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4マスそれぞれの業種別広告費前年比から広告主の姿勢をさぐる(2024年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
紙媒体は公知力の減少に伴い、広告費も減少中との話だが(写真:イメージマート)

電通は2024年2月に日本の広告費に関する調査報告書「2023年 日本の広告費」を発表した。その内容を基に4大従来型メディア(テレビ、雑誌、新聞、ラジオ。4マス)へ広告を出稿した業種別企業の広告費の前年比を確認する。各業種がそれぞれの媒体に与えている・認識している公知力、ウェイトの変化などが把握できよう。

2023年における媒体別広告費前年比は次の通り。4マスは大体マイナス、プロモーションメディア広告費もマイナスが多く、インターネット広告費はプラスと、二極化した動きが生じている。

↑ 媒体別広告費(電通推定、前年比)(2023年)
↑ 媒体別広告費(電通推定、前年比)(2023年)

今調査報告書では広告出稿元(クライアント)を21業種に区分し、4大従来型メディア(テレビメディアにおいては衛星メディア関連は除く。グラフでは地上波テレビと表記)それぞれに対する出稿広告費、各メディアが受領している出稿額全体に対する構成比、そして前年比の一覧が掲載されている。

まずは新聞についてその動きに関するグラフを作成し、状況を確認する。なお次以降4媒体のグラフは、すべて縦軸の区分を同じものとし、状況の比較がし易いようにしている。

↑ 4大従来型メディアにおける業種別広告費(新聞、前年比)(2023年)
↑ 4大従来型メディアにおける業種別広告費(新聞、前年比)(2023年)

テレビメディアとともに軟調さが際立つ新聞だが、2023年ではプラスの業種は4つのみ。それ以外はすべてマイナス。新聞の軟調さが浮き彫りにされた形ではある。

最大のマイナス幅を示したのは趣味・スポーツ用品でマイナス30.5%。次いで家電・AV機器が大きめの下げ幅。他方、プラス幅では1割台の上げ幅を示した業種が2業種、交通・レジャーと薬品・医療用品、そして1ケタ台がエネルギー・素材・機械と化粧品・トイレタリー。

続いて雑誌。

↑ 4大従来型メディアにおける業種別広告費(雑誌、前年比)(2023年)
↑ 4大従来型メディアにおける業種別広告費(雑誌、前年比)(2023年)

新聞は4業種がプラスだったが、雑誌は11業種にもおよび、全体でもプラスに。1割以上の下げ幅を示した業種は家庭用品と教育・医療サービス・宗教のみ。最大の下げ幅は家庭用品のマイナス24.5%。紙媒体との観点では親和性が高い出版(新聞、雑誌、書籍、語学教材、他の刊行物)はプラス15.4%と堅調。

次はラジオ。

↑ 4大従来型メディアにおける業種別広告費(ラジオ、前年比)(2023年)
↑ 4大従来型メディアにおける業種別広告費(ラジオ、前年比)(2023年)

4マスの中では雑誌と並び前年比プラスを示したラジオだが、その中身を業種別に見ると多数の業種でプラスが出ている実情がつかみ取れる。プラスは全部で14業種。一方で案内・その他(案内広告、臨時もの、連合広告、企業グループなど)はマイナス幅が大きすぎ、グラフの縦軸を突き抜けてしまうほど。もっとも額面は10億5000万円のため、全体に与える影響はごくわずか。

プラス幅で一番大きい業種はファッション・アクセサリーでプラス36.7%。最近ラジオのでこの企業、この業種のCMが多いと思っていたが、広告費が増えていたのかと納得する人もいるであろう。

最後は地上波テレビ。

↑ 4大従来型メディアにおける業種別広告費(地上波テレビ、前年比)(2023年)
↑ 4大従来型メディアにおける業種別広告費(地上波テレビ、前年比)(2023年)

プラス業種数は9と、雑誌に匹敵するほどだが、全体値はマイナス2.0%となっている。1割を超えたプラス幅の業種は交通・レジャーと案内・その他と2業種もあるのだが。やはり1割を超えたマイナス幅の業種が6業種もあるのが足を引っ張っているのだろう。

4マスの中では一番広範囲への媒体力・告知効果が高いのが地上波テレビ。各商品・サービスとの相性のよし悪しもあるが、各業種の勢いが大きく表れているのが興味深い。

今回の各グラフとそれぞれの媒体における各種業種への報道姿勢を比較すると、色々と面白い連動性が見えてくるかもしれない。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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