒーローインタビューで語ったセッターの今村駿を、記者会見のあと、取材に訪れていた報道陣が囲んだ。そのうちの一人がこう尋ねる。

「基本的な質問なんですが……、堺ブレイザーズの選手はセミプロということになるんですか?」

近年でこそ地域密着型や企業複合型のクラブチームが増えたものの、まだ企業スポーツ中心の日本ではなじみが薄いのか、質問の内容はチームの運営方法にまで及ぶ。それに対し、今村は時間をかけ、丁寧にブレイザーズの立場を説明している。自分はブレイザーズスポーツクラブという組織に所属する契約選手であること。バレーボールを職業としていること。チームが複数のスポンサーと、サポーター会員によって支えられていること。そして自分は大学を卒業したあと、どこのチームからも声がかからずに、ブレイザーズの入団テストを受けて加入したことなどを一通り話したあと「僕らのような形態でスポーツチームを運営し、なおかつ日本一という結果を出せるチームは日本にはまだ少ないんではないでしょうか」と、クラブ運営とチーム強化を両立することの難しさにも触れた。

サポーターを大切に

2000年の発足以来、その動向に興味を持って堺ブレイザーズの試合に何度も脚を運んできた。いつも驚かされるのは、こうしたブレイザーズの選手の取材マナーの良さと、スポンサーやサポーターに心から感謝している点だ。「取材」という機会が、その媒体の向こう側にいるサポーターや、これからファンになってくれるかもしれない視聴者、読者への意思表示の場だととらえている証拠だろう。敗れた試合の後はいつもピリピリし、近寄りがたい雰囲気を醸し出している石島でさえ「サポーターの皆さんに一言コメントを」と声をかけると、とたんに表情が和らぐ。

今年からチームに加わった佐川翔に、ファンや報道陣への対応に関してクラブからどんな指導があるのかと尋ねると、佐川は「うーん」と言って首をひねった。

「チームに合流して3カ月以上経ちますけど、そういうことについてクラブのスタッフや監督から何か言われた覚えはありません。ただ、先輩がそうしているから、自分もすべきなんだと真似をしている感じです」

前身の新日鉄ブレイザーズが人気チームだったこともあり、以前は「取材は面倒だ」と面と向かって言う選手もいた。確かに、露出をしなくても観客が集まる時代もあった。しかも、母体企業が安泰であれば、ファンの数や試合の入場者数が選手の生活に響くことはない。そんな選手の考え方を改め、現在のような姿に変えたのは、選手を説得し、諭し、ときには頭を下げてでもカメラの前に立たせてきた歴代のチーム広報担当者の努力である。

多くのプロスポーツが「ファンサービス」という表現を当たり前のように使う。しかしブレイザーズの選手はサインをすること、一緒に写真を撮ること、サポーター会員と接する機会を「サービス」だとはとらえていない。しごく当たり前の行為なのだ。その姿勢は優勝決定戦のあとの祝勝会にも表れていた。企業スポーツの祝勝会といえば“会社の上層部が集まる場”という印象が強かった。しかしブレイザーズの祝勝会は全く様子が違った。出席者のほとんどが、チームカラーの黄色いTシャツや、レプリカユニホームを身につけたサポーターなのである。スポンサーや関係者の姿ももちろんあるが、レプリカユニホームを着た茶色い髪の若い女性ファンがVリーグ機構の理事や、スーツ姿の協賛者社長の隣で祝杯をあげているのは驚くべき光景だった。選手は和気あいあいと参加者と談笑し、自分の金メダルをサポーターの首にかけ、写真撮影に応じている。ある女性ファンは「この近さがブレイザーズの魅力」だと言い、ブレイザーズスポーツクラブのスタッフは「こうして皆さんが喜んでくださっている姿を見ると、改めて優勝するっていいなぁと思いますね」と語る。今村が報道陣に語ったように、運営と強化はクラブチームの両輪だ。もちろん、選手たちはスポンサーやサポーターが「勝つこと」を最も望んでいることを知っている。いたるところに笑顔の輪ができたこの祝勝会は、2000年の発足以来、ブレイザーズが「運営と強化の両立」を目標に、歩んできた歴史を物語る光景だったのではないだろうか。

今シーズンの勝因は

さて、東日本大震災の影響で打ち切りとなった一昨年以来、2年ぶりとなる優勝を決めたブレイザーズだが、今大会の勝因についても触れておこう。シーズン当初から「入れ替え戦覚悟」と小田勝美部長が語っていたように、今年はルーキーの千々木駿介と伊藤康貴を起用し、2人を育成する場でもあると酒井新悟監督も明言していた。

その期待にルーキーが見事、応えた。特に千々木のセンターからのバックアタックの切れはリーグ随一。「あの攻撃があることで、トスの配球の幅が広がった」とセッターの今村は振り返る。

千々木は言う。

「このチームでの自分の役割はミスをせず、とにかく攻守で失点をしないこと。攻撃では、体勢が悪ければ何度もリバウンドを取って、石島さんやペピチにつなぐこと。やるべきことがはっきりしていた分、思い切ってプレーできたんだと思います。パイプ(中央からのバックアタック)に関しては大学時代から“これを自分の武器にしていこう”と心に決めて練習してきた攻撃。今村さんのトスを信じて思い切って打てました」

優勝決定戦こそ途中で伊藤と交代したものの、「新人でここまでひとつのポジションを任せられるのは大したもの。欠かせない選手になりました」と酒井監督もルーキーの健闘を称えた。

他にも勝因を挙げ出せば、キリがない。サイドアタッカーの石島、ペピチに集まりがちなブロックを惑わすという点で、ミドルブロッカーの松本慶彦、横田の決定力の高さも見過ごせない。そして大学時代まで、サーブレシーブのフォーメーションにほとんど入る機会がなかった千々木に手取り足取りレシーブの指導をした北島武や、同じようにコーチ兼任になった大道大輔などの力も大きかった。幾度も決勝の舞台で敗れる場面を見てきたが、今年ほど控え選手が充実していたシーズンは記憶にない。こうしてすべての選手の名前を貢献者として挙げたくなるようなチームが、王者と呼ぶにふさわしいチームなのかもしれない。

これからも堺ブレイザーズには注目していくつもりだが、わたしはブレイザーズスポーツクラブの記事を書くときにいつも留意していることがある。それは、失敗例や課題も遠慮なく記事にすることだ。彼らは男子バレー界初の地域密着型スポーツクラブであると同時に、今後のスポーツ界の指針となる存在だ。わたしごときの力など、ほんの微力ではあるが、失敗例も記録として残さなければ、あとに続くチームの参考にはならない。そして、美談だらけの物語に仕上げてしまっては、彼らの本当の努力が伝わらないと思う。だから厳しい目で見、書き続けようと思う。

自分たちがスポーツ界のモデルケースであることを、選手には今以上に自覚してほしい。誇りを持ってほしいとも思う。そして彼らがコートに立ち、対戦相手と戦っている最中、寒いチケット引換所でサポーター会員を待つスタッフや、彼らの見えない場所でスポンサー獲得のために頭を下げているスタッフがいることを、どうか今後も忘れないでほしい。