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開発途上国への支援姿勢は「現状維持」が52.2%と最大意見

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
円借款も開発途上国への開発協力の一環(写真:ロイター/アフロ)

日本が開発途上国(新興国)などに行っている資金協力や技術協力などの開発協力による支援は、今後どのような姿勢で臨むべきなのか。国民の意思を内閣府の「外交に関する世論調査」(※)から確認する。

日本も含めた先進諸国などは開発途上国に対し、資金協力(借款、無償援助)や技術協力などの開発協力を行っている。多様な影響などを考慮した上で、日本では今後これらの開発協力に関してどのような方針で臨むべきかを4択、具体的には「(現状以上に)積極的に進めるべきだ」「現在程度でよい」「(協力は進めるべきだが規模は現状より)なるべく少なくすべきだ」「やめるべきだ」から1つ、回答者の考えにもっとも近いものを選んでもらったところ、直近年において最多回答率を得たのは「現在程度でよい」だった。52.2%と半数以上の人がこの選択肢に同意を示している。

↑ 今後の開発途上国への開発協力のあり方
↑ 今後の開発途上国への開発協力のあり方

あくまでも今件設問上の開発協力の対象は「開発途上国」であり、自前で宇宙にロケットを打ち上げる技術・経済力を持ち、さらに他国へ積極的な資金援助や軍事力の示威行使を行う国は対象外と見なすとの判断をするのが当然で、その上で対象国の情勢を分析し、結局は国毎にケースバイケースで決める必要がある。それを前提とし、全般的な戦略としては、「現在程度でよい」を最良とする考えが支配的なようだ。この考えは多少の上下を繰り返しながらも、中長期的に増えつつある。また2020年以降に大きく増加したのは、調査方法の臨時的な変更によるところが大きいものと考えられる。

一方、「積極的に進めるべきだ」「なるべく少なくすべきだ」と相反する意見は、直近ではそれぞれ27.2%・13.0%。歴史的な経緯をたどると、いわゆるバブル崩壊あたりから「積極派」が漸減し、「消極派」はそれ以前から漸増していた。その結果、今世紀に入り互いの立ち位置が一時逆になったのは興味深い。

しかしそれも2003年から2004年を転機に、再び「積極的に進めるべきだ」の増加、「なるべく少なくすべきだ」の減少の動きを見せ、現在に至っている。各国、特に近隣諸国における積極的な対外支援が伝えられるようになり、海外市場で日本企業の入札が失敗する事例が報じられ、国際的な日本の立ち位置が低下する気配を見せ始めたのが遠因だろう。

なお2022年以降は「積極派」の減少と「消極派」の増加の動きが生じている。一時的なイレギュラーの動きの可能性もあるが、その一方で景況感の後退が影響しているとの推測もできる。

属性別に回答動向を見ると、直近分では消極姿勢を求める声は、男性と中年層で高い動きを示している。

↑ 今後の開発途上国への開発協力のあり方(属性別)(2023年)
↑ 今後の開発途上国への開発協力のあり方(属性別)(2023年)

中年層で消極姿勢が見られるのは、日本国内の限られたリソースをどこに配すべきかとの観点で、将来を見据えた投資をすべきか、自分の手元に配分するかとの判断の違いが表れた結果、つまり「海外への経済協力より、まずは自分自身に」だと考えれば、道理が通る傾向ではある。

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※外交に関する世論調査

今調査は2023年9月7日から10月15日にかけて、全国18歳以上の日本国籍を有する人の中から層化2段無作為抽出法によって選ばれた人に対し、郵送法によって行われたもので、有効回答数は1732人。男女比は48.3%対51.7%、年齢階層別構成比は18-19歳1.1%・20代7.5%・30代11.6%・40代16.0%・50代17.6%・60代18.0%・70歳以上28.2%。

調査方法について2019年調査までは調査員による個別面接聴取法が用いられていたが、2020年調査以降では新型コロナウイルスの流行により、郵送法が用いられている。調査方法の変更で一部設問の選択肢や回答傾向に違いが生じていることに注意が必要となる(「分からない」が「無回答」になっている、回答の意思が明確化されたために一部設問で「無回答」の値が以前の調査と比べて有意に少なくなっているなど)。

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(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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