技術立国であることを誇りに!YAMAHA YZF-R1/R1M @ 人とくるまのテクノロジー展

998cc 水冷4ストローク直列4気筒4バルブで200馬力を叩き出すR1とR1M

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『人とくるまのテクノロジー展』は、自動車業界の第一線で活躍する技術者・研究者のための自動車技術専門展。

この展示会で、YAMAHAが誇る最速バイク YZF-R1/R1Mが展示され、さらに技術者のお話も直接伺えるというので、取材に向かった。

998cc 水冷4ストローク直列4気筒4バルブで200馬力を叩き出すR1/R1M。

若いエンジニアたちに囲まれながら、思ったよりも狭いブースに彼らは佇んでいた。

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実際にR1Mにまたがってみたのだが、非常にコンパクトなポジションに驚かされた。

特に横幅がとてもコンパクトで、1,000ccもあるバイクのサイズ感ではない。400cc程度の印象だ。

実は、そのコンパクトさの秘密は、クロスレイヤードウイングと呼ばれるカウルの構造にあるという。全開で長時間走行すれば、エンジンはどうしても熱ダレしてパフォーマンスが落ちるので、フルカウリングするすると空力学的には有利だが、熱がこもるという問題がある。そこで、ヤマハではカウルの外と内側に走行風がクロスするような構造を開発した。

そのレイヤードの構造が、エンジンとカウルの間に適度な隙間を確保しつつ、全体的なスタイリングを細身に保つことに成功したのだという。

また、MotoGPマシンであるYZR-M1のイメージを極力再現するためにも相当な工夫がなされている。そもそもヘッドライトを持たないレースマシンに近しいフロントフェイスを市販車に持たせるために、ほとんどそれと意識させないようなデザインとなっているのだ。さらに、二つのライトの上にはLEDのポジションランプが設置され、攻撃的な印象を強めている。

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アルミの地金がむき出しのタンク。職人の手で磨き上げられるというヘアラインがあまりにも美しい。

R1/R1Mの特徴は、カウルでもそうだが、性能面を突き詰めるために考えたことが、結局見た目のよさを強めているということだ。

例えばこのタンク。軽量化を目指してアルミを選んだのだろうが、敢えてそのアルミの地金を出したまま、素材の美しさを見せつけている。手作業で磨き上げられたタンクには細かなヘアラインが進行方向に流れ、風を視覚的にも感じさせてくれる。また、マグネシウム製ダイカストホイールも緻密な加工が施され、実に美しい。アルミ素材を使うことで1キロ近く軽量化。溶接も非常に丁寧で、それさえもデザインといえるほど細やかだ。

TFT液晶を使ったメーターパネル。背景色は白と黒を選べるが、デフォルトでは昼間は白に。

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夜は黒になるという、明るさセンサー付き。

旧車に乗っている身として、もっとも時代を感じるのが、自分の愛車のアナログな、機械式のメーター周りとあまりに異なるこのハイテク化された液晶モニターを見たときだ。

速度計とタコメーターだけでよかった時代はもはや遠い昔。現代のオートバイはコンピューター制御されており、バイクの姿勢やエンジンの状態などを瞬時にライダーに知らせるため、多くの情報を表示する高度なインジケーターが必要だ。

特にR1/R1Mでは IMU(Inertial Measurement Unit) といって、なんと6軸から車両姿勢を判断し、計測するシステムが採用されている。

「IMU」は ピッチ、ロール、ヨー の3つの方向の回転の動きを検出するジャイロセンサーと、 前後、上下、左右 の各方向の加速度を検出するGセンサー(加速度センサー)から構成され、バンク角、横滑り加速などの車両姿勢情報を算出すると、その都度最適な出力に反映するという。

このIMUの情報などがライダーにもTFTモニターを通じて知らされるのである。

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IMU。6軸でのセンサーはヤマハが初だという。

また、R1Mでは標準装備(R1ではオプション)の CCU(Communication control unit)とGPSアンテナによって、走行状況を自動的に記録でき、GPS機能を使ってサーキットでの自動ラップタイム計測も可能となっているが、この情報もTFTモニターで見ることができるし、なんとiPhone用に支給されるアプリでも確認できるという。

ライダー・マシンのインターフェイスを高めるCCU(Communication control unit)。CCUユニットとGPSアンテナから構成され、走行状況を記録でき、またGPS機能を使ってサーキットでの自動ラップタイム計測も可能。(R1Mは標準装備、R1はオプション)

どうでもよいと一笑に付しそうな些細な工夫に熱意を持つ、エンジニアの矜持

このようにハイテクマシンの名に恥じないさまざまな工夫をもって開発されたR1/R1Mであるが、エンジニアの説明員がもっとも力が入ったのが、新開発のコンロッド(コネクティングロッド)の解説のときだった。

コネクティングロッド (connecting rod) は、機械部品、特にエンジンに多く用いられる部品である。日本工業規格 (JIS) では、コネクティングロッドまたはコネクチングロッド、連接棒(れんせつぼう)などといった呼称を用い、慣用ではしばしばコンロッド (conn-rod) と略称される。

コネクティングロッドは、クランクシャフトとの連動により、ピストンの往復直線運動を回転運動へ変換する部品である。ピストンピンとクランクピンを結び、それぞれの端を小端部、大端部と呼ぶ。熱間鍛造で形成され、材質にはクロームモリブデン鋼(SCM435など)や炭素鋼(S55Cなど)などが用いられる。小型汎用エンジンなどでは鍛造、ダイキャストまたは重力鋳造で成型されたアルミ合金が用いられることがある。レース用となるとチタン合金(64合金)などをバフ研磨されたものなどが用いられる。

出典:Wikipedia

バイクのエンジン用のコンロッドは通常、小端部、大端部の二つを別々に作るが、R1/R1Mのコンロッドは、FS方式(Fracture Split;破断分割式)といって、一つの部品として作ってからそれを分断して二つに分けたうえで組み立てている。

最初から一つのものを二つに分けるから、当然相性がよく、組み合わせて動かしたときにも精密な動作をする、というわけだ。さらに、上述の説明にもあるレース用では一般的になった、軽量で強度と加工性のバランスがとれたα+β型チタン合金を用いている。

ヤマハの説明員の方は実際にR1/R1Mの開発に携わった技術者のみなさんだが、このFSコンロッドを、手に取ると、

二つの部品ですよね。

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でもこうしてつなげてみると・・

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ほーらひとつw

と、喜色満面でデモをしてくれた。

二つの部品を押し付けて一つにすると、一つの部品として、小端部も外れることなく、重力に抗って落ちることがないのだ、と。

なんとも微笑ましくて、聞いていてとても嬉しくなった。

こういう小さな、些細な技術の積み上げが、世界最速のバイクを支え、そして技術立国としての日本を支えているのだ。

YZF-R1/R1M。発売はもうすぐだ。

記事出典:ロレンス