「やっと出会えた」発達障害の子どもと親たちの駆け込み寺に注目

NPO法人「発達わんぱく会」は首都圏4か所に教室を設け個別療育や集団療育等を行う

■発達障害の子どもたち サポート受けられているのは1割の現実

厚生労働省によると、日本全国の1~5才児、527万3千人のうち6.5%にあたる約30万人の子供が発達障害を持っていると言われています。(統計局 2013年9月の推計値)

しかし、そのうち専門的なサポートがうけられているのは1割ほどでしかないといいます。

厚生労働省は「発達障害の理解のために」という政策リポートで発達障害についてこうまとめています。

発達障害者支援法ができるまで

「発達障害」は、身近にあるけれども、社会の中で十分に知られていない障害でした。

また、「発達障害」のある人は、特性に応じた支援を受けることができれば十分に力を発揮できる可能性がありますが、従来はその支援体制が十分ではありませんでした。

このような背景を踏まえ、発達障害について社会全体で理解して支援を行っていくために、平成17年4月から「発達障害者支援法」が施行されています。

発達障害ってどんな障害?

発達障害者支援法において、「発達障害」は「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの」と定義されています。

さらに、平成24年に文部科学省が行った調査では、小・中学生の6.5%が発達障害の可能性があるとの調査結果もあります。

発達障害の子どもたちはコミュニケーションや対人関係をつくるのが苦手な子も多く、周りの人たちが困惑をしたり、敬遠されてしまったりと、子育て中のお母さんやお父さんたちが悩みを抱えるケースも少なくありません。先月、読売新聞が報道していましたが、厚生労働省のまとめによると発達障害を抱える人やその家族への支援を行う専門機関「発達障害者支援センター」に寄せられた相談件数が昨年度に7万4千件を超え、過去最多となったと言います。

そうした中、発達障害を持つ幼い子供達が「専門的サポートを受けられているのは1割」しかいないという現状は深刻な数字です。

NPOやNGOなど公益事業者たちの現場を専門にする私たちGARDENでは、こうした現状を深刻に受け止め、発達障害の子どもや親たちをサポートする取り組みを重点的に取材し発信していきます。

今回は、浦安市を中心に首都圏4カ所に早期療育型の支援施設を運営するNPO法人「発達わんぱく会」を特集します。きょう10月8日夕方6時からは理事長の小田知宏さんをゲストに発達障害の支援について話し合うイベント「伝える人になろう講座」も開催します。

NPO法人発達わんぱく会の取り組みは、発達障害と向き合う親子にとって駆け込み寺のような存在になっています。動画とあわせてぜひ読んで見てください。

■障害から個性へ 早期療育によるサポート

「発達障害の子どもたちは苦手なところもあるけれども、得意なところもいっぱいある。その子にあった環境さえ用意してあげればその子がのびのびと、わんぱくに遊んで成長していけて、自分が思い描くような人生を送れるんじゃないかなと思って、この事業をしています。」こう話すのは、NPO法人「発達わんぱく会」理事長の小田知宏さんです。

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「発達わんぱく会」が運営する「こころとことばの教室『こっこ』」では、発達障害を持つ子どもたちに早期療育を行っています。

発達障害は、脳機能の発達が関係する障害です。発達障害がある子どもは、コミュニケーションや対人関係をつくるのが少し苦手です。また、その行動や態度は「自分勝手」とか「変わった人」「困った人」と誤解され、敬遠されることも少なくありません。しかし、幼児期から適切な支援を行うことで、症状を緩和させたり、社会と上手くかかわっていくことができるようになります。

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■複数の分野の専門家が、子どもの特徴に多角的にアプローチ

現在「発達わんぱく会」は、首都圏の4か所に教室「こっこ」を設け、子ども一人ひとりに合わせたプログラムで、個別療育や集団療育などを行っています。

「こっこ」に通う250名の子どもたちの療育を行うのは、保育士、幼稚園教諭を始め、臨床心理士や言語聴覚士など、専門的な資格を持つおよそ60名のスタッフ。

各教室では、専門の異なる6人のスタッフがチームとなり、1日の療育にあたっています。1日の終わりには6人のスタッフが集まり、その日の子どもたちの様子をお互いの視点から振り返り、それを細かく記録。次回のプログラムにつなげているのです。

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小学校教諭・特別支援教諭の資格を持つスタッフの富田さんは、専門が異なる複数のスタッフがチームとなって子どもたちに関わっていくことのメリットをこう話します。

「私たちの目って一人だけでは見きれない部分があるので、お互いの角度から見れた子どもたちを共有していくこともすごく大事。ここには作業療法士の先生方もいらっしゃるのですが、そういう方たちの体の使い方のアドバイスをいただくとなるほどということもたくさんあります。また、幼稚園教諭や保育園教諭の方々のプログラムの豊富さやバリエーションが非常に参考になります。一方的でないアプローチができるのでいいなと思います。」

■手作りの教材で、一人ひとりの発達や興味に合わせた療育を

「こっこ」の職員室の壁には、ずらりとカラフルなおもちゃが。いえ、これは子どもたちが使う大切な「教材」です。教材の多くはスタッフによる手作り。それぞれの専門性を活かして意見を出し合いながら、子どもたちが楽しんで遊べて学べる工夫を凝らしています。

例えば、顔のパーツを並べて遊ぶ手作りの「福笑い」。身体機能や空間の把握を学ぶ課題に大活躍。

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同じ「教材」でも、子どもたちの興味関心に合わせるため、複数のデザインを準備しているものも多々あります。お弁当に使うピックとティッシュの箱を使って作成された「ピン挿し」は、手先の操作を学ぶために使用。お花のピックを使ってお花畑を作ったり、電車のピックには線路を描いたりと、工夫しています。

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また、動物が描かれたカードは、敢えてマイナーな動物をチョイス。似たような動物を見比べながら、「物にはそれぞれ名前があってそれぞれ違うんだという発見を促す」ための課題に使用しています。

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特別支援学校教諭の資格を持っているスタッフの村田さんは、「教え込もうとすればできるんですけど、こういう楽しい教材だとみんなついやっちゃうんですよね。その中で言葉の意味を知ったりとか、楽しい中で学べるにはこういう丁寧な段階に合わせた教材とか興味を引くものをいっぱい用意しているという感じですね。」と話します。

■親御さんの心の負担を減らすことも、「こっこ」の大切な役割

早期療育は、母親にも心強い支援なのです。

「やっと相談したり支援を受けられる場所が見つかったなという安心感が一番大きかったですね。」2年以上にわたり2人の娘さんを「こっこ」の個別指導に通わせている、あるお母さんの話です。

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「こっこ」に通うようになってからの子どもたちの変化をこう話します。

「人を信頼して心開いてコミュニケーション取れるようになったりとか、安心できる場所が家以外にあるということで、他の場所、幼稚園だったり公園だったりというところでもコミュニケーションに対して積極的になったような気がします。」

「こっこ」では、療育中の子どもたちの様子を記録にとりながら見守っている親御さんたちへの振り返りも行います。親御さんでも見つけられない子どもの特性を、スタッフと一緒になって見出していくのです。

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保育士として29年のキャリアを持つスタッフの田中さんはこう話します。「うちの子だけ大変なんですと思われている親御さんもいるんですけど、みんないろんな面で大変さはある。みんな自分だけじゃない、大丈夫ですよと。他の子と兼ね合いを見ながら、成長を確認し合いながら、安心して育てていけるように助言できたらいいかなとは思いますね。」

■ニーズに追いつかない現場 支援の担い手を増やす取り組みも

専門的なサポートが大きな助けになる一方、必要な人に支援ができていないのが現状です。現在日本では、6.5%の子ども、すなわち約30万人の子供が発達障害を持っていると言われています。そのうち専門的なサポートがうけられているのは1割ほどでしかないといいます。

1 ~ 5 才児の人口:5,273,000 人(統計局,2013 年9 月の推計値)
1 ~ 5 才児の人口:5,273,000 人(統計局,2013 年9 月の推計値)

理事長の小田さんも課題を感じています。

「想像以上に子供は伸びるな、成長するなと感じます。たった1週間に1回通うだけだし、その1回も45分だったり1時間だけだったりするんですけど、子どもはびっくりするくらい伸びます。ただ、残念ながらこういう療育をする場所がまだまだ少ないという現状を改めて感じています。僕たちがこの事業を始めてもう7年目になりますが、まだまだこうした事業所が少ないようで、1時間くらいかけて私たちの教室に通ってきていただける方も多いです。もう私たちだけでは受けきれず、待ってくれている親御さんたちもとても多くいます。そういう状況を見ると、こんなに早期の療育が子どもにとって価値があるにもかかわらず、街にはこう言った環境が十分にないというのをすごく感じますね。」

「発達わんぱく会」では、より多くの子どもたちが早期療育を受けられるよう、新たに教室を開こうという人へ向けてコンサルティングを行い、ノウハウを提供しています。

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「『他の方に迷惑をかけちゃう』とか、『よその人がいろんな目で見る』とかで、家に引きこもりのお母さん方の話もよく聞きます。引きこもるよりどんどん外に出ていける世の中になればいいなと。そのためには、そのご自身を受け入れてあげて、否定するのではなく、特性をわかってあげられる社会になったらいいのかなと思っています。」スタッフの田中さんの願いです。

一人で悩むお母さんたちに手を差し伸べ、発達障害を豊かな個性に育てる。より良い社会を目指し「発達わんぱく会」の挑戦は続きます。

取材編集GARDEN Journalism編集部