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栗山英樹さんが教えてくれた「愛」

萩原智子シドニー五輪競泳日本代表
WBCで優勝!胴上げされる栗山英樹監督(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ワールド・ベールボール・クラッシック(WBC)は日本の優勝で幕を閉じた。日本、そして世界のスーパーヒーローの真剣勝負に何度も心が熱くなり、何度も涙が出た。スポーツは、人々の心をひとつにする素晴らしい瞬間を与えてくれる。国内では野球離れが進んでいるそうだが、WBCを観て、憧れる子ども達は多いと思う。

 私は、日本の「栗山英樹監督」と、昔、ご縁をいただいたことがある。栗山さんがテレビのスポーツキャスターをされている時、現役選手だった私を取材して下さった。初対面だったが取材を受ける中で「気さくで物腰柔らかな優しい方」と印象を受けた。本当にアスリートだったのかな?と思う程、優しさが溢れている方だ。

 このご縁から、私が現役引退後、4年間程、栗山さんの事務所にお世話になった。メディアに出演させてもらう機会を与えてもらった私は、右も左も分からない状況。そんな私に栗山さんが、取材者としての心構え、メディアに出演する上での覚悟や責任、さらには確定申告の仕方など・・・様々な角度でご指導いただいた。

 メディア出演では正直、ツラいことも多くあった。「メダリストでもないのに、テレビで解説するなんて!」といった心ない声も。落ち込む私に、栗山さんは「五輪でメダルを獲らないとスポーツを解説したらいけないなんてルールはないよ。だったらメダリストより努力して、取材をして、理解をして、勉強をして、繋がりを作っていけばいい。誠実に。確実に。自信を持って胸を張って。あとは、愛だよ、愛。人と人の間に、愛を持つこと。愛を持って人と接することで信頼感が生まれるからね。愛情を持って取材をしたり、愛情を持ってVTRを作ったり、記事を書くことで、自分も成長できるんだよ。」とメールを送って下さったり、お話して下さったことがある。栗山さんはただ優しいだけでなく、覚悟と信念を持った強い人だ。私自身、メディアに出演する際の原点となる言葉で、今でも大切にしている。

 今回のWBC、何度も何度も栗山さんの「愛」を感じる瞬間がたくさんあった。特に印象的だったのが、準決勝のメキシコ戦。不調で苦しんでいた村上宗隆選手への「最後はお前で勝つんだ。」の言葉。「愛」は信頼感を生み出す。栗山さんの「愛」が伝わり、信じる力が優勝へと導いたのだ。日本チームに集まった選手や指導者、関係者は、「栗山英樹監督」だからこそ完成した素晴らしいチームだった。

シドニー五輪競泳日本代表

1980年山梨県生まれ。元競泳日本代表、2000年シドニー五輪に出場。200m背泳ぎ4位。04年に一度引退するが、09年に復帰を果たす。日本代表に返り咲き、順調な仕上がりを見せていたが、五輪前年の11年4月に子宮内膜症・卵巣のう腫と診断され手術。術後はリハビリに励みレース復帰。ロンドン五輪代表選考会では女子自由形で決勝に残り意地を見せた。現在はテレビ出演や水泳教室、講演活動などの活動を行っている。

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