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「避難指示」に一本化 情報を正しく受け取るためにやっておくべきことは?

平野貴久気象解説者/気象予報士/防災士/ウェザーマップ所属
20日午後4時の雨雲の様子 梅雨前線の活動が活発化した(ウェザーマップ提供)

 きょう5月20日、改正災害対策基本法が施行されました。今回の法改正により、自治体が発令する避難情報の一部が変わりました。最も大きな変更は、避難勧告が廃止され、避難指示に一本化されたことです。避難勧告・指示の見直しは、1961年の法律の制定以来初めてのことで、非常に大きな意味をもっています。

情報のわかりにくさ

 なぜ今回、避難勧告が廃止されたのか。一番の理由は、情報のわかりにくさです。避難勧告は、避難をすべきタイミングで出される情報であるのに対し、避難指示は、避難をすべきタイミングは過ぎており、さらに災害の切迫度が高まった状況において出される情報でした。しかし、内閣府が行ったアンケートでは、2つの情報の認識度は低く、正しく理解されているとはいえない状況でした。筆者も、取材のために街頭インタビューを試みましたが、勧告の方が強い情報だと思っていたり、勧告ではすぐには逃げないという意見をもつ方がいたりと、やはり情報の理解は進んでいないと感じました。こうした背景もあり、今回、情報を「避難指示」に一本化して、避難するタイミングを明確にしようというわけです。

警戒レベル4での避難完了を

 避難指示は、大雨の警戒レベル「4」に位置します。今後は、これまで避難勧告が出ていたタイミングで避難指示が出ます。ですから「避難指示=危険な場所から全員避難」が原則となります。ただ、高齢者など、避難に時間がかかる人は、レベル3の段階での避難が求められます。また、それ以外の人も、レベル3は避難の準備が求められる段階で、この点は以前と変わりません。

 レベル4のさらに上に、レベル5「緊急安全確保」というものがありますが、これは、万が一逃げ遅れてしまった場合、家の2階以上に移動したり、崖からできる限り離れたりと、命の危険が迫っている時の緊急的な避難行動を促す情報です。ただ、この情報は必ず発令されるわけではなく、レベル4との間には大きな差があります。レベル5が発令されたとしても、これは安全な場所で聞く情報であると捉え、必ずレベル4までに避難を完了させることが重要です。

新たな大雨警戒レベル(内閣府のチラシより抜粋)
新たな大雨警戒レベル(内閣府のチラシより抜粋)

リスクを知らなければ、正しい判断ができない

 避難情報の意味を正しく受け取るためには、まずは、自分自身が危険なエリアにいるのかどうか、知っていることが大前提となります。そもそも、立ち退き避難が必要な場所なのか、そうではないのか、どこにいるのが一番安全なのか、知っていなければ、情報が出された時に正しい判断ができません。「全員避難」とは、危険な場所から避難することであり、もともと安全な場所にいるのであれば、無理に動く必要はないわけです。

 そのためには、ハザードマップを確認して、あらかじめ身の回りのリスクを知っておくことが必要です。ハザードマップは、市町村ごとに作成されており、誰でも見ることが可能です。インターネットでも公開されているため、一度確認しておくことをお勧めします(国土交通省 ハザードマップポータルサイト)。

今年の梅雨は大雨のリスクが高い

 きょうは、西日本で大雨となっているところがあり、早くも、新たな警戒レベルのもとでの「避難指示」が発令された自治体もあります。

 今年は、梅雨前線の北上が早く、各地で異例の早さでの梅雨入りとなっていまが、きょう20日に発表された最新の1か月予報によると、向こう1か月の降水量は、沖縄で少なく、その他の地域で多い予想となっています。これは、梅雨前線が平年よりも北に位置することを意味しています。まだ梅雨入りが発表されていない地域も、実質、雨の季節には入っていると言えます。今年の梅雨は、大雨のリスクがいつもよりも高いのは間違いありません。早め早めの大雨対策が必要です。

5月20日 気象庁発表の1か月予報(ウェザーマップ提供)
5月20日 気象庁発表の1か月予報(ウェザーマップ提供)

気象解説者/気象予報士/防災士/ウェザーマップ所属

1980年愛知県生まれ。大学では気象学を専攻。卒業後は番組制作会社でリサーチャーとして活動。メディアを通じて自ら気象情報を発信したいという思いから、2009年に気象予報士の資格を取得。2012年から宮城県の仙台放送にて気象キャスターを務める。現在「仙台放送 Live News it!」出演中。予報はもちろんのこと、これまで宮城県内さまざまな場所を取材した経験から見えてくることなども発信できたらと思います。

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