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電通推定の日本の広告費を詳しくさぐる(2024年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
需要減少中の電話帳、広告費も減少中(写真:アフロ)

電通は2024年2月に日本の広告費に関する調査報告書「2023年 日本の広告費」を発表した。その内容を基に2023年の広告費の実情を確認する。

まずは2023年の広告費における前年比から、直近の広告費の動向を見ていく。2022年から2023年における広告費の変化を示したものだが、各媒体の広告に関する影響力、クライアントからの評価の変化の度合いがよく分かる結果となっている。

↑ 媒体別広告費(電通推定、前年比)(2023年)
↑ 媒体別広告費(電通推定、前年比)(2023年)

4マス(マスコミ四媒体)は少なからずがマイナス、プロモーションメディア広告費もマイナスが多く、インターネット広告費はプラスと、二極化した動きが生じている。もっとも大きな下げ幅を示したのはプロモーション広告費のうちDMの区分でマイナス8.2%、次いでインターネット広告費のうち新聞デジタルでマイナス5.9%。いずれも元々減少傾向にあったが、新型コロナウイルスの流行で利用者が急減した結果、広告出稿が減ったことで減少度合いが加速したであろうことが想像できる。後者は4マスの新聞そのものも大きく下げていることから、内容そのものが品質の低迷を起こしており、紙媒体でもデジタルでも広告媒体としての価値が下がっているとの連想が十分可能となる。

他方インターネット広告費の区分はうち新聞デジタルを除き、幅こそ違えどすべてがプラス。調査報告書では「コネクテッドTV(インターネット回線へ接続されたテレビ端末)の利用拡大に伴う動画広告需要の高まりや、デジタルプロモーション市場の拡大などが成長に寄与」などと説明している。中でもラジオデジタルとテレビメディアデジタルの上げ率が大きなものとなっているが、これについてはそれぞれ「Podcastをはじめとする音声メディアでのデジタル展開が高い注目度を維持し、radikoを含むラジオデジタル広告への新規出稿数に増加の傾向」「見逃し無料配信動画サービスでは、根強い人気があるドラマの視聴に加え、バラエティーやスポーツのライブ視聴なども増加し、再生数・ユーザー数がともに順調に伸長した。インターネットテレビサービスでも、従来の恋愛リアリティーショーやドラマ、バラエティーに加え、スポーツ関連番組の幅が広がるなど視聴者の選択肢も豊富になってきた」との説明がある。

続いてこれを前年比ではなく、単純に金額ベースで示したのが次のグラフ。

↑ 媒体別広告費(電通推定、億円)(2023年)
↑ 媒体別広告費(電通推定、億円)(2023年)

従来型大手媒体(4マス)、中でもテレビメディアが単体で大きな広告費を占めているのが一目瞭然。個別項目では太刀打ちできず、プロモーションメディア広告費を全部合わせてようやく追いつけそうな状態。他方、インターネット広告費全体がテレビメディアどころか、マスコミ四媒体全体すら追い抜いている実情も確認できる。これは2021年で初めて生じたもので、今回年で3年連続のものとなる。調査報告書でも特記事項として「進展する社会のデジタル化を背景に、総広告費における『インターネット広告費』は堅調に伸長し、総広告費に占める構成比は45.5%に達した」と示されている。

■関連記事:

【新聞とネットの順位交代…今年一年の従来4マスとインターネットの広告売上動向を振り返ってみる(2013年)】

【新聞広告費とインターネット広告費の金額はどちらが上なのか(2022年9月発表版)】

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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