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桜の開花 仙台が鹿児島を逆転する日

平野貴久気象解説者/気象予報士/防災士/ウェザーマップ所属
2月27日 ウェザーマップ発表の桜の開花予想(ウェザーマップ提供)

 今年の桜は異例の早さでの開花となりそうです。

 2月27日にウェザーマップが発表した桜の開花予想によると、東京は3月15日(平年3月26日)、仙台は3月26日(平年4月11日)で、いずれも平年より大幅に早く、過去最早となる予想です。これには1月下旬以降の気温の高さが影響しているとみられています。

 さて、桜の開花がどれくらい早いのか、遅いのかの目安となるものに「平年値」がありますが、そろそろ賞味期限切れとなることをご存知でしょうか。

来年は平年値が更新される

 桜の開花日に限らず、気温や降水量、梅雨入り・梅雨明けなどの時に使われる平年値は、過去30年間の平均値です。現在使われている平年値は、1981年~2010年の30年間の平均値です。更新は10年ごとで、西暦の末尾が1の年という決まりになっています。今年は2020年ですから、来年2021年には更新されて、1991年~2020年の30年間の平均値が新たな平年値となります。ですから、今の平年値には直近の約10年間が反映されておらず、賞味期限が切れかかっているというわけです。

2010年代は開花が早い

仙台のソメイヨシノ開花日(筆者作成)
仙台のソメイヨシノ開花日(筆者作成)

 では、来年新たに平年値に反映されることになる、2011年からの桜の開花日はどうだったのか。仙台を例にとって見てみます。平年は4月11日ですが、近年はそれよりも早い日が圧倒的に多く、3月中に咲いた年もありました。一方、来年平年値から抜ける1981年~90年までの開花日は、逆に平年よりも遅い日が多くなっています。今年も大幅に早まる予想ですから、平年値が早まることは間違いありません。4月11日というのは、もはや平年とは言い難い状況になっています。

開花と気温の関係

 下の図は、桜の開花日と気温の関係を示したものです。棒グラフが開花日の平年差で、上に行くほど早く、下に行くほど遅いことを表しています。オレンジは1~3月の平均気温の平年差で、上に行くほど気温が高く、下に行くほど低いことを表しています。

 これを見ると、仙台では、気温の高い年は開花が早く、低い年は開花が遅い傾向がきれいに表れ、相関があるといえます。

 一方で、九州南部の鹿児島はどうでしょう。気温が低くても開花が早かったり、逆に高くても遅かったりする年があり、仙台のような相関は見られません。

開花日と気温の関係・仙台(筆者作成)
開花日と気温の関係・仙台(筆者作成)
開花日と気温の関係・鹿児島(筆者作成)
開花日と気温の関係・鹿児島(筆者作成)

 桜は、冬に一定期間寒さにさらされることで目覚め(休眠打破)、開花へと進んでいきます。しかし、暖冬で気温が高いと休眠打破がうまくいかず、開花が遅れることがあります。これは、もともと温暖な地域にみられる傾向で、鹿児島の開花日と気温のバラつきは、この傾向を反映している可能性があります。一方、仙台など北日本は、暖冬といえども休眠打破に必要な寒さはあるため、気温が高ければ開花が早まるといえるでしょう。

仙台が鹿児島を逆転する?

 今後、地球温暖化が進むことで、気温は全体的に高くなることが予想されます。そうなれば、冬の気温も必然的に高くなっていきます(年々の変動はありますが)。仙台など北日本はさらに開花が早まり、鹿児島など元々温暖な地域は、逆に開花がどんどん遅くなる可能性も指摘されています。

 実際、超暖冬ともいえる今年、仙台と鹿児島は同じ3月26日の開花予想です。仙台は平年より16日早いですが、鹿児島は平年と同じです。これまで最も差が縮まったのは、2002年と2017年の2日で、仙台と鹿児島が同日になったり、仙台が逆転して早く咲いたりしたことはありません。もしこの予想通りになれば、これまでの常識が大きく覆されると同時に、これが今後の常識になる可能性も秘めています。

気象解説者/気象予報士/防災士/ウェザーマップ所属

1980年愛知県生まれ。大学では気象学を専攻。卒業後は番組制作会社でリサーチャーとして活動。メディアを通じて自ら気象情報を発信したいという思いから、2009年に気象予報士の資格を取得。2012年から宮城県の仙台放送にて気象キャスターを務める。現在「仙台放送 Live News it!」出演中。予報はもちろんのこと、これまで宮城県内さまざまな場所を取材した経験から見えてくることなども発信できたらと思います。

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