刑事司法に関心がある人も、ない人も、必見の「裏コングレス」YouTube

東京地方・高等裁判所と法務省(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

 会計評論家の細野祐二氏が主催する「裏コングレス」YouTubeの公開が始まった。

 細野氏は、今年4月20日から、京都で開催される予定だったコングレス(「国連国際刑事司法会議」、5年に一度開催され、内外から4000人以上が参加する刑事司法の最大の国際会議)に、日本の刑事司法に関する重要な問題である「人質司法」を取り上げることを法務省に提案したが拒絶された。そこで、コングレスの開催日の夜に、「裏コングレス」として、立命館大学で、刑事司法についての同時英訳シンポジウムを開催し、コングレス参加者にも参加を呼び掛けて日本の「人質司法」について議論することを計画していた。しかし、新型コロナ感染拡大で、コングレスは無期限延期となったことから、東京の会場でのネット開催にしたものだ。

 昨日午後6時半にYouTubeで公開された初日の裏コングレスでは、パネリストとして、細野氏のほか、元参議院議員の犬塚直史氏、ジャーナリスト山田厚史氏、立命館大学松宮孝明教授、森久智江教授(いずれもネット参加)のほか、評論家の佐藤優氏も、インタビュー録画で参加している。

 この中で、特に注目すべきは、外務省職員時代に、鈴木宗男氏の事件に関連して、東京地検特捜部に逮捕・起訴され、公判で全面無罪を争い512日もの間勾留された佐藤優氏が、初めて語った、長期勾留での拘置所での体験を含むインタビューだ(1:28:30~)。

 独房で周辺に死刑囚がいる状況下での体験は、拘置所に勾留されるということがどういうことなのかをリアルに認識させられる迫真の証言だ。

 冒頭は、大手監査法人の公認会計士時代の細野氏が、キャッツという企業の粉飾決算事件に巻き込まれて、東京地検特捜部に逮捕・起訴された自身の事件の経過が語られる。一貫して無実を訴え、公判でも無罪を主張したために190日にわたって勾留された。一審で細野氏に不利な証言をした関係者は、控訴審でほとんどが証言を覆し、逆転無罪を確信したのに、控訴棄却で有罪となり、その直後に、白血病で闘病中だった夫人は、力尽きて亡くなった。細野氏の勾留中、体調の悪い中、一日も欠かさず面会に来てくれていたそうだ。

 細野氏の話の中で注目すべきは、「人質司法における自白獲得の4原則」の話だ(41:55)。

 検察官が被疑者の自白を得る方法として、

(1)脅し・騙し・すかしで被疑者を自白をさせる

(2)自白しない被疑者の身柄拘束を長期化させる

(3)家族を取調べて痛めつける

(4)これらを共犯者に対して行う

という4つの方法があるということだ(この部分を先に見た上で、その前のキャッツ事件の内容と経過についての説明を見る方が理解しやすいかもしれない。)。

 確かに、自分自身の特捜部の経験からしても、一般的に、そのような方法が多用されてきたことは間違いない。最近、弁護人として特捜と戦っている経験から言えば、取調べの可視化などによって、(1)のやり方で自白を得ることが難しくなっているために、(2)、(3)、(4)のような陰湿で悪辣なやり方が多用されるようになっているように思える。

 細野氏の話も、佐藤氏の話も、刑事司法とは全く無縁の人間が、特捜部に、一度、謂れのない疑いをかけられたら、どのような目に遭うのか、その恐ろしさをまざまざと見せつけられる体験談だ。

 刑事司法の問題というのは、自分とは関係ないことなので、あまり関心がない、という人も、是非、YouTube「裏コングレス」を見てもらえれば、その認識が変わるはずだ。 

 裏コングレスは、今日以降26日まで、連日YouTubeでの公開が続く。

4月22日(水) 18:30 粉飾決算事件に見る経済事件の冤罪構造 

4月23日(木) 18:30 日本の再審請求制度の問題点と再審無罪の問題点 

4月24日(金) 18:30 日産ゴーン事件とゴーン元会長の海外逃避 

4月25日(土) 18:30 厚労省村木事件と青梅談合事件 

4月26日(日) 18:30 オリンパス粉飾決算事件と966日の未決勾留

 4月24日公開の「日産ゴーン事件とゴーン元会長の海外逃避」と題するパネルには、ゴーン氏も、レバノンからネットで出演する。私も24日公開のパネルに参加して、拙著【「深層」カルロス・ゴーンとの対話】で詳しく書いたゴーン氏の事件や「特捜的人質司法」について解説する。また、25日公開のパネルでは、一審無罪判決を勝ち取り、現在控訴審係属中の、典型的「人質司法」による冤罪事件である青梅談合事件をめぐる検察の問題についてコメントする予定である。