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知られていない、ラオスでの大規模洪水被害 現地で活動する2人の日本人にインタビューした

堀潤ジャーナリスト

今年8月下旬、ベトナム北部で発生した熱帯暴風雨がラオス北部を横断。ウドムサイ県では37年ぶりの大洪水が発生し、多くの家屋が流されたり、全壊するなどして、1万4千人ほどの住民に被害が出ている。

現地では日本のJICA海外協力隊のボランティアとして、西岡大介さん、浅沼礼香さんが復旧・復興支援にあたっている。

あまり報道されていない、ラオスでの洪水被害の課題と今後の支援について、現地で活動するお二人に聞いた。

西岡)

自己紹介します。ジャイカ海外協力隊でラオスに派遣されている、西岡大介です。ラオスには去年8月から赴任しています。1年半ほどラオスで活動しています。普段は首都のビエンチャンで活動をしていますが、月に一回、災害のあったウドムサイで活動をしています。普段は中小企業の支援を中心に活動しています。何か自分でもできることがあればと思って、今回発信しました。

浅沼)

同じく、ジャイカ海外協力隊としてラオスで看護師として活動している浅沼です。首都から約50キロ離れたビエンチャン県というところで看護学校を中心に活動しています。看護学校と病院と、ビエンチャンにあるレッドクロス(赤十字)で手伝いをしています。今回、西岡さんからウドムサイ県に関する手助けができないかという話があったのと、赤十字の方からも同時期に被災状況や足らない物資に関しての情報が入っていたので、協力隊同士で自分にできることをと思い活動を開始しました。

ラオス現地で活動するJICA海外協力隊の西岡さんと浅沼さん 堀撮影
ラオス現地で活動するJICA海外協力隊の西岡さんと浅沼さん 堀撮影

堀)

まず、ウドムサイの被害状況を教えてください。

西岡)

今年8月26日に、ウドムサイを中心にラオスの北部で豪雨となり、それに伴って洪水が発生しました。被災人数は約1万4千人以上。ウドムサイの人口がだいたい30万人ほどと言われています。面積に対する人口密度が1平方キロメートルあたり20人程度なので、かなり広い範囲で被災が起きているということです。洪水で家が流されたり、半壊したり、浸水被害が。北部のウドムサイは山に囲まれていて多くの人が農家で生計を立てている。田んぼや畑が破壊されてしまったり、家畜など動物も流され、収入源も失ってしまったという状況です。

堀)

かなり広範囲に水が集落を遅い、水が弾いた後も家屋の破壊、堤防の結界、道路の破壊などかなりインフラが破壊されているようですが、今もこの状況が続いていますが?

JICA西岡さん提供 発災直後のウドムサイ県写真
JICA西岡さん提供 発災直後のウドムサイ県写真

西岡)

今、災害現場ではラオスの赤十字社が中心となって、災害支援や物資の供給を行なっています。地域ボランティアが土砂を片付けています。道路が流されてしまった部分もあるのですが、土砂が片付いて通れるようになった場所もあると聞いています。

堀)

写真はいつ頃撮影されたものですか?

浅沼)

直後のものです。作業は進みつつありますが、かなり被害が広範囲にわたっているのと、日本と違い早期に復旧が行える状況ではない。家が流されてしまった人もいて、数年単位で復旧、復興まで時間がかかると赤十字でも言っています。

堀)

医療的ケアの必要性は?足りない物資、必要な対策はどのようなものが挙げられますか?

JICA西岡さん提供 発災からまもないのウドムサイ県写真
JICA西岡さん提供 発災からまもないのウドムサイ県写真

浅沼)

村の小さな病院の方が洪水の被害を受けていて、医療機器、薬、ガーゼなどが全て浸水してしまったと聞いています。赤十字の方でも情報を取りきれていないものの、そうした医療用資源が足りないというのは聞いています。現在、閉院していた病院も少しずつ再開していると聞いていますが、どうしても本格的な治療が必要な場合は、21キロ離れた病院にいかなくてはいけないということで、医療の方でもまだ完全に復旧できたという状況ではありません。

西岡)

ラオスという馴染みの薄い国ということもありますし、パキスタンや静岡で洪水被害が取り上げられていて、ラオスのことが日本で取り上げられる機会は少ないと思います。しかし、日本は災害大国と言われこれまでの様々な知識や経験が蓄積されている国です。私自身、阪神淡路大震災を子どもの頃に経験しました。東日本大震災の時にも、ラオスから日本に対して義援金という形で支援を受けているので、恩返しの意味でも何か困っている時に手を差し伸べたいなと思っています。

JICA西岡さん提供 復旧・復興作業を進めるウドムサイ県
JICA西岡さん提供 復旧・復興作業を進めるウドムサイ県

堀)

直接、言葉を交わした住民の方々の様子はいかがでしたか?

西岡)

ウドムサイ県で被災した郡は大きく分けて3つあります。ラー郡、ナモー郡、サイ郡というところです。その中で私はサイ郡を訪れました。洪水の被害を聞いたところ、地域によっては胸のあたりまで水がきたと言っていました。サイ郡は県都なので一番栄えている地域なので、まだ復旧は他のところに比べると早い進んでいる状況です。残りの二つの郡については、県都からも離れた地域でアクセスもしづらいので、そういった地域の復旧に時間がかかるので、そうした地域に関して心配です。

山の斜面が洪水で削られて、道路が崩落していました。崖になっているところのすぐそばに家があるので、次の豪雨や台風が来たらいつその家が崩壊してもおかしくないので、そういうところが心配です。

JICA西岡さん提供 発災直後のウドムサイ県写真
JICA西岡さん提供 発災直後のウドムサイ県写真

堀)

避難生活などはどのような状況でしたか?

西岡)

サイ郡は比較的そこまで避難生活というほどの暮らしを強いられている人はいない。道路も土砂が撤去されて車が通れるようになってはいました。

県都から離れた地域の被害状況、赤十字も状況を把握できていない地域が心配ですね。

浅沼)

治療に必要なガーゼ、医療機器、処方する薬が浸水してしまったので、やはりそこを早く整えていかなくては病院が機能しない。医療機器や医療用品をなるべく早く前の姿に戻すような支援が必要です。

JICA西岡さん提供 被災した人々が水の支援などを受けている
JICA西岡さん提供 被災した人々が水の支援などを受けている

堀)

写真を見ると水もどう確保しているのか、生活用水足りないだろうななど想像します。資材が足りない様子も伝わってきます。これから生業そのものを立て直すための支援が必要になってくると想いますが、日本政府や日本国民に何を求めますか?

西岡)

日本の方に知ってほしいのは、元々コロナの中で苦しい生活をしてきた人が、災害によってさらに苦しい状況になっている。日々、一日一日必死に生きているラオスの人たちがいるということを1人でも多くの方に知ってもらいたいです。共感していただける方がいらっしゃったらご支援いただけたらありがたいと感じています。

JICA西岡さん提供 
JICA西岡さん提供 

浅沼)

現地に足を運んだことがなく、赤十字の方から聞いた話ですが、学校も被災してしまい、生徒の勉強道具、鉛筆やノートなども水に浸かってしまい、使える状況ではない。SOSが届いていますので、広範囲ではあるんですが、少しでも現地の人たちの暮らしを戻すためには広く手を差し伸べる必要がありますので、日本の皆さんと協力して進めたいと思っています。

西岡)

家財を修繕する道具や食器類も必要だと聞いています。衣類に関しては、ユニクロが衣類支援をしていまして、そこにウドムサイの状況を伝えたりもしました。

浅沼)

ラオスは親日家の人が多くて、JICAも50年以上協力隊を派遣してきた地域です。日本人だとわかると「ラオスに対して長年手助けをしてくれてきた国だ」と誰もが口を揃えていってくれるんですよね。「助けてくれてありがとう」というラオスの方々からの声をいただいています。Facebookが国内では主流で、日本のニュースをチェックしているので、「こんなことあったけど大丈夫?」と声もかけてくれる。何よりも異国からきた私たちを快く受け入れてくれて、困った時にはすぐにラオスの方が助けてくださる機会も本当に多いんですよね。ラオスの言葉で「スワイカン」という言葉があるんですけど「助け合う」という言葉です。本当にその通りで、次は私たちがラオスの人たちを助けられればと思っています。

西岡)

JICA協力隊が世界で初めて派遣されたのがラオスです。今までで1000人以上の人間がラオスに派遣されてきました。いつもラオス人から日本に助けられている、見返りを求めず助けてくれると感謝の言葉を言われます。「スワイカン」という言葉通り、気にかけたことがあればすぐに声をかけてくれる。停電があれば、大丈夫かと声をかけてくれるし、食べ物はあるのか?と食料を届ける手配をしてくれたり。向こうが困っている時だからこそ手を差し伸べたいなと思っています。

ジャーナリスト

NPO法人8bitNews代表理事/株式会社GARDEN代表。2001年NHK入局。「ニュースウォッチ9」リポーター、「Bizスポ」キャスター。2012年、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校で客員研究員。2013年、NHKを退局しNPO法人「8bitNews」代表に。2016年(株)GARDEN設立。現在、TOKYO MX「堀潤モーニングFLAG」キャスター、Amazon Music「JAM THE WORLD」、ABEMA「AbemaPrime」コメンテーター。2019年4月より早稲田大学グローバル科学知融合研究所招聘研究員。2020年3月映画「わたしは分断を許さない」公開。

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